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2009年1月22日 (木)

「資本主義はなぜ自壊したのか」 中谷巌 集英社

ソクラテス 「お前は馬鹿だ」

    男 「何だと?」

ソクラテス 「私はお前より賢い。」

    男 「何で?」

ソクラテス 「なぜなら,私は自分が馬鹿だということを知っているからだ」

    男 「じゃ,お前も馬鹿じゃねえか」

ソクラテス 「…」

という相原コージの4コママンガを思い出す。

小渕内閣までの構造改革,新自由主義,市場至上主義の急先鋒であり,担い手であった筆者が放つ懺悔の書。確かに,ソクラテスの論理からすれば,自分が馬鹿だということを知った筆者は,この人や,この人や,この人に比べれば,賢いと言いたいのだろう。

しかし,筆者が自分の馬鹿さ加減を論証すればするほど,その論証に説得力がありすぎて,こんな馬鹿が国家の舵取りを担っていたのかと暗澹たる気持ちになる。

平易に書こうとしたのかもしれないが,筆者の社会認識や歴史認識,人間の本質に関する洞察などは,控えめに言っても平凡なものだ。そのため,読んでいて,「こんなことも知らなかったの?」と突っ込みを入れたくなるところが多々ある。こういった平凡な認識や洞察は,この筆者が書いたのでなければ,見向きもされないだろう。

とはいえ,この本はよく売れている。私も先輩弁護士に勧められて購入したが,4軒目までの書店では売り切れていた。ページは多いが,内容は薄いのですぐ読める。この本を読む上で大事なことは,内容そのものではなく,「筆者ほどの知性の持主が,なぜこんな当たり前のことに気付かなかったのか?」言い換えれば,「高度な知性はなぜ思想やイデオロギーから逃れられないのか?」を考えながら読むことであろう。(小林)

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