日弁連はなぜ負けたのか ~司法改革という宗教~ (13)
東西冷戦の終結と55年体制の崩壊、戦後経済の復興とバブル景気がもたらした弁護士会の左右分裂は、平成2年(1990年)、中坊公平氏が掲げた「司法改革」によって表向き再統合された。しかし平成7、8年(1994、1995年)の日弁連は、法曹人口問題を巡って再び左右に分裂し、意思決定能力の無さを露呈する。
このとき、とても「高い筋」から、土屋公献日弁連会長に対して、日弁連への介入、端的にはお取りつぶしを示唆する露骨な脅迫があったという噂がある。あくまで噂であり、確認のしようがないが、私は事実だと思う。土屋執行部の滑稽なほどのうろたえぶりと、その後の方向転換が、よほど強力な外圧があったことを証明している。
日弁連から政治的影響力を奪うのはとても簡単である。強制加入や弁護士自治の廃止などといった、過激で抵抗の強い手段をとる必要は全くない。一つの地方裁判所所在地に一つしかない弁護士会を、二つ以上認めるように「運用を変える」だけでよい。それには弁護士法32条の改正が望ましいが、改正しないでも解釈上不可能ではない。なぜなら、明文の禁止規定がなく、かつ、東京にだけ3つもの弁護士会を認める理由はないからだ。
会の分裂を公認しさえすれば、ただでさえ分裂している弁護士会だから、勝手に第二愛知県弁護士会や第二埼玉弁護士会を作ってくれる。そうして地方単位会が分裂していけば、第二日弁連を作らせてくれという声が、弁護士会内部からわき上がってくる。弁護士自身が、第二日弁連の設立を頼みに来る日を寝て待てばよい。もちろん、日弁連が分裂しても弁護士という職業は無くならない。強制加入団体性や弁護士自治も無事だ。しかし、双方足の引っ張り合いをしてくれるから、政治的影響力は無に帰するであろう。余談だが、現在(2009年)の状況を見ると、東京に4つめの弁護士会ができる日は遠くないと思う。
平成8年(1995年)秋、日弁連は破綻・崩壊の危機に瀕していた。これを回避するため、日弁連は、二つの課題を突きつけられた。一つは分裂状態の修復であり、一つは自己改革をしてみせることである。(小林)
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コメント
弁護士自治の廃止が過激だとは思いません。むしろ、懲戒権まで弁護士会が持っているのは異常です。世界的に見ても稀な制度であることは現状維持派の弁護士でさえ認めています。普通の国のようにしようという動きは、憲法自体が欧米の憲法と比べて特に変わったものではないのだから、いずれ出てくるでしょうね。
抵抗は弁護士会からは強いでしょう。しかし、国民から見れば弁護士が国民のほうを見て仕事をするようになるのだから、何も悪いことはないと思います。
たとえば、いまだに日弁連の一部には広告を制限しろという主張がありますが、仮にそれがある程度現実的な動きになった時、テレビや全国紙で大きく広告している事務所がマスコミと組んで動いたらどうなりますか?
実際、弁護士会では評判が悪いという大手事務所のおかげで救われた多重債務者の数はとても多いです。
あるいは、地方の弁護士過疎が解決しないのは地方の弁護士会が推薦人を要求するため弁護士法人の支店を出せないからだという批判を新聞が書きたてたら?
強制加入や弁護士自治は弁護士の間ではまるで天動説のように不変の真理でも、国民から見ればむしろ特殊な仕組みなんですよ。
それに、弁護士の間でも今はそれほどいわゆる左への支持が強くないでしょうから、不満を持っている人も多いでしょう。あるいは、思想以前に、ビジネス志向が強くて公益活動の義務付けを疎ましく思っている弁護士もいるようです。
この前の週刊ダイヤモンドの記事を見る限り、弁護士どうしの不信感はきわめて強いようですし、懲戒制度が内部対立のために利用される恐れも感じました。証拠もなく他の弁護士を違法な非弁提携などと決めつけてよいものでしょうか? 弁護士どうしの不信感を高め、弁護士自治制度の崩壊に突き進むだけだと思います。
また、○○弁護士会は○○党が強いから嫌だといって都内からの進出をためらっている弁護士の話も身近に知っています。そういう弁護士は政府よりも弁護士会を嫌っているので、いくら弁護士自治の理念を説いても通じないでしょう。法務省による監督は問題でも、アメリカのように第三者委員会のような仕組みもあり得ますから、戦前回帰がどうのという議論も説得力がありません。
内外からつきあげられれば、政治的にどうなるか、10年後のことは全くわからないですよ。
投稿: JO | 2009年9月 4日 (金) 23時39分
コメントありがとうございます。JOさんは誤解しているようですが、私の基本的な考えは、JOさんとほとんど変わりません。私が本稿で言っているのは、弁護士会の崩壊という同じ効果をもたらすなら、弁護士法を改正するより、運用を変えることがずっと現実的だと言っているだけです。今後ともおつきあいをよろしくお願いいたします。
投稿: 小林正啓 | 2009年9月 5日 (土) 07時32分