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2009年4月29日 (水)

日弁連はなぜ負けたのか(総会編 26)

平成12111日日弁連臨時総会(4

執行部案反対の討論をご紹介する。

まず,執行部案を通すと日本は戦争になるという意見として,武内更一弁護士(東京)は,「私たちが目指しているのは基本的人権擁護を守る,国民の盾になって権力の攻撃に対して立ち向かう,そういうことに志をもって弁護士になったんじゃありませんか。企業法務,公務員,そういうところにわんさと殺到する弁護士を,国民が望んでいるわけないじゃありませんか。司法審は,周辺事態法,盗聴法,国旗国歌法,憲法調査会設置のための国会法と同時に設置された。司法審の目的は,戦争をするという口実を作ることにあります。そういう国自体に,どんどん向かっているんです。こういうときこそ頑張らなければ戦前のようになります。」と訴えた。

この武内更一弁護士は,平成91015日の日弁連臨時総会で,反執行部案の提案者として,「在野の弁護士は外へ向かって訴えかけ,その民衆の声を背景にしてこそ日弁連は力が出せるんだと私は思っています。それを抜きにして日弁連の闘争はないはずです」と国民運動の必要性を訴えた。ところが,日弁連執行部が国民260万人もの署名を集めると,国民が望むはずがない,翼賛体制で戦争になると言う。このような議論のしかたは卑怯だと思う。

同じく戦争になるという意見として,熊野勝之弁護士(大阪)は,「今回の決議は,(法曹人口を)国民の必要とする数に任せますという,全くの白紙委任です。これは1933年のナチス授権法と同じだと僕は思っています。それぐらい危険な法だと思っています。どうか真剣に国民のためを考えられるなら,本当に真剣にこの法案の決議案の持っている危険性を考えて頂きたい。」と述べた。私は,日弁連が法曹人口増受入の決議をしたくらいで戦争になるというのは、日弁連の影響力を買いかぶりすぎていると思う。

前田知克弁護士(二弁)は,「何のために弁護士法の第一条があるのか。力は弱いけれども正しい理屈をもっている。弱い者の権利をきちっと守ってやる。これが司法であり,それを担うのは弁護士なんです。それをやるためにこそ,弁護士自治があり独立性がある。我々のこのバッヂは,総理大臣ですらはずせないんだ。これを持っているんだ。

久保利英明弁護士は,企業が雇ってくれるというけれども,雇われるために弁護士になるんですか。整理回収機構のような一番厳しい取立屋の手先みたいになって,何でもかんでも法律自治を通して今後やるということが,弁護士に期待されていることなんですか。はっきり言っておくけどね,飯のため稼ぐんだったら,法律事務屋になって雇われればいいんですよ。何のために司法試験を受けて,苦労して弁護士になる必要ないじゃないか。

ロースクールで弁護士を大量につくって,そうして仕事がないからできるだけ企業に雇ってくれ。これが司法の拡大なんですか。そんなことを喜んで,そこへ雇ってもらえる,職域が増えた。こんな情けない弁護士になりたいですか。」と述べた。

前田知克弁護士は,日弁連が法曹人口問題から引きずりおろされる直接のきっかけとなった,平成6年(1994年)1221日の臨時総会関連決議を画策した張本人である。しかし,日弁連の敗北を自ら招いたことに対する言及も弁解も反省も,全くない。

矢野修弁護士(札幌)は,司法改革・法曹一元・陪審制の実現は賛成するとしながらも,その実現可能性や司法基盤の整備が乏しい中で法曹人口のみを増加させることへの危惧を表明した。鈴木秀幸弁護士(名古屋)は,具体的な数字を指摘して,司法基盤整備の不足や,目標を5万人とする弁護士人口論が空想であると主張した。佐久間敬子弁護士(仙台)は,「大きな司法」という執行部のキャッチフレーズは,弁護士の在野性,独立性,自治性を害するものであり,むしろ裁判所の充実や司法基盤の整備を求めるべきであると言う。森重知之弁護士(山口)は,執行部案はいたずらに弁護士を貧窮に追い込み,貧すれば鈍する結果,国民にも被害を及ぼすと述べた。武本夕香子弁護士(兵庫)は,「大きな司法」が国民の利益になるとは限らない,数の増加は質の低下を招く,法曹人口増と弁護士過疎の問題は無関係,などと主張した。

これらの主張は,平成9年までの総会で主張するならともかく,この日の臨時総会で行う議論としてはピントがずれている。なぜなら,この臨時総会で問われているのは,内定済みの3000人体制を日弁連として受け入れるか否かであって,3000人に決定するか否かではないからだ。日弁連に内定を覆す力があれば別だが,それを失ったことが明らかである以上,この場所で3000人の是非を論じることに何の意味もない。もっとも,司法改革,とりわけ法曹一元という「まやかし」(高山俊吉弁護士)によって,問題の本質を誤魔化そうとしたのは久保井一匡日弁連会長以下執行部であって,せっかくの臨時総会にピントのずれた発言を誘発した責任は執行部にもある。

新穂正俊弁護士(埼玉)は,執行部案の実現によって,現実に多くの犠牲や不利益を受けるのは,若手の弁護士と,これから弁護士になる学生ら後進であって,中堅やベテランの弁護士は何の経済的不利益も受けないと安心しているのではないかと問う。「執行部やこの議案に賛成するあなたは,この議案に賛成することによってどのような不利益を受け,どのような自己犠牲を払うのでしょうか。日弁連執行部がいう自己改革を実現するために,誰が多くの犠牲を払い不利益を受けるのでしょうか。」と述べる。

この発言も,議題とピントがずれている点では,上記発言と同様である。しかし,弁護士激増が,世代間の対立を生み,日弁連を(左右にではなく)上下に分裂させていくことを予言した点において,この発言は記憶に留められるべきである。(小林)

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