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2010年8月 2日 (月)

学校を出ただけで一人前になれるのは学者だけ。

日本経済新聞の安岡崇志論説委員が、81日の朝刊「中外時評」に「悪循環に陥った法曹養成」と題する記事を載せた。

司法試験合格率低下・法科大学院志望者激減・法科大学院での教育の質の低下、といった「悪循環」から脱するためには、「訴訟担当者」という法曹の意識を改革し、法曹の役割を拡大する必要があるという。そのためには、法曹の新しい役割がある経済界、行政機関、国際機関などに入ってもらったフォーラムを立ち上げる必要があるという。

平たく言えば、民間企業や公的機関に、新人弁護士を雇ってもらうための路線作りが必要、ということだ。

安岡論説委員の主張は、法曹養成制度に関する検討ワーキングチームの検討結果に併記された2案のうち1案を支持するものだ。そしてこの案は、佐藤幸治司法制度改革審議会座長らが作成した「法曹養成制度改革に関する提言」の提案と同じだ。つまり、安岡論説委員は、佐藤幸治、井上正仁ら、文科省・大学の利益代表者の意見を支持して、企業や公的機関が弁護士を採用するべきだと主張しているのである。

それなら手始めに、日本経済新聞社が10名くらい、新人弁護士を雇用したらいかがだろうか。できまい。学者先生はいざ知らず、論説委員であれば、企業がなぜ新人弁護士を雇用しないか知っているはずだ。その答えは簡単。役に立たないのである。

学校を出ただけの頭でっかちが役に立たないのは、弁護士に限らない。どんな職業でも同じだ。学校を出ただけで一人前になれるのは学者だけ、と言ったら学者に失礼だろうから、法学者だけ、と言い直しておこう。それでも失礼なら、憲法学者だけ、と言い直します。

では新人弁護士はどうやったら一人前になるのか。その答えも簡単で、他の職業(憲法学者を除く)と同じ。現場を経験することだ。裁判である。「裁判」ではやや狭いかもしれないから、「法律実務」と言い直してもよい。要は、法律や制度の運用を、実際に身をもって体験することである。法律や制度は、人間や会社の命運を左右する。ときに命を奪う。それにもかかわらず、不備と贅肉と曖昧さと矛盾に満ちている。運用する人間もしょっちゅうミスを犯す。その混沌に巻き込まれながら、物事をあるべきところに導く所為が、法を司るということなのだ。この実務経験を5年ほど積めば、企業や公的団体にとって魅力的な人材となろう。その後であれば、弁護士は裁判に限らず、他の領域に積極的に進出するべきであると思う。

どうせそうなるとは思っていたが、上記WTは新人弁護士の引受先を開拓するという、当て処のない方向性を示しただけで終わった。しかし法律実務を経験していない新人弁護士は、弁護士ではない。現場を踏んだことのない新人記者が、記者でないのと同じことだ。安岡崇志論説委員は、そのあたりが分かっているのだろうか。

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コメント

>安岡崇志論説委員は、そのあたりが分かっているのだろうか。

安岡論説委員は、
①ホントはわかってるけれども、立場上、旗振りを止められない。
②本当にわかっていなくて、上記「提言」とかを真に受けている。
のどちらでしょうかね。

年末の司法修習生の就職先状況は悲惨な事になりそうですが
(日弁連も「即独」支援に力を入れるとか言ってますがどうなるやら)
そのときには、
①「法曹の新しい役割がある経済界、行政機関、国際機関などに入ってもらったフォーラム」が修習生の引受先を開拓してくれる。
②「即独」があふれる中、弱い者から沈没していく。
どちらになるのでしょうか。

投稿: 占い師☆ | 2010年8月 3日 (火) 15時28分

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