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2010年4月30日 (金)

平凡社新書「こんな日弁連に誰がした?」発売中です

こんな日弁連に誰がした?」をご紹介いただいたブログなどです(順不同)。ありがとうございました。

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2010年4月27日 (火)

宇都宮新会長は「ペースダウン」と「トーンダウン」

日弁連会長選挙に主流派から立候補して敗れた山本武嗣弁護士が、日経ビジネス45日号「敗軍の将、兵を語る」で「それでも弁護士の増員を」という寄稿を行っている。

一言でいって、ちぐはぐな日弁連主流派を象徴する文章だと思う。

山本弁護士は、「弁護士を増やす意義は、国際競争を勝ち抜くことにあります。」と述べる。なるほど。正論だろう。それなら、国際競争に勝ち抜くために司法はどうすべし、と仰るのかと思って読み進めてみると、「潜在的なニーズはあります。例えば、仕事を依頼したくても、経済的に弁護士費用を支払えずに、泣き寝入りをしている人々がいます」だそうな。

困窮している人を救済することや、扶助予算の増額が必要だという主張は分かる。これも正論だ。でも、国際競争を勝ち抜くことと、いったいどういう関係があるというのだ?

つまり山本弁護士の文章は、部品の一個一個は正論だが、つなげて書くとちぐはぐだ。企業の代理人として書いた準備書面に、労働者の代理人として書いた準備書面の文章を、間違えてコピペしてしまったようなものだ。そのため全体としては支離滅裂、説得力ゼロである。

このことは、第一に、この半年間、山本候補を支えてきた日弁連主流派が、企業系(国際競争に勝ち抜く!)と人権系(貧困者救済!)に分裂したまま、双方の主張のすりあわせを怠ったことを意味している。第二に、山本弁護士が、分裂した主流派のレクチャーを鵜呑みにしているだけで、法曹人口問題を、自分の頭できちんと考えたことがないことを意味している。

これでは、選挙に負けて良かったと言われても仕方ないだろう。とても残念である。

一方、勝利した宇都宮日弁連新会長は、会務執行方針を発表した。最大の争点だった法曹人口問題は最初から14番目に格下げとなり、「法曹養成・法曹人口のあり方について検討を深め、市民の理解の得られる政策を提起する」と、すごく穏当な表現に落ち着いた。会務執行方針は、山本候補のマニフェストと区別がつかない。

さらに、419日の日本記者クラブでの記者会見では、法曹人口ペースダウンを」と述べ、人数については明言を避けた。あのー、「ペースダウン」は宮﨑誠前会長の公約なんですけど。会長就任1ヶ月であることは大目に見ないといけないが、主張が山本候補→宮﨑前会長と遡っていくようでは、「トーンダウン」とのそしりは免れないだろう。これが、「公約違反」との非難に変化するまでの時間は長くはない。

畑中鐵丸弁護士が、ビジネス法務5月号に、「混迷極める日弁連会長選と今後の法曹人口問題の行方」と題する寄稿をしている。さすがに「東京大学在学中に司法試験と国家公務員上級試験に合格した」というだけあって、間違いは多々あれど、ポイントはついていると思う。間違いとしては、すでに指摘されているとおり(私も本に書いたが)、法曹人口増員論は「突如出現した」ものではないし、宇都宮弁護士を「過払い金返還請求事件を『簡単で儲かるプラクティス』として確立された実績」の持ち主と評価することは誤りだし、とても失礼だと思う。

しかし、弁護士の急増は一種の訴訟社会化を招くという指摘は正しいと思う。畑中弁護士は労働審判事件を挙げているが、他にも、事件の急増が予想される領域がいくつかある。私は数年前から、大阪弁護士会の業務改革委員会で同じ主張をしてきたが、ほぼ無視されてきた。しかし、最近風向きが変わってきたと思う。これからの弁護士会は、訴訟の増加を支援する方向に動き出すだろう。

訴訟社会化といっても、すぐアメリカ並みになると怖れる必要はない。制度が全然違うから、日本の弁護士がどんなに増えて、どんなにがんばっても、アメリカ並みの訴訟社会になる可能性はゼロだ。しかも、一定の訴訟社会化は、国民の意思でもある。それが「法の支配」という司法改革のスローガンの意味するところなのだから。

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2010年4月20日 (火)

「情報を持ち歩く」という発想

 第一法規のUSBメモリー判例検索ソフト「D1-Law nano 判例2000」を衝動買いした。目論見としては、ノートパソコンと一緒に持ち歩いて、ネット環境のないところで判例検索をするつもりだった(私はインターネットでの判例検索システムを利用している)のだが、買ってみると案外、パソコンを持ってネット環境のないところで判例検索をするという機会が無く、しばらく放っておくことになってしまった。

しかし、使ってみて分かったのは、ノートパソコンと一緒に持ち歩くという発想が間違っていた、ということだった。

使い方は簡単で、USBを差し込むとフォルダが開き、中のプログラムをクリックするとWEB画面が立ち上がって判例検索ができる。ソフトのインストールは不要だから、誰のパソコンでも使える。ネット経由ではないため、反応が早くて軽快なのは、とてもありがたい。また、WEB画面で検索できるため、別のタブで関連事項を検索しながら、タブを切り替えて判例検索と行き来できるのが、非常に便利だ(ただ、IEでしか利用できないらしいので、IE以外のWEBブラウザを利用している人は注意が必要だろう)。2万という収録判例数は、インターネットの判例検索システムに比べれば少ないかもしれないが、出先で使うのに不便ではない。

さて、利用方法であるが、購入当初はノートパソコンと一緒に持ち歩き、ネット環境のないところで使うつもりだった。しかし、正しい使い方は、パソコンやネット環境とは無関係に、USBだけを持ち歩くというものだ。そして出先のパソコンで、好きなように判例検索をする。これは、800グラムのパソコンでさえ重く感じる私のような中年弁護士にとっては、とても便利だ。

パソコンではなく、情報を持ち歩く。なんかとても、先を行っているような気がして心地よい。

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2010年4月 4日 (日)

社外取締役の効能

43日の日本経済新聞「大機小機」は、とても刺激的だった。

社外取締役が米国で導入されたのは、訴訟の積み重ねにより、「社外取締役が一定数いる取締役会で承認された事柄なら、経営者や管理職個人の法的責任を問わない」というルールが発生して普及したのだそうだ。しかし、企業を含めて日本人の大半は、社外取締役の機能を知らないと「盤側」氏はいう。

これが事実であるなら、第一に、日本人が「社外取締役の機能」を知らないのは当然、ということになる。なぜなら、日本には、「社外取締役が一定数いる取締役会で承認された事柄なら、経営者や管理職個人の法的責任を問わない」という判例が存在しないからだ。それどころか、株主代表訴訟すらめったに起きないので、そのような判例ができる見通しはとても少ない。トヨタのようなグローバル企業でもない限り、現在の日本の企業に社外取締役制度を設ける動機は無いだろう。

第二に、弁護士会の取り組みはまるで間違っているということになる。弁護士人口が大幅に増やされてから、弁護士会は社外取締役に弁護士を使ってほしいと頭を下げて回っていて、ほとんど成果を上げていない。会社法を改正して、社外取締役には弁護士資格を必要とする運動もしているようだが、まず無理だろう。「盤側」氏によれば、それも当然である。日本の会社には、社外取締役制度を設ける動機が無いのだから。

では弁護士会はどうすればよいのか。答えは一つ。株主代表訴訟数を飛躍的の増やすしかない。現在日本の株主代表訴訟件数は年間100件を超える程度でしかない。しかもその大部分は親戚や友人間の争いであり、本来の意味での株主代表訴訟は数件ないし数十件と思われる。しかし日本の会社は、上場企業だけで4000社あるのだ。そのせめて1割が、常時代表訴訟の当事者になるように、弁護士会は努力して、個々の弁護士や国民による代表訴訟の提起を応援するべきだろう。代表訴訟数が増えて、取締役の責任を問う裁判例が増加すれば、企業は自主的に社外取締役制度の導入を進めるだろう。そうすれば、日本企業は世界に通用するコーポレートガバナンスを身につけることになる。

こう書くと、立法論を始める人がいる。しかし、立法論も結構だが、法改正を待っていたのでは、何十年かかるか分からない。まずは行動である。現行法制度を最大限活用して、代表訴訟の提訴件数を増やす方策を、検討すべきだ。

それが、コーポレートガバナンスが求められる時代において、弁護士と弁護士会に課せられた使命とであると、私は考える。

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2010年4月 3日 (土)

防犯カメラ設置で埼京線痴漢被害半減

2010年4月2日の報道によると、昨年末埼京線の一部車両に計6台の防犯カメラを取り付けたところ、12月の痴漢被害が15件と、ほぼ半減したという。警察庁は「一定の抑止効果が出ている」としていると報道された。

しかし、埼京線の車両が全部で何台あるのか知らないが、110両として、10本や20本はあるだろう。とすれば車両数は100台から200台だ。このうちたった6台に防犯カメラをつけただけで(しかも、報道によると全方位カメラではないし、2台一組のようなので、車両としては3台に過ぎないし、死角も広い)、全体の痴漢被害が半減というのは、どういうことだろう。

そもそも冬は痴漢被害が少ないのではないか、という気もするが、それが原因ではないとすると、次の二つの原因が考えられる。

一つは、実際に取り付けたカメラは6台だが、全車両には案山子のカメラが取り付けられていた場合。これなら痴漢被害半減の報道にも納得がいく。しかしそれでは実証実験として適切か疑問だし、予算も取りにくいだろう。実際のところどうなのか、埼京線で通勤している方、教えてください。

もう一つは、痴漢被害半減は、カメラ設置そのものの効果というより、そういった報道の効果、いいかえれば、痴漢検挙に対する決意表明の効果として、痴漢に対する心理的抑制が働いた可能性だ。こちらの場合は、しばらく時間が経つと心理的抑制効果が薄れ、痴漢が復活する可能性がある。

いずれにせよ、この台数、この期間で「効果があった」と言うのは拙速に過ぎるだろうし、女性専用車両増加などの低コストの代替手段と比較検討する必要があろう。

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2010年4月 1日 (木)

東京・練馬駅前商店街に街頭防犯カメラ76台設置 1度の設置数としては都内最大規模

今朝の「めざましテレビ」で、次のニュースを放送していた。

東京・練馬区の練馬駅前商店街に、街頭防犯カメラ76台が一挙に設置された。
76台の街頭防犯カメラが設置されたのは、練馬区の商店街で、1度に設置する数としては都内でも最大規模だという。
地元の防犯協会や警察署、区役所などでは、「東京都安全・安心まちづくり条例」に基づき、2009年11月から犯罪防止策を協議して、今回の設置を決め、設置費用は総額およそ2,300万円にのぼるという。
防犯カメラで撮影された映像は、およそ1週間保存できて、犯罪捜査に使われるということで、犯罪の抑止効果も期待されている。

大塚キャスターが、練馬駅前商店街の担当者と電話で話す様子が放送された。担当者によると、防犯カメラ設置の目的は、犯罪やゴミの不法投棄等の防止にあるという。76台という都内最大規模の設置数は、逃走経路をもれなくチェックするため必要最小限の台数なのだそうだ。

プライバシーの問題について、担当者はこう答えていた。「まず、このカメラは人間が見ているわけではないので、監視カメラではありません。映像を再生するのは、犯罪が起きて警察からの要請を受けたときだけですし、画像は1週間で消されます。」

しかし、人間が見ていないから監視カメラではないという理屈はない。また、警察からの要請がない限り再生しないなら、不法投棄に対する抑止効果は事実上ゼロになる。しかも、いったん犯罪が起きたときは、その犯罪と関係があるかもしれない画像は半永久的に(少なくとも犯人が逮捕されるときまで)は保存されるし、同種の犯罪が繰り返されるようなら、間違っても1週間で消されない。

例えばスリがあったとして、被害者が「犯人はたぶん男女二人組」と証言したら、76台のカメラが撮影したカップルは、全ていったん捜査対象になり、その行き先は銭湯(古いね)にせよホテルにせよ、全てチェックされるだろう。怪しいカップル(もちろん、犯人の疑いがある、という意味だが)は、住所氏名や前科前歴、男女の関係か否かまで調査されるだろう。コンビニやゲームセンターの前などにたむろする20歳前後の若者たちの画像は、いつか必要になるかもしれない「面割り」のため保存されるようになるだろう。要するに、街頭防犯カメラを2300万円もかけて設置する以上、「警察の要請がない限り再生せず、画像は必ず1週間後に消去される」はずがないのだ。そもそも、警察の要請があれば無条件に開示するのだろうか?それはそれで問題がないのか?

私は、街頭防犯カメラ設置すべきではない、と述べているのではない。どちらかと言えば、設置に賛成する立場を取っている。ただ、設置するときに、その運用方法を誤魔化すことは、とてもよくないことだと思う。適正な設置運用基準を制定して、これを守って運用する仕組みが必要だと考える。

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