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2009年1月12日 (月)

伊藤ハム事件を振り返る(3)

その後舞台は調査対策委員会に移る。調査委員会は12月5日までに5回の会議を行い,同日中間報告書を公表すると共に,25日に調査委員会報告書を公表した。

同委員会の関心は主として原因の解明と,危機管理体制の再構築であった。3本の井戸水は毎日検査されたが,委員会発足以降,規準を超えるシアン化物又は塩化シアンが検出されることは一度としてなかった。水源そのものが汚染されたのなら,異常値が継続的に観察されないのは不可解である。同様の理由で,産経新聞が報じた「戦前の毒ガス工場原因説」も否定された。また,人為的混入の可能性も検討され,排斥されている。

委員会は当初の検査結果も疑ったが,なぜか検体が残存していないため,追試のしようがないし,1度ならず2度までも異常値が検出された以上,この検査結果が正確なものであることを前提に,井戸水の処理過程に原因を求めていく。そして,学術文献をもとに,消毒用の塩素量が不適切である場合には,本件井戸水の処理過程においてシアン化合物が生成されることや,現場では4月以降,塩素酸の基準値オーバーが続いており(これは水道法違反だが食品衛生法違反ではない),担当者が独断で次亜塩素酸ナトリウムの投入量を減らし,シアン化合物が生成されやすい濃度になったという状況証拠もあることから,これが原因ではないかと推定した。もっとも,この推定は実験室レベルで再現できただけであり,実際の処理過程で再現できたものではない。つまりこれは,「実際に起きたことを化学的に説明することは可能」ということが証明されたに過ぎない。また,処理水については,処理過程の不備で説明が可能であるとしても,処理前の原水について異常値が検出されたことは説明できない。この点は調査委員会報告書ではかなり明確に,検査手順の誤りと推論しているが,これは積極的な根拠があるというより,消去法による推論である。

次に対応における問題点としては,中間報告書では余り触れられていないが,最終報告書に詳しい。調査委員会報告書では,①担当者から工場長へ,工場長から本社幹部への報告遅れと,②井戸の使用停止・出荷停止・製品回収の検討の不十分さの2点が主たる問題点であるとされ,その主要な原因として,①社内規定・マニュアルの不備,②コンプライアンス意識の不十分さ,③法令に対する理解の不十分さ,④安易な自己判断の4点が指摘されている。(小林)

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