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2009年2月 2日 (月)

日弁連はなぜ負けたのか(総会編 1)

平成6年12月21日日弁連臨時総会(1)

法曹人口問題に関する日弁連臨時総会というと,平成12年(2000年)12月1日の総会だけを取り上げる人がいる。とても底が浅いと思う。日弁連総会という視点で法曹人口問題を論じるなら,少なくとも4回の臨時総会を研究しなければならない(これでも浅い,という批判は甘んじて受けます。そう言う方は是非,1990年の総会まで遡ってご紹介下さい)。そこで第1回目として,平成6年(1994年)12月21日の臨時総会をご紹介する。

この日,東京商工会議所ホール(新弁護士会館竣工前なので)に1000人近い弁護士を集め,6時間にわたる臨時総会が開かれた。集まった委任状は7800以上。本人出席と委任状出席を合計すると9000人近い。当時約1万6000人いた弁護士の半分以上の票が投じられた臨時総会では,「司法試験・法曹養成制度の抜本的改革案大綱」が議決されるとともに,「司法基盤整備・法曹人口問題に関する関連決議」と,「法曹養成制度の『統一・公正・平等』に関する関連決議」がなされた。特に,「司法基盤整備・法曹人口問題に関する関連決議」は,後の日弁連の運命を決定づけることになった,歴史的にとても重要な決議である。

ところが,この関連決議が提案され議決される過程は,現代史のミステリーと言えるほど謎に満ちている。なぜなら,ヤジと怒号が渦巻く,6時間もかかった末に議決された,極めて重要な決議であるにもかかわらず,この関連決議は,圧倒的多数で可決されたからだ。「重要な決議が圧倒的多数で議決されたなら,それまでの侃々諤々の議論は何だったんだ?」と思って当然である。これは,とても奇妙な話であるし,奇妙だと思わなければいけない。

この臨時総会が開催された背景事情は,こうである。平成元年,バブル景気等に伴う検事希望者激減に危機感を持った法務省によって提示され,最高裁判所も支持した司法試験改革案の「丙案」は,要するに若年受験者にゲタを履かせて優遇する案であり,これに反対する日弁連と鋭く対立した。協議の結果,平成3年(1991年)から平成7年(1995年)まで,司法試験合格者を600人,700人と増加させて若年合格者の増加状況を検証したうえ,一定の条件を満たす場合,または「抜本的改革」の合意がなされた場合には,丙案は導入しない,という妥協が成立した。

また,その後の協議の場を,法曹三者に限定せず,外部の有識者も交えた「法曹養成制度等改革協議会」に移すことになった。そこには,法曹三者だけでは2対1と分が悪いので,外部有識者を入れた方が,丙案廃止に持ち込みやすいという日弁連の思惑も反映していた。

しかし,若年合格者は期待ほど増加せず,丙案実施は必至となった。また,日弁連の期待に反し,法曹養成制度等改革協議会は,丙案そのものにあまり興味を示さなかった。それどころか,先進諸外国に比べて余りに少ない法曹人口を規制改革の対象として問題にするようになる。

この逆風の中で,日弁連としては,丙案を導入させないため「抜本的改革案」を策定する必要に迫られる。そんな中,平成6年(1994年),平成7年度日弁連会長選挙が行われ,丙案阻止のため司法試験合格者1000名程度に増員させる案も選択肢として掲げる川上義隆弁護士(故人)を下し,著名な「人権派」である土屋公献弁護士が大差で当選する。この票差には,丙案阻止はもちろん,司法試験合格者1000名を念頭に置く増員に反対する弁護士の票が多く含まれていた。

ところが,平成6年(1994年)10月12日,日弁連理事会に土屋公献執行部が提案した「司法試験・法曹養成制度の抜本的改革案大綱」は,あるべき司法試験合格者数を示さず,かつ,合格者数決定権限を日弁連執行部のフリーハンドに委ねる内容,つまり,1000人も1500人もありうる内容だった。そのため,この「大綱」は土屋公献日弁連会長の公約違反であり,無軌道な弁護士人口増につながるとして反発する勢力が,対案を用意して臨時総会の招集請求を行った。そこで,理事会で議決された上記「大綱」と「対案」のいずれかを選択するべく,暮れも押し迫った12月21日に,臨時総会が開催されることとなったのである。

このような日弁連の「内紛」には,マスコミも注目し,「司法改革の志を忘れるな」(12月19日朝日新聞社説)等の記事が公にされた。

これほど内外から注目を集めた日弁連総会は初めてといってよい。(小林)                                                    

   

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