« 「こんな日弁連に誰がした?」に対するご質問やご意見について | トップページ | メールでのご感想 »

2010年3月10日 (水)

日弁連会長選挙結果の感想

2010年度の日弁連会長選挙再投票は、宇都宮候補の圧勝で終わった。

仮ではあるが、今回の投票結果と前回のそれを見比べたとき、特徴的なのは、「投票率は変わっていないのに、得票数が大きく変わった」ということだと思う。

全体で見ると、投票率は0.26%(約75人分)しか下がっていないのに、山本候補は1241票の得票を減らし、宇都宮候補は1165票も増やした。これが前回の千票差をひっくり返した上に、約1500票という大差をつける原動力になった。そして、この傾向は都市部でも地方でも、まんべんなく観察される。

このことは、「前回山本候補に投票したが、今回は宇都宮候補に乗り換えた」という投票行動が、相当数あったことを示している。おそらく、前回はどうせ信任投票と高をくくり、派閥や先輩やボスの言うとおりに投票したところ、再投票との報を受けて、一票の力に気づいたのだろう。このような投票行動は若手に多かったと想像される。

つまり、前回は、主流派に対する「地方の反乱」だったが、今回は「若手の反乱」ということだ。これらの事実は、日弁連が、都市と地方、世代間で分裂したことを示している。

最後まで山本候補を担いだ主流派は、この10年間、法曹人口問題での失敗を隠蔽し、会員を偽り続け、今日の分裂と荒廃を招いたツケを払うときが来たと自覚するべきだ。私は大阪の選挙事務所のお手伝い(今回は、ほんとに少しだけ)をしただけだが、東京事務所の弁護士が書生論を振り回し、現場の危機感に耳を傾けないさまにはあきれ果てていた。念のために言っておくと、このツケは、今回落選しただけではすまない。

他方、宇都宮候補について述べると、その支持母体の半分は、従前主流派候補を支持していた人である。今回山本候補を擁立するまでの日弁連主流派は、昨年秋、法曹人口問題で求心力を失う中で、迷走を繰り返した。これに業を煮やした一部の弁護士が、宇都宮候補を担ぎ出した。その意味では、山本候補と宇都宮候補は同根である。しかも、今回宇都宮候補を担いだ弁護士たちは、かつて土屋公献候補を担ぎ、法曹人口問題で日弁連史上最大の失敗した人たちと、相当程度重なるように思われる。

宇都宮新会長は、消費者問題では一定の成果を上げるだろうし、新たな切り口から法曹人口問題に切り込むかもしれない。しかし他方、従前の主流派がソフトランディングを目指して築いてきた人脈を失い、法務省や裁判所との信頼関係を破壊するかもしれない。そもそも日弁連は、法曹人口問題の当事者としての地位を失っているのだから、1500人にすると公約したところで、実行する権限が無いのだ。それを知らず宇都宮候補に投票した若手の支持は、程なく失望と反感に変わるだろう。

私は、日弁連は定められた滅びの道を歩んでいると考える。あとはそれが早いか、遅いかの違いがあるだけだ。宇都宮新会長が、起死回生の救世主になる可能性は否定しないが、滅びを早めるだけに終わるかもしれない。

|

« 「こんな日弁連に誰がした?」に対するご質問やご意見について | トップページ | メールでのご感想 »

コメント

東京に危機感がないといいますが、むしろ増員反対で世論から孤立することへの危機感は強くあります。東京では弁護士不足は甚だしいです。企業から次々に持ち込まれる難題、サラ金全盛時代に借りた人の債務整理、高齢化が進む中での後見人や遺産相続、交通事故の保険金、離婚・・

毎日夜遅くまで仕事をしても処理するのが手いっぱいで、新しい分野の勉強に行く時間もなかなかとれません。

事件が殺到していて新たに受ける事件を制限している事務所も多いですね。

こういう状況でどうすれば弁護士が余っているという結論に達するのか、不思議でなりません。

何かと批判の多い大規模債務整理事務所も弁護士が足りないから事務員にまかせている部分が多くなるわけで、地方での過払いあさりも地方に弁護士が少ないからそれだけの権利が放置されているわけで、結局のところ、弁護士不足がすべての問題なんですよ。

投稿: こちら東京ですが | 2010年3月11日 (木) 01時15分

うちの事務所の60期の弁護士は、
第1回目は山本候補を推す同期から頼まれたので山本候補に入れた(宇都宮陣営からの電話なし)。
第2回目は両陣営から頼まれたけど、前回は山本候補に入れたので宇都宮候補にいれた。
と言ってました。

若手には選挙に興味がない人も多く、両方に義理を果たせることになりますからという理由はすごく納得できます。

「一票の力に気づいた」が雪崩を打って逆転させるまでのものとはおもえず、大阪の逆転現象は不思議に思っていましたが、今日、この60期の話を聞いて腑に落ちました。

投稿: 大阪の弁護士 | 2010年3月11日 (木) 17時58分

あははは。
このコメントを選挙事務所の偉い先生方に見せたらなんと言うでしょうね。きっと脱力するだろうなあ。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月11日 (木) 18時53分

先生の見方も一理あるかとは思いますが、どちらかというと
初戦勝てなかった主流派の組織票が意気消沈して投票率が下がり
一方でどうせ勝てないと諦めていた非主流(反主流ではない)の
浮動票が活気づいて総得票数の勝ち負けまでひっくり返してしまった
という一般の国政選挙と世論調査の関係みたいな成り行きで
起こった大逆転のようにも思えるのですが。

投稿: 通りすがり | 2010年3月11日 (木) 21時36分

> 私は、日弁連は定められた滅びの道を歩んでいると考える。

東京の若手は多数がそう感じているのではないでしょうか。

歴史を紐とけばどんな組織も制度疲労を起こして滅びていくので、これも避けられないことと思います。「再投票の報を聞いて一票の力に気づいた」というのは、少なくとも都市部若手の感覚とはかなり異なるような気がします。私に関して言えば、「どっちが勝っても同じようなものだし、既に日弁連は歴史的な役割を終えているだから仕方ないだろうな…」という印象をもっています。

投稿: まめしば | 2010年3月12日 (金) 02時16分

「こちら東京ですが」さんへの質問
>事件が殺到していて新たに受ける事件を制限している事務所も多いですね。
 
 基本的な質問なのですが、
 そんな状態なのに、東京の事務所はどうして新人弁護士をどんどん雇用しないのでしょうか?
 東京で就職したいという修習生はたくさんいると思うのですが。

投稿: M.T. | 2010年3月12日 (金) 09時56分

「乗り換え説」は支持が少ないようですね。もちろん、前回棄権し今回宇都宮候補に投票した会員が少なからずいることは確かでしょう。ただ、それだけなら投票率は上がるはずで、山本派が今回棄権したとしても、投票率がほぼ同じというのは偶然が過ぎると思います。(以下東京弁護士会についての指摘は数字の記載ミスだったので撤回します)し、東京弁護士会のように、投票数が872減ったのに、宇都宮票が131票しか減らず、山本票が675も減った説明はつかないと思います(撤回ここまで)。しかも東京の1回目の投票結果は、山本票が会員の5割を超えていたのです(つまり投票率100%でも山本候補が勝っていた)。大阪も近いものがありますよね。いずれにせよこの部分の分析は、どちらの陣営にせよ「次」を考えている人にとってはとても重要な問題になるでしょうね。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月12日 (金) 10時20分

東京からはた目で見ていると、大阪が逆転したというのは、
(1)もともと大阪は東京に対抗する地方のリーダーという意識があるので、一回目の投票での地方の動向を見て、若手に限らず意識を変えた人が多かった
(2)次の日弁連選挙に大阪から候補者を出すことを考えた場合、ここで地方の流れに合わせておいた方が有利と考えた派閥の人があまり熱心に動かなかった
というようなところではないかと思っているのですがうがちすぎでしょうか。
一弁と二弁は、派閥の締め付けと言うよりは(派閥はもう力を失ってますから)、若手の半分が大手渉外で、その他も企業法務等の無関心層が多いので、若手はあまり投票をせず中堅以上の固定層のみ投票していた結果、2回目でもあまり極端な変動はなかったと感じています。
東弁は、大本営が硬直して空転する中で、若手が愛想を尽かしたように感じました。宇都宮先生のようなカリスマはもういないのですから、よく知らない候補の為に勝ち目のない戦いで消耗するよりは、さっさと次にねらいを付けた方がよい、と思った人が多かったのではないでしょうか。

いずれにせよ「日弁連は定められた滅びの道を歩んでいる」というのは全く同感です。

投稿: 東京の弁護士 | 2010年3月12日 (金) 11時20分

宇都宮候補に実行の権限がないことくらいわかってます。公約が実現できない可能性も高いと思っています。しかし,日弁連としての姿勢,きちんと汲み上げた会員の意見を言って欲しいのです。

弁護士増員に反対するなら強制加入を廃止するというならすれば良いんです。このまま弁護士が増加していけば,いずれは弁護士会は任意加入団体になります。中山道と東海道みたいなもんで,どちらに行っても同じところについてしまうのだと思っています。
だったら,せめて言うことはきちっと言って,潔く滅んで欲しいのです。

現執行部のように丸め込まれたまま滅んだら死んでも死にきれません。
せめて日弁連が滅んだ後,その後を過ごす人に「日弁連は最後まで頑張ったんだよ。」と誇れるようにして欲しいのです。


投稿: 東京 | 2010年3月12日 (金) 11時41分

「東京の弁護士」さんへ

大阪については、当たらずといえども遠からず、といったところではないでしょうか。ただ大阪は世界が狭いので、途中で態度を変えると後々まで信用を失いますから、1回目の投票の後、態度を変えた人は、少なくとも私の目からは見あたりませんでした。
ただ、大阪で「次の次」や「次の次の次」を考えている弁護士の一部、今までであれば当然、山本候補の選挙事務所に日参して然るべき複数の弁護士が、今回ははじめから、山本候補の選挙事務所に一切顔を出さなかったことは事実です。また全体として、昨年夏以来の東京での候補者選びのごたごたには、うんざりしていたことも事実です。
一方一弁二弁の分析については異論があります。二弁の投票総数では71票しか伸びていないのに、山本票は141票減らし、宇都宮票は212票増えました。一弁も、投票総数では57票しか伸びていないのに、山本票は17票減り、宇都宮票は164票増えました。この票の動きは重大だと思います。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月12日 (金) 14時33分

>今回山本候補を擁立するまでの日弁連主流派は、昨年秋、法曹人口問題で求心力を失う中で、迷走を繰り返した。

 この論述については違和感を覚えます。
 宮崎執行部は法曹人口問題で着実に結果を出していたのではないでしょうか。
 にもかかわらずこの投票結果となったのは、宮崎執行部の成果が会員から正当な評価を受けなかったか、そもそも会員に理解・共有されていなかったものと考えます。
 この見解は一般会員の感覚とずれているかもしれませんが。

 一弁二弁について「東京の弁護士」さんの分析は的確だと思います。「再投票でも山本候補は安泰、再選挙が勝負」という認識のもとに投票を怠った者がいるために山本派の票が伸びなかった一方で、宇都宮派は無党派層の掘り起こしに成功して票を伸ばしたと感じます。
 票の動きそれ自体は、一弁では、山本票が17票減り、宇都宮票が164票増えた結果、投票総数は-17+164=57票増えた。二弁では、山本票が141票減り、宇都宮票が212票増えた結果、投票総数が-141+212=71票増えたということでしょうから、計算上当然とは思いますが。

投稿: なしゅ@東京 | 2010年3月17日 (水) 00時31分

 蛇足ですが、
>東京弁護士会のように、投票数が800減ったのに、宇都宮票が700も増えて、山本票が1500も減った説明はつかないと思います。

これは「山本票が675票減り、宇都宮票が131票減り、無効疑問票が66票減った結果、投票数が合計872票減った。」の誤りと思われます。
 ただし、そうだとしても、なぜ東弁で山本票が675票も減ったのか、東京弁護士会での分析と総括は不可欠と思います。

投稿: なしゅ@東京 | 2010年3月17日 (水) 00時50分

なしゅ@東京さんへ

>今回山本候補を擁立するまでの日弁連主流派は、昨年秋、法曹人口問題で求心力を失う中で、迷走を繰り返した。

→やや誤解を招く書き方だったと反省していますが、私としては、いわゆる主流派(語る会)が昨年秋ころから候補者選びで迷走したことを指摘したつもりです。そして、私自身は、少なくとも柳■候補が出馬表明するまでの迷走の原因は、法曹人口問題にあったと考えています。平たく言うと、「この候補では、法曹人口問題で虎に勝てない」という意見が強かったため、二弁の「3+1」の候補ではまとまらなかったということです(現実に宮崎会長が着実に成果を出したか否かという問題ではなく、それが会員にどう受け取られているかという問題です)。その後のごたごたについては、私自身愛想を尽かしたこともあって、伝聞でしか知りませんし、正確なところは分かりません。ご存じの方がいたら、是非、公表していただけたらと思います。拙著よりもある意味おもしろい悲喜劇かもしれませんし、「次」のいい教訓になると思います。こういったところをちゃんと総括しておかないと、主流派は今の自民党みたいになるでしょうね。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月17日 (水) 10時53分

 宮﨑執行部の法曹人口政策については、マスコミや官房長官が叩いてくれたこともあり、「虎」に消極的支持票を投じていた会員に一定の評価を得たのではないかと思います。
 これは、「虎」側の「めざす会ニュース」が宮﨑執行部の二度の提言に対して「ごまかしに乗るな」という論調になったことからもわかると思います。
 他方で、今回山本陣営の代表発起人になった方など、宮﨑執行部の法曹人口増抑制政策を苦々しく思っていた方々がいることも確かです。

 私は今回の選挙を外部から眺めていただけなので、実際に山本陣営がどのような方が中心となって政策をまとめたのかは知りません。
 しかし、山本陣営の政策を見ると、山本候補が宮﨑執行部の一員で法曹人口増抑制政策に関わったにもかかわらず、宮﨑執行部の実績を積極的に評価して引き継ぐという論調がありません。
 そのかわりに、これまでの日弁連執行部の実績を引き継ぐという論調が強かったように思えました。
 ですので、宮﨑執行部の政策を苦々しく思っていた方々が山本陣営の政策を作ったのではないかと思えてなりません。

 そのため、今回の選挙は「宮﨑」執行部の成果が問われたとの側面は薄く、「(従来の)主流派」執行部の成果が問われた選挙になったのではないかと考えています。選挙戦でも「主流派vs非(反)主流派」との捉え方が大勢を占め、宮﨑執行部は独自性を否定され「主流派」に埋没させられた感がありました。
 結局関わらなかったので詳しくは知りませんが、「語る会」は「従来の主流派のやり方では勝てない」との認識で活動をスタートしたのではなかったでしょうか。宮﨑執行部もその認識から従来の執行部の政策を修正していったと思っています。
 しかし私には、当初の語る会や宮﨑執行部が勝てないと考えていた選挙を、山本陣営はまともにやってしまったようにしか見えません。
 「従来の主流派の業績が、会員の多数から明確に否定された選挙」
 私は今回の選挙をそのように捉えています。  

投稿: 大阪の弁護士 | 2010年3月17日 (水) 15時44分

大阪の弁護士さんへ

賛成です。このコメントを含め、すごくレベルの高いコメントが集まっていて、感激です。「語る会」の中心メンバーに是非読んでほしいですね。餃子派の皆さんや、タイガースの皆さんも、コメントをお寄せください。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月17日 (水) 19時14分

 「大阪の弁護士」さんの今回の意見には基本的に賛同します。
 その上で、なぜ宮﨑執行部は会員に対して誇りたいはずの成果をあえて誇らなかったのか、その理由を考えなかった(というか成果の存在そのものを意識しない)会員があまりに多すぎた、成果を誇らなかった理由を考えなかった者はU陣営のみならずY陣営にもたくさんいた、ということであろうと思います。
 そもそも、歴代執行部は「なぜ日弁連は3000人を受け入れたのか」についてすら、会員に理解を求める努力をしてきていないのですから、宮﨑執行部の「成果」について会員の理解を得ることはどだい無理だったのでしょうか。
 現執行部には、せめて新執行部に対しては「成果」を確実に引き継ぎ、その理由を共有していただきたいと思います。
 そして、新執行部がまず第一になすべきことは、全会員に対して、「こんな日弁連に誰がした?」を配布することでしょう。

投稿: なしゅ@東京 | 2010年3月18日 (木) 01時02分

きょ、恐縮です。

投稿: 小林正啓 | 2010年3月18日 (木) 07時46分

 宇都宮新会長就任から2週間が経ちましたが、私は風邪をこじらせて数日間伏せっておりました。
この間、会長からのあいさつ
http://www.nichibenren.or.jp/ja/jfba_info/kaityou_aisatsu/kaityou_aisatsu2010.html
に続いて、
会務執行方針
http://www.nichibenren.or.jp/ja/updates/policy.html
が明らかにされました。
 すでに「変節」を問う声が出ているそうですね。

投稿: なしゅ@東京 | 2010年4月14日 (水) 10時26分

 先日、日弁連(もと)主流派が傷をなめ合う飲み会に参加しました。そこで上がった発言には、
● 新会長は、名古屋での定期総会において、選挙で新会長を支援した人たち(1500人論者)から猛反発を受けることになるのではないか。
○ そうかもしれない。そうかもしれないが、我々は、後ろから飛んでくる鉄砲玉から、新会長を守らなければならない。
というものがありました。
 日弁連はまだまだ捨てたものではないと思いました。


 

投稿: なしゅ@東京 | 2010年4月21日 (水) 02時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/47778019

この記事へのトラックバック一覧です: 日弁連会長選挙結果の感想:

« 「こんな日弁連に誰がした?」に対するご質問やご意見について | トップページ | メールでのご感想 »