防犯カメラのニュース4題
2009年6月5日のasahi.comによると,警察庁は,補正予算5億9千万円で,全国15箇所の小中学校近くの住宅街に25台ずつの防犯カメラ計375台を設置する。防犯カメラは,地元の警察と日頃協力的な民間の防犯ボランティア団体に管理してもらう。カメラ画像を見るのは原則,犯罪などがあって捜査上必要な場合に限る。記事は,プライバシーとの関係で論議を呼びそうだとも伝えている。
麻生内閣の巨額補正予算は,繁華街や商店街だけでなく,一般の住宅街への防犯カメラ設置を現実化した。適切なプライバシー保護方策をとる必要があることは言うまでもないし,警察もそうすると言っているようだ。
しかしそれなら,「地元警察と日頃協力的な民間の防犯ボランティア団体」に協力してもらうというのはいかがなものか。そもそも,この「民間の防犯ボランティア団体」とは何なのか。仮に町内会で組織した自警団のような団体であるなら,プライバシー保護の見地からは完全に落第である。なぜなら,そのような団体には法人格がない。法人格がない団体は,責任の所在が曖昧である。そのような団体にカメラ画像の管理を任せるのでは,管理上問題があっても責任を問えないからだ。
同日のIT proは,「1万台超の監視カメラ監視にはインテリジェンスが必要」というスウェーデン監視カメラ会社CEOのインタビュー記事を掲載した。発言の要旨は,ストックホルムで1万5000台のバスに監視カメラを設置する事例で,カメラに対する撮影妨害行為(タンパリング)の自動警告機能や,自動画像処理機能を備えた次世代監視カメラについてのものであるが,これらの機能に限らず,監視カメラ技術のハイテク化は,日進月歩であるし,このような技術が無ければ,増える一方の監視カメラを管理できない。
6月4日の「アキバ経済新聞」は,秋葉原先端技術実証フィールド推進協議会が数百万フレームの画像を対象に1秒以内で類似した特徴を持つ顔画像を検索することによって特定の人物を捜し出す「類似検索技術」の実証実験が開始されたと報じた。これも,監視カメラシステムが必然的に歩むハイテク化である。なお,膨大な顔画像の瞬時検索が可能になったということは,この顔画像の保有者は当然,いわゆる個人情報保護法の定める個人情報取扱事業者に該当することになり,様々な法的義務を負うことになる。分かっているとは思うけど。
6月6日の毎日jpは,タスポ無しでタバコが買えると評判を呼んだ「顔認証方式」自販機が,10歳児でも購入実例があることが判明し,そこで認証基準を見直したところ,明らかな成人でも購入が拒否されるというクレームが続出していると報じた。先端技術でも,いざ実用段階になると,うまくいかないことが多いのだろう。(小林)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント