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2010年9月12日 (日)

米軍研究費の日本流入と武器輸出規制

910日の朝日新聞やasParaによると、米陸海空軍の研究費が、日本の大学や公的研究機関に流入しているという。東京大学75000ドル(05年)、理化学研究所6万ドル(06年)といった案配だ。

技術的見地や時代背景からは、当然の傾向と言えよう。「秘密基地で軍事技術を開発し、陳腐化したら民生化する」という「スピンオフ」の時代は終わり、民生技術を軍事応用する「スピンイン」の時代だからだ。これに加えて、高度の民生技術を持つ日本の研究施設や、年々予算を削られる大学の事情などが相まって、米軍研究費の流入を招いているのだろう。

朝日新聞の意図はさておき、私がとても気になるのは、我が国の武器輸出規制との関係だ。

なぜなら、こういった米軍研究費の成果物として製作された機械を米国に送付することは、ほぼ間違いなく、外為法48条によって禁止される。研究成果や、その技術情報を米国に向け送信することも、メールに添付することも、外国の研究者に渡すためUSBファイルに保存して出国することも、外為法25条によって禁止される。経済産業大臣の許可があれば可能だが、その手続は一般的に、とても面倒だ。一般企業の輸出許可管理担当者で、武器輸出規制の複雑な手続を呪わない者は、おそらく一人もいない。

とするなら、米軍研究費の成果物や技術情報は、どうやって米軍に送付されているのだろう。全く送付されないなら、米軍に何のメリットもない。送付されているとしても、メール1通を送信するたびに経済産業大臣の許可が必要なら、日本の研究者は手続に忙殺されて、研究どころではなくなる。

そうだとすると、考えられる可能性は次の二つだ。

一つ目の可能性は、米国大使館を通じて機械や情報のやりとりをしている可能性だ。この場合、もしかしたら、外為法の適用を外すことが可能かもしれない(詳細な検討をしていないので責任は持てませんが)。日本人が日本国内にある米国大使館員に機械を渡しても「輸出」にはならないし、米国大使館員が外交貨物としてその機械を米国に送付しても、外為法の特例により許可が不要となるからだ。

二つ目は、上記のような米軍助成による研究成果については、許可申請不要の運用がなされている可能性だ。しかし法律的には、なぜこの場合だけ、許可申請不要の運用が許されるのか、疑問である。日々面倒な許可申請業務に忙殺されている一般企業との関係で、あまりに不公平でないのか。あるいは米軍研究費に基づく成果物だけについて、法律の根拠無く特別扱いをすることが許されるのか。そもそも、スポンサーが米軍のみであることの確実な証明が可能か。逆に、日本の研究者が本当に米軍宛送付している確実な確認はできるのか。輸出物(情報)の第三者への伝播について、あれほど神経質な規定と運用を行っている外為法なのに、米軍が日本の研究者に開発させた技術を第三国に移転することについては、全くお構いなしでよいのか。

朝日新聞の意図にはたぶん反するのだろうが、とても気になる記事である。

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