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2009年7月21日 (火)

日弁連はなぜ負けたのか ~司法改革という宗教~ (15)

「司法改革」を掲げる一方、司法試験合格者数を年700名からたった100名しか増加しない(しかもこれを5年間据え置く)と決議した日弁連(土屋公献会長)は、「ギルド社会のエゴ」と轟轟たる世論の非難を浴び、800名どころか1500名への増加が事実上決定し、日弁連は手痛い敗北を喫する。存在価値を疑われ、存亡の危機にさらされた日弁連は、抜本的な自己改革を迫られた。これを象徴する一つの出来事が、機関誌「自由と正義」の表紙デザインから左翼臭を払拭することであった。

そしてもう一つが、戦犯を異端として破門することである。

日弁連が大敗北を喫するきっかけとなった上記決議は、土屋公献執行部案でも、反執行部案でもないことに注目されたい。この決議は、当時、日弁連法曹養成問題委員会委員長という要職にあった前田知克弁護士(二弁)が、もと日弁連会長の辻誠弁護士(故人)を提案者に担ぎ出して提出したものであった。そして、前田知克弁護士の率いるグループは、お互いに票を読み切れず、敗北を覚悟していた執行部・反執行部双方に働きかけた。具体的には、「関連決議案賛成を呼びかけるなら、執行部案を通す」という提案を行い、土屋公献会長と反執行部派の領袖の合意を取り付けたのである。この密約に基づき、土屋公献会長は、臨時総会の席上、関連決議案は執行部案の具体化であって修正案ではない、執行部案に賛成する人は修正案にも賛成してほしいと呼びかけた。他方、執行部案反対派も、関連決議案には賛成するよう呼びかけた。その結果として、真っ二つに分かれていた日弁連なのに、関連決議案には圧倒的多数が賛成するという、とても奇妙な決議が誕生したのである。

この密約と陰謀に基づく関連決議が、世論の大バッシングを招き、日弁連を解体の瀬戸際に追いやり、法曹人口論での無残な敗北を招いた。首謀者であった前田知克弁護士と、関連決議を支えた弁護士は、戦犯として日弁連の中枢から破門される。もっとも、関連決議の提出名義人であった辻誠もと日弁連会長は、その年齢(当時82歳)のためか、お咎めなしとなったようだ。

「自由と正義」の表紙デザインを差し替えた編集長の宮川光治弁護士は、平成8年3月号の特集「回顧と展望」で、土屋公献会長に対し、「(年800人とする関連決議案が平場から提案された)あのときに執行部が『いや、執行部案だけで十分であって、関連決議案は不要である』ということを、あの場ではっきりおっしゃっていれば、関連決議案はあのように大多数により賛成されなかったと思われます。そして、執行部案だけが通ったということであれば、その後の展開はかなり違ってきたのではないでしょうか。また、95年の年1000人案は、小さな司法からの脱却を目指す真に積極的な英断であるとして高く評価されたのではないでしょうか。」と追及した。これに対して、土屋公献会長は、一言も発することができなかった。

この企画「回顧と展望」は、会長任期の総まとめとなる座談会だから、どんなに無能な会長であっても、成果を強調し、お疲れさまでしたと締めくくるのが、編集長の役どころである。それにもかかわらず、土屋公献会長を弾劾した宮川光治編集長の行為は、たとえるなら、全社員の面前で、社報編集部長が社長を罵倒したに等しい。そして、罵倒された土屋公献会長自身が弁解も反論もできなかった事実は、このとき同会長が置かれていた立場を端的に示すものである。

日弁連の中枢を破門された前田知克弁護士は、平成10年(1998年)度の日弁連会長に立候補し、小堀樹弁護士(東弁)に3081対8238で破れる。その後、日弁連主流派に反旗を翻す仕事は、高山俊吉弁護士(東弁)に引き継がれる。「回顧と展望」で宮川光治「自由と正義」編集長に痛罵された土屋公献会長は、高山俊吉候補の推薦人に名を連ねる。

いわゆる「弁護士法一条の会」と呼ばれ、この10年間、日弁連反主流派の中核となってきたグループには、以上の経緯によって日弁連中枢から破門された弁護士が、相当数流入していると見られる。

もっとも、いわゆる一条の会がいつ設立されたか、その原始会員や現在の中核メンバー、歴代の候補者推薦人が誰かといった資料には接することができていない。ご提供頂ければ幸甚です。(小林)

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