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2009年2月18日 (水)

日弁連はなぜ負けたのか(総会編 8)

平成61221日日弁連臨時総会(8

日弁連の史上最大の失敗ともいうべき,「司法基盤整備・法曹人口問題に関する関連決議」が提案され議決されるに至った真相はこうだろう。

土屋執行部が平成610月にとりまとめた「大綱」は,弁護士人口増を無条件に容認するものであり,かつ,執行部にフリーハンドを付与するものだった。当時,法曹養成制度改革等協議会の大勢は1000人から1500人であったため,執行部に主導権を渡せば,1000人以上への増員を日弁連執行部が容認する可能性があった。

これに対して,過当競争を心配する地方の弁護士会や,弁護士の反権力性,自主独立性を重視する弁護士を中心とする反対運動が巻き起こる。熾烈な委任状争奪合戦が展開したが,執行部案可決の見通しは暗く,否決か,良くても五分五分との票読みがなされていた。

臨時総会直前(またはその最中?),もと日弁連会長の辻誠弁護士(または前田知克弁護士)から土屋会長以下,限られた幹部に対して,「執行部がこの関連決議を支持するなら,数百票が執行部案賛成に回る」という極秘提案がなされる。この関連決議の中身は,その後の法曹人口問題を総会の権限として執行部のフリーハンドを許さない点で,実質的には反執行部案に近いから,この関連決議を受け入れることは,執行部案の否決に等しい。しかし,執行部案を可決した上での関連決議であれば,執行部のメンツは立つ。

ちなみに,この「密談」は,ごく限られたメンバーだけで行われた。日弁連の会誌「自由と正義」平成11年(1999年)3月号によれば,総会当日に至っても,土屋執行部のメンバーの中でさえ,関連決議提案のシナリオを知らなかった者がいたという。

他方,野間美喜子弁護士,福井正明弁護士ら反執行部派としても,反執行部案が通る見通しは良くて五分五分という票読みだったため,関連決議案は魅力的だった。700人が800人になるだけで,実は取れたといえるからである。

そしてもちろん,執行部派にも反執行部派にも,そして関連決議案を提出した辻誠弁護士らにも,日弁連が分裂したまま今回の臨時総会が終わることは避けたい,という共通の目的があった。

ちなみに,反執行部案提出の代表者である野間美喜子弁護士については,事前に関連決議案のシナリオを知っていたといえる明白な証拠がある。翌平成7(1995)112日の臨時総会で,野間美喜子弁護士は,自分が提案した反執行部案には一言も触れず,関連決議案のことを「日弁連の団結を取り戻そうと,英知を集めて成立させた関連決議」と賞賛しているのだ。ご自分も英知の一端を担ったと言いたいのだろうが,愚かな話である。

つまり,執行部派と反執行部派の幹部は事前にシナリオを知っていたのであり,その結果が,「執行部案を巡って真っ二つ,でも関連決議は圧倒的多数で支持」という奇妙な議決である。シナリオを知らず,威勢良く賛否の主張を闘わせた弁護士たちは,哀れにもガス抜きに使われたことになる。

 

私は,基本的に陰謀史観は取らない。革張りの豪華な回転椅子に座って,ペルシャ猫の背中を撫でながら陰謀を練る悪人の存在は,世界というものをとても単純に見せてくれる魅力的な考え方だが,一般に世界は,そんなに単純ではない。しかし,この件に関しては,関連決議案を巡る「陰謀」を巡らせた人物がいると考える。その中心人物は辻誠弁護士と,前田知克弁護士であろう。ちなみに前田知克弁護士は,平成10年(1998年),11年度日弁連会長選挙で司法改革路線の継承を掲げる小堀樹弁護士と争い,ダブルスコアで落選する。

大川真郎弁護士(大阪)著「司法改革」にも,「土屋執行部は,この臨時総会で『大綱』の承認を得るため,関連決議を採択することを余儀なくされた」とあり,執行部と辻誠弁護士,前田知克弁護士らとの間に上記のような「密約」があったことを示唆している。

一言でいえば,このような顛末を「茶番」という。これが,その後の日弁連の運命を決定づけた臨時総会だった。(小林)

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