民事紛争提訴件数
本日(平成21年1月29日)付日本経済新聞の巻頭コラム「春秋」に,基本的な事実誤認がある。
コラムは,楳津かずおの「ぐわしっ」自宅の景観裁判を巡るものだが,その中に,「『私人間の生活関係に関して生じる紛争』(有斐閣法律学小辞典)である民事事件は,年に二百数十万件も裁判所に持ち込まれるのだ」とある。この数字は明らかに間違いだ。
最高裁判所の平成19年度司法統計中,第1審となる地方裁判所と簡易裁判所の民事事件の新受件数は,地方裁判所が80万4670件,簡易裁判所が140万4952件である。「春秋」氏は,これを単純合計したのだろう。しかし,この中には,上記「私人間の…紛争」に該当しない事件数が多量に含まれている。地裁新受件数のうち万を超えるものだけでも,「控訴」等下級審から継続しているもの(約1万8000件)や,強制執行や配当(約25万件)は重複として,倒産(約19万件),過料や雑事件(約13万件)は「紛争」ではないから,差し引く必要がある。簡裁新受事件数からも,最低雑事件(約21万件)は差し引かなければならない。また,「督促」(約36万件)も,大多数はサラ金など金融機関による申立と思われ,これを「紛争」に分類して良いかは大いに疑問だ。
同じ司法統計から,私人間の紛争に該当しうるものを抜き出すと,地裁では「通常事件」等合計約20万件,簡裁では「通常事件」と「調停」合計約73万件である。これを合計したうえ,多少水増しして,「私人間の紛争」に該当しうる事件の新受件数は年約100万件というところだ。
しかも,「紛争」というからには,新受件数から,争いがなかった事件数を差し引く必要がある。他方,家庭裁判所に対する家事新受件数(平成19年度で約75万件)のうち,紛争性のあるものは加算する必要がある。
結局のところ,「裁判所に持ち込まれる私人間の紛争」は,概数で年100万件は行くかもしれないが,150万件は行かないと思う。
しかし,反論しようと思って司法統計を見ても,明確な数字が出てこないのには,困ったものである。(小林)
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