異常行動自動検知監視カメラは警察の救世主になるか
2009年5月18日のCNET JAPANによると、400万台の監視カメラが稼働中と言われる「監視カメラ大国」英国では、監視カメラが多すぎて、警察が膨大な量のデータ処理に手を焼いているという。英国警察庁協会犯罪記録局のディレクターは、「子どもが誘拐された場合、多数の監視カメラがこの車を捕らえたが追跡できないということが起こり得る」と言ったそうである。
この発言は、イギリスの監視カメラの持つナンバープレート自動認識機能を念頭に置いたものだが、他の機能でも同様だろう。監視カメラの数が増えれば増えるほど、人間がどうやってモニターするのか?という問題に直面する。
一つの解決方法として、日本の警察庁が導入を検討しているのが、異常行動自動検知システムだ。これは、通行や談笑といった通常行動と異なるパターン、例えば喧嘩や転倒、一箇所にとどまって動かない、逆にいつもある物がなくなる、などの行動を異常行動と自動認識し、モニターする人間の注意を促すシステムである。4月16日の毎日新聞によると、警察庁は、異常行動自動検知システムを備えた街頭防犯カメラを川崎駅前に設置して実験を開始するとのことである。
このシステムが持つ技術的問題の一つは、コンピューターが認識する「異常行動」と、人間の考える「異常行動」のズレが解消できるかどうかだろう。恋人同士がハグしている映像と、ヤクザが被害者の胸ぐらをつかむ映像とが自動的に区別できなければ、モニターする警察官は、早晩、このシステムを信用しなくなる。また、カメラに異常行動と見分けられない犯罪行為、例えば熟練したスリなどは、かえって犯罪を行いやすくなるのではないかという疑念も生じうる。違法なキャッチセールスの勧誘行為と、政治的署名活動との区別は、コンピューターには不可能だ。他方、撮影される人間の軌跡を解析することによって不審人物を自動検知する機能は、少なくとも新人警官よりは優れたものになるかもしれない。
もちろん法律上の問題もある。プライバシーの問題もさることながら、最大の問題は、こういったシステムが有する萎縮効果の有無と程度である。この懸念から、こういうシステムに頭から反対する弁護士も多いが、感心しない。技術の進歩が止められないとするならば、大事なことは、技術と社会との折り合いをどうやってつけるか、例えば、適正な運用をどうやって担保するかということだと思う。(小林)
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