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2010年4月 4日 (日)

社外取締役の効能

43日の日本経済新聞「大機小機」は、とても刺激的だった。

社外取締役が米国で導入されたのは、訴訟の積み重ねにより、「社外取締役が一定数いる取締役会で承認された事柄なら、経営者や管理職個人の法的責任を問わない」というルールが発生して普及したのだそうだ。しかし、企業を含めて日本人の大半は、社外取締役の機能を知らないと「盤側」氏はいう。

これが事実であるなら、第一に、日本人が「社外取締役の機能」を知らないのは当然、ということになる。なぜなら、日本には、「社外取締役が一定数いる取締役会で承認された事柄なら、経営者や管理職個人の法的責任を問わない」という判例が存在しないからだ。それどころか、株主代表訴訟すらめったに起きないので、そのような判例ができる見通しはとても少ない。トヨタのようなグローバル企業でもない限り、現在の日本の企業に社外取締役制度を設ける動機は無いだろう。

第二に、弁護士会の取り組みはまるで間違っているということになる。弁護士人口が大幅に増やされてから、弁護士会は社外取締役に弁護士を使ってほしいと頭を下げて回っていて、ほとんど成果を上げていない。会社法を改正して、社外取締役には弁護士資格を必要とする運動もしているようだが、まず無理だろう。「盤側」氏によれば、それも当然である。日本の会社には、社外取締役制度を設ける動機が無いのだから。

では弁護士会はどうすればよいのか。答えは一つ。株主代表訴訟数を飛躍的の増やすしかない。現在日本の株主代表訴訟件数は年間100件を超える程度でしかない。しかもその大部分は親戚や友人間の争いであり、本来の意味での株主代表訴訟は数件ないし数十件と思われる。しかし日本の会社は、上場企業だけで4000社あるのだ。そのせめて1割が、常時代表訴訟の当事者になるように、弁護士会は努力して、個々の弁護士や国民による代表訴訟の提起を応援するべきだろう。代表訴訟数が増えて、取締役の責任を問う裁判例が増加すれば、企業は自主的に社外取締役制度の導入を進めるだろう。そうすれば、日本企業は世界に通用するコーポレートガバナンスを身につけることになる。

こう書くと、立法論を始める人がいる。しかし、立法論も結構だが、法改正を待っていたのでは、何十年かかるか分からない。まずは行動である。現行法制度を最大限活用して、代表訴訟の提訴件数を増やす方策を、検討すべきだ。

それが、コーポレートガバナンスが求められる時代において、弁護士と弁護士会に課せられた使命とであると、私は考える。

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コメント

ええと…皮肉で書いておられるのですよね?

投稿: メルクマール | 2010年4月 5日 (月) 07時55分

私も以前から同様の考えを持っていました。

小林先生の著書の中で、弁護士の困窮により、
政策形成的訴訟が低下しているとの話しがありましたが、
各単位弁護士会で、
株主オンブズマン委員会
行政オンブズマン委員会
報道被害回復委員会
等を作り、弁護士会主導で各種政策形成訴訟を行うべき
だと思います。
こうした訴訟への取り組みは、若い弁護士のOJTのプログラム
に取り込めるかも知れませんし、企業がインハウスを雇う
契機にもなります。
法の支配貫徹にも資するものでもあります。

投稿: 東京の弁護士 | 2010年4月 8日 (木) 14時52分

弁護士会自体が求心力を失っていますからね。
いまさら弁護士会主導で何かしようとしても、関心を持たない若手が多いのではないでしょうか。

債務整理がボランティア的なものから経営を支えるレベルのものに変わっていったことで一気に一般化したように、うまくシステム化して事務所経営に資するだけの収益性のある分野にしていく方法を見つけないと難しいと思います。

投稿: sate | 2010年4月 9日 (金) 08時00分

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