« 「自由とは何か~監視社会と『個人』の消滅」 大屋雄裕 ちくま書房 | トップページ | 「テロリズムの罠」 右巻・左巻 (佐藤優 角川新書) »

2009年7月14日 (火)

日弁連はなぜ負けたのか ~司法改革という宗教~ (14)

平成6年(1994年)から平成7年(1995年)にかけて、司法試験合格者数増に頑強に抵抗した日弁連は世論の大バッシングを浴び、崩壊・解体の危機に直面した。これを機に、日弁連は重大な自己改革を迫られる。これを象徴するのが、日弁連の月刊誌「自由と正義」の表紙デザインだ。

「自由と正義」平成78月号から12月号の表紙は、落成した新会館の写真や絵で飾られた。

Shinkaikan_2

そのため、その前号までの表紙デザインと、平成81月号以降の表紙デザインが差し替えられたことは、弁護士のあいだでさえ、あまり知られていない。大多数の弁護士には、「そういえば昔の表紙は違ったなあ。でも、いつ変わったっけ?」程度の認識しかない。

新弁護士会館落成以前のデザインは、星新一の小説の挿絵や未来的なイラストで昭和に名を残したイラストレーター、真鍋博の手になるものであり、昭和45年(1970年)3月号から25年もの間、「自由と正義」の表紙を飾り続けた。

Old

このデザインを採用した編集委員長、故山本忠義弁護士(~2002年)は、後の日弁連会長(昭和57年、58(1982年、1983))である。デザインの概要は、抽象化された若者の横顔と、その後頭部付近にはためく二本の旗からなっている。若者の横顔は、理想を象徴している。そして二本の旗は、真鍋自身の言葉によれば、「生きて動く自由と正義」の象徴である。旗は交差し躍動していて、その下で旗を振りかざし行進する民衆を想起させる。ちなみに、このデザインが採用された最初の号の特集は東西冷戦構造の象徴、日米安保条約だ。

端的に言おう。このデザインは、左翼臭がする。真鍋博や山本忠義編集委員長が意図したか否かはわからないが、このデザインは、旧社会主義・共産主義国に残る「革命記念碑」にとてもよく似ている。ハンマーや銃を持った筋肉質の男女が加われば、革命記念碑そのものだ。

弁護士人口増に頑なに抵抗する日弁連が世論の大バッシングを浴びた平成7年が暮れ、明けて平成8年(1996年)1月号の「自由と正義」の表紙は、眼を想起させる幾何学模様に変更されていた。

New

このとき表紙デザインを差し替えた編集委員長は宮川光治弁護士。後の司法改革の推進役を担った一人であり、平成20年(2008年)に最高裁判所判事に就任した。

25年間続いた表紙のデザインを差し替えた理由について、宮川光治編集長は、「変化してやまないこの時代に、私たちの機関誌である『自由と正義』は、このままでよいのであろうか」と述べる。このとき日弁連は、左翼臭の染みついた衣(ころも)を脱ぎ捨てたのだ。宮川光治編集長は、日弁連が解体の危機を免れるためには、「何でも反対のサヨク集団」という世間に染みついた日弁連のイメージを何としても払拭する必要があると考えたのだろう。

それはさておき、旧デザインに左翼臭があるなら、新デザインの眼の意匠には宗教色がある、というのはできすぎだろうか。(小林)

|

« 「自由とは何か~監視社会と『個人』の消滅」 大屋雄裕 ちくま書房 | トップページ | 「テロリズムの罠」 右巻・左巻 (佐藤優 角川新書) »

コメント

 なるほど。言われてみると,旧版の「自由と正義」の活字も「アジビラ体」に見えてしまいますね。

投稿: Barl-Karth | 2009年7月15日 (水) 16時07分

いつもコメントありがとうございます。今後も生々しい展開が続きますが、ご期待下さい。

投稿: 小林正啓 | 2009年7月16日 (木) 21時08分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/45636849

この記事へのトラックバック一覧です: 日弁連はなぜ負けたのか ~司法改革という宗教~ (14):

« 「自由とは何か~監視社会と『個人』の消滅」 大屋雄裕 ちくま書房 | トップページ | 「テロリズムの罠」 右巻・左巻 (佐藤優 角川新書) »