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2010年10月13日 (水)

司法制度改革と日弁連新会長―日弁連は法曹養成制度の改革を逆行させるのか?―

 弁護士でもある萩原金美神奈川大学名誉教授より、神奈川ロージャーナル20103号の贈呈を受けた。中身は、宇都宮新会長に対する批判である。拙著「こん日」も何カ所か引用していただき、「全面的に賛同するわけではない」としつつも、「平明にしてクールな論述で日弁連の問題点を解明した好著」とご紹介いただいた。光栄なことである。

 萩原教授はいう。法曹人口増大は、日弁連が承知した上で、法科大学院による法曹養成制度とワンセットで実施されたものだ。弁護士増による収入減があるからといって、法科大学院制度を根本から覆すような主張は無責任ではないのか。たとえば司法修習生に対する給費制は、予算面から司法試験合格者数を制限しているから、給費制維持を主張することは、法曹志望者を利するように見えて、法科大学院生が法曹になる機会を奪う「悪魔の福音」だ。宇都宮新会長は、その専門分野である多重債務問題や貧困問題といった「虫の目」の延長線上の問題として若手弁護士の貧困問題をとらえるだけで、わが国の司法をどうすべきか、という「鳥の目」を持たない。まるで、派遣村の村長さんが内閣総理大臣になるようなミスキャストではないか、と。

 いやはや、手厳しい評価である。いうまでもないが(萩原教授は明言していないものの)、「虫」は「鳥」に喰われる運命にある。

 もちろん、教授の主張に異論はあろう。教授は、「(宇都宮氏の)政策が実効化されるならば、それはとりわけ新たな法曹養成制度の健全な成長・発展に対する強大な抑止的・萎縮的効果をもたらす。多くの有為な若者が法曹の道を志すことを断念し、ひいて少なからぬ数の法科大学院が壊滅していく」と懸念する。しかし、法科大学院の大再編が必要なことは、給費制維持運動を批判するマスコミでさえ、大筋で認めていることだ。また現在、法科大学院は宇都宮新会長と無関係に、法曹養成機関としての魅力を喪失しつつある。司法試験合格率以前の問題として、青春の数年間と学費だけで数百万円を費やす価値を法科大学院に認める人間が、激減しているのだ。有為な人材が法曹への道を断念する原因を宇都宮新会長に求めるのは筋違いだと思う。

 とはいえ、私は萩原教授の新会長評には全面的に賛成である。宇都宮新会長は、懐古趣味的な弁護士増を理想に置き、時計の針を逆戻りさせようとしているという指摘は、まさに慧眼である。壊れた時計の針を現在時刻にあわせようとしても、それは修理していることにならないのだ。

 萩原教授の主張に興味のある方は、是非原典をあたっていただきたい。私のような、にわか仕込みの法曹人口評論家にはない、透徹した視点を見ることができる。

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