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2009年5月16日 (土)

日本国は破産しない…という主張について

2009415日の日本経済新聞コラム「大機小機」の「日本国は破産しない」には、「国の公債が多いということは…国民の金融資産が増えるということだから、国は破産しない」と書いてある。

これに対して、「国の債務が増えても、その分国民の資産が増えるから、バランスシートの総額は変わらない、という趣旨だろうか。」と書いたところ、匿名氏から、「分かりやすくいえば、家族間で金の貸し借りをしても、家族全体が破産することがないということです。」との解説をいただいた。これは、私の解釈が正しいという意味だろう。そうだとすると、最初から書いているとおり、コラム氏の主張は明らかに間違いだ。

これらの解釈の奇妙なところは、「日本国」あるいは「家族」という集団について「だけ」、バランスシートを想定するところにある。現実には、日本国内の政府、国民、企業その他の団体は、それぞれ日本国とは別のバランスシートを持っていて、ほとんどの国民は、他人のバランスシートより、自分のバランスシートを心配しながら生きている。だから、政府に金を貸したにもかかわらず、政府が約束どおり金を返してくれなければ、国民はとても怒る。国民がとても怒れば、政府が倒れる。これは、政権交代で済まないかもしれない。

「家族間で金の貸し借りをしても、家族全体が破産することがない」とのご指摘だが、私は弁護士として、夫婦間で金の貸し借りをしたために離婚に至ったケースをたくさん見ている。

貸した金を返せという国民に対して、「日本国は破産しないからご心配なく」と弁解することは、「貸したお金を返してちょうだい」と迫る妻に、夫が「わが家庭は破産しないからご心配なく」と弁解するのと同じだ。この夫の発言は、家庭の崩壊を招く。国家が崩壊してもよいというなら別だが,そうでない限り,コラム氏の主張は間違いである。

また別の匿名氏から、「国債は銀行に引き受けさせるんですよ。これは事実上半強制的です。銀行は儲かるから引き受けてるわけじゃありません。」とのご指摘をいただいた。これについては、「事実上半強制的」とはどういう意味か?について解説をいただかなければ、お答えのしようがない。この言葉は、「強制」という明確な単語に、「事実上」「半」「的」という曖昧な単語が3つもつけて、全体の意味を、わざと、とても不明確にしているからだ。

なお、匿名氏らに申し上げておくが、私自身が書いていないことについてお答えするつもりは無い。私は、定額給付金について一言も触れていないし、最初のエントリで明確に断っているとおり,国債増発を嫌ったこともない。よその誰かと議論したいなら、よそでどうぞ。(小林)

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コメント

バランスシート上債務超過にならないということをコラムはおっしゃっているのですよね。
繰り返しになってしまうようですが、それは正しいです。
すなわち、対外的デフォルトが生じないということです。
ただ、債務超過にならなければ、どんなに国債を増発してもいいということにはならないですね。
それは、国債の価値の下落を意味するからです。
ですが、国債を国内で消化するかぎりにおいて、それは国内の混乱であって、国の債務超過の問題とは、また別の問題なわけですね。
まとめると、①国債増発で国が債務超過になるか、②国債増発による債務超過以外の問題は生じるか、という二つの論点があるわけです。
コラムは①の点を言っているだけですね。
この点はしかし重要なことで、一時期なぜドルが下落し、円が高くなったのか、ということを論じる上で必要な論点です。
この点は、多くの人が誤解していますので。
極端な話ですが、紙幣の増発で国債の償還は可能ですから、
国債が償還できないということは、この場合理論上ありえないわけです。
(米国はドルを増刷しても、日本や中国に対する米国債の償還はできません。為替変動があるためです)
その意味で、①を論じる意味があります。
(その場合のインフレの問題は別途生じますが、それはまた別の問題です。)
コラムでは②の問題が一つもないとは、言っておられないと思いますよ。
小林さんが、①について、いや国債が国内で消化される場合にも
対外的にデフォルトになるのだ、だからコラムは誤りだ、
とおっしゃっておられるのか、
それとも、②その他の問題点を論じようとされているのか、わかりませんが、
もし後者だとすれば、それはコラムの主張の射程を外れたことを言っているのだと思います。
ですから、コラムを誤りと断じることは誤りです。
そのコラムは、今国債を増発して景気を回復しなければ、
将来の国債の負担以上に日本経済は悪くなる、ということを前提に
しておられるのであって、小林さんはその点に対して反対の立場だ
ということでしょう。つまり、今は国債を増発しなくても、
そんなに景気は悪くならないし、勝手に回復するだろう、今国債を
増発して将来に負担を残すくらいなら、今多少景気が悪くなっても
財政負担の生じない対策だけ打っていればいいのだ、ということじゃ
ないですか。
まあ、そこまではおっしゃられないにしても、国債をどんどん増発して良いということに
対して、直感的な、素人的な危惧感を感じていらっしゃるのであって、
それは理解できますが、
その感情を国が債務超過に陥るかという論点に向けてしまっていることに問題があると思います。
その点は、理論的に明らかなところですから。

投稿: | 2009年5月17日 (日) 11時19分

「小林さんが、①について、いや国債が国内で消化される場合にも対外的にデフォルトになるのだ、だからコラムは誤りだ、とおっしゃっておられるのか、それとも、②その他の問題点を論じようとされているのか、わかりませんが」とのことですが、どっちでもありません。私の立場は上記のエントリに明記したつもりです。また、私は経済の素人ですが、国債の増発には一切反対もしていません(賛成もしていませんが)。この点はもう何度も書いています。お手数ですが、上記のエントリをもう一度読んで下さい。

投稿: 小林正啓 | 2009年5月17日 (日) 11時41分

>どっちでもありません。

Aか、またはA以外と言われたら、どちらでもないと言う答えはありえませんが・・
小林さんは「コラムは誤り」としていますね。
つまり、コラムはデタラメを言っていると。
では、どの点が誤りなのか明確にしてください。
「○○の点が誤りだ」と言う形で示してくれませんか。
少なくとも、これまでのエントリでは、明確になっていません。
「エントリを読んでください」は答えになりません。
どの論点かについて、金融の知識が無いのでわからないとか、
つい素人感覚で言ってしまっただけならば、
「誤り」ではなく、「違和感を感じた」に訂正すべきです。
ネット上では安易に間違いと決め付けてわかったような態度を
採ってしまいがちなのはわかりますが、一応専門家なのですから、
その辺りの最低限のマナーは守ってください。

投稿: ??? | 2009年5月20日 (水) 07時32分

もいちど言いますが、どっちでもありません。
最初のコメントの質問に対する私の考えは、「このような質問の立て方が誤り」というものです。新聞のコラムに対する私の考えは、本文に「明確に」書いたとおりです。

投稿: 小林正啓 | 2009年5月20日 (水) 22時26分

もいちど言いますが、「どっちでもありません」は理屈として成立しえません。
もいちど言いますが、これまでのエントリでは、明確になっていません。
「エントリを読んでください」は答えになりません。
「このような質問の立て方が誤り」というのであれば、理由を付してください。
一応言っておきますが、間違ったことを書いてしまうことは誰にでもあります。
特に専門外のことについては、それはよくあることで、悪いことではないです。
ただし、それを指摘されたときにどう対応するかです。
他の人のブログなんかを見れば分かると思いますが、
普通は「ああ、そうだったのですか、知りませんでした。
ご指摘ありがとうございます。」で済む話です。
それを、全く理論的に筋の通らない反論をして、「俺は間違ってない」
と言い張るのは、見苦しいだけです。
特に、この辺りはここに詳しいですから参照した上で書いた方が
いいですよと、わざわざ親切にリンク先まで示してくれているのに、
全く参照もしないで、基礎的知識も全くないまま自分勝手な反論を
繰り返すという行為は、傲慢としか言いようがありません。
これは弁護士一般にも言われていることですよ。
税務関係などが特にそうですが、知らないことを知らないといえずに知ったかぶりをする。
間違いを指摘しても、「いや、私はそうは考えません」とか言い訳をするわけです。
普通は一言謝れば済むところです。
そういう傲慢な態度では喰っていけないようにした方がいいという
世間の感覚が、今の法曹人口問題に影響しているんですよ。
少しは考えたらどうですか?

投稿: ??? | 2009年5月22日 (金) 23時45分

あなたのコメントを、そっくりそのままお返しします。
以後あなたからのコメントの書き込みを禁止します。
私の批判をしたければ、よそでどうぞ。

投稿: 小林正啓 | 2009年5月23日 (土) 15時58分

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