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2010年7月 6日 (火)

アルキメデスはいかにして不正を見破ったのか?

アルキメデスの原理;個体の全部又は一部を流体中に浸すと、それが排除した流体の重さに等しいだけの浮力を受ける、という原理(広辞苑)

アルキメデスが「ユーレカ!」と叫んでストリーキング(死語だね)をしたという故事だが、小学生の娘に説明を求められて困ってしまった。アルキメデスは、いかにして不正を見破ったのだろう。

偉人伝を読んだ記憶をたどると、アルキメデスは、王から、金細工の王冠に混ぜものがされていないか調べよ、但し王冠を溶かしたり壊したりしてはならない、と命令され、困惑して風呂に漬かったところ、あふれ出るお湯を見て、ひらめいたという。そして、この王冠と、同じ重量の純金をそれぞれ水に浸し、あふれ出る水の量を比べて不正を見破ったという。

何の疑いもなく信じていた逸話だが、考えてみるとおかしい。その理由は二つある。第一に、浮力を問題にしていないから、アルキメデスの原理と関係がない。この方法はせいぜい、「同じ重量でも、材料が違えば体積が違う」という法則の実践でしかない。第二に、この方法ではたぶん不正は見抜けない。金細工師だって馬鹿ではないから、混ぜものをしたところで、大体同じ重量、同じ体積の王冠を作成したに違いなく、精密機器無しに体積の違いを計測できないからだ。

そこでWIKIPEDIAを見てみると、「アルキメデスは金細工師に渡したのと同じ重量の金塊を用意し、これと王冠を天秤棒に吊るしてバランスを取り、水を張った容器に入れた。」とある。王冠に混ぜものがしてある場合、空中では釣り合っていても、水中では浮力の差が生じ、釣り合わなくなるという説明だ。

なるほど、と思ったが、よく考えてみると納得がいかない。やはり理由は二つ。第一は、そもそも同じ重量の金塊が用意できたのか(王室は、金細工師に渡した金塊の正確な重量を記録していたのか?)という素朴な疑問である。また、仮に同じ重量の金塊を用意できたのなら、ややこしい方法をとらなくても、単純に王冠と金塊の重量を比べればよいのではないか、という点である。王の命は、「金細工師に渡した金塊の重量が分からない」という前提ではなかろうか。第二に、金細工師が大体同じ重量、同じ体積の王冠を作成したに違いないという前提に立つならば、この方法をとったところで、王冠と金塊が押しのける水の体積はほぼ同じとなり、浮力もほぼ同じとなるはずだから、水に沈めたところで、天秤の釣り合いは保たれる、すなわち誤差程度の差しかでないのではなかろうか。

そうだとすると、WIKIPEDIAの説明は不正確ということになる。そこで、訂正するならこうなるのではないか。

確かにアルキメデスは純金の金塊を用意したが、その重さは王冠と同じでも、金細工師に渡した金塊の重さと同じでもない。しかも、「同じくらい」でさえなく、極端に重さの違う金塊を用意したのだ(この理由は後述の通り)。そして、空中で両者を天秤につるし、支点からの距離を調整してバランスを取った上、水中に沈めた。このとき、両者の重さが同じくらいだと、水中でバランスが崩れるとしても僅かでしかない。そこで、極端に重さの違う金塊をつるし、浮力の僅かな違いが天秤の大きな傾きに反映するようにしたのではないだろうか。

いうまでもないが、私の物理学の素養はゼロである。直感的には、対比する金塊の方を軽くするべきだと思うが、それで天秤の傾きが(誤差の範囲を超えて)大きくなるかは分からない。また、いずれにせよ、王冠に象眼がしてあれば、混ぜものの有無は分からなくなるのではないか。

読者におかれては、娘のため、というより父親の威厳を保つため、正解を教えていただければと思う。(小林)

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コメント

 「混ぜ物をしても同じ重量同じ体積の王冠を作成できた」という前提を否定すればいいと思います。
 ちょっと前に内部がタングステンの金塊での詐欺事件がありましたが、アルキメデスの時代だとタングステンの精製は無理でしょう。混ぜ物となると銀や鉛でごまかすしかできず、当時の技術では金と同じくらいの比重の混ぜ物は作れないと思います。
 なお、偉人伝などでは、疑念を抱かれないためなのか、わざわざ象眼や宝石等のない「金無垢の王冠」としてあったと記憶しています。暗黙の了解として中空でもないのでしょう。

 そうすると偉人伝の方法でもwikiの方法でもよいことになりますが、わざわざwikiの方法をとる必要はないですね。アルキメデスの原理と結びつけるために後世の人が考えたんじゃないでしょうか。

投稿: 大阪の弁護士 | 2010年7月 6日 (火) 11時30分

 「混ぜ物をしても同じ重量同じ体積の王冠を作成できたという前提を否定すればよい」とのご意見ですが、重量はともかく体積は大体同じではなかったかと(少なくとも素人目には見分けがつかないくらい同じではなかったかと)思うのです。そうでなければ、故事の前提がおかしくなってしまうし、アルキメデスの価値も下落してしまうような…。

投稿: 小林正啓 | 2010年7月 8日 (木) 12時26分

「同じ重量かつ同じ体積」=「同じ比重」の王冠を作成できなかったですね。
「同じ重量だけど体積が違う」から偉人伝またはwikiの方法でわかるのだと思います。

 なお、王冠が金無垢であるとすれば、金細工師が混ぜ物をしていなければ「王冠の重さ=渡した金塊の重さ」のはずですから、wikiは「王冠の重さ=渡した金塊の重さ」の純金を用意して体積を量ったということなのでしょう。

投稿: 大阪の弁護士 | 2010年7月 8日 (木) 14時05分

例えば、1kgの金塊のうち100グラムを銀や銅や鉛に置き換えたら、体積はどうなるのでしょうか?計算の方法はあったような気がしますが…。

なお、本文に書いたとおり、「渡した金塊の重さ」が分かっていれば、wikiのようにわざわざ水につけなくても、王冠の重さを量れば不正は見抜けたはずだと思います。

投稿: 小林正啓 | 2010年7月 8日 (木) 14時52分

金の比重が19.32で、銀は10.49、銅が8.95、鉛が11.36ですから、
 純金1㎏の体積は1000g/19.32=51.76立方㌢。
 900gが金で100gが銀だと900g/19.32+100g/10.49=56.12立方㌢、体積は8.4%増
 同様にして銅だと57.76立方㌢で体積は13%増、鉛だと55.38立方㌢で体積は7%増となります。


wikiの記載は「できあがった王冠の重さ」=「渡した金塊の重さ」=「用意した金塊の重さ」という前提があると思います。

投稿: 大阪の弁護士 | 2010年7月 8日 (木) 18時50分

計算ありがとうございます!
すると、100グラムの混ぜもので金1キロ㌘につきざっと5立方㌢の体積増加となるわけですね。すると、水につけた場合の浮力の差は5gだから、浮力を引いた重さは、純金が948.24g、王冠が約943.24gとなるわけです。
すると問題は、アルキメデスの時代に、この差を誤差の範囲ではなく検出できたのか、ということになるのでしょうかね。

投稿: 小林正啓 | 2010年7月 8日 (木) 23時58分

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