« 日弁連はなぜ「また」負けたのか?(承前) | トップページ | 「給費制廃止へ、その裏には何が」 »

2010年10月24日 (日)

日弁連の給費制復活運動に関するいくつかのコメントについて

(貸与制復活に失敗したのは)宇都宮執行部よりも旧執行部の方が責任が重い」という意見がある。(寺本ますみ弁護士「弁護士のため息」の「敗北の責任は誰にある?」より。なお、同弁護士より「ブログの名称も記事の表題も付けないのは、ちょっと失礼ではないのか」とのご指摘があったので、お詫びして付記します)

そりゃそうだ。宇都宮執行部は貸与制移行に抵抗したが、旧執行部は事実上容認した。貸与制移行が良くない、という立場に立つ限り(私は、この立場に立つか否かは述べない)、旧執行部の責任が重いのは当たり前だ。(なお、貸与制の是非についての私の立場は、この問題に関する最初のエントリで明らかにしていることを付記します。)

 でもこの意見は、論点をすり替えている。なぜなら問題は、現執行部が、あれほどの悪条件の中で、貸与制移行反対運動を決断したことの是非だからだ。貸与制移行に反対することが良いことだ、という立場に立つ限り(以下同文)、何のコストもリスクもないなら、貸与制反対運動に何の問題もない。しかし現執行部の行った給費制復活運動には、多大なコストがかかり、大きなリスクをもたらした。また、現執行部の任期のほぼ半分を、この活動に費やした。その評価は、旧執行部と比較する問題ではない。

(給費制復活に反対する)新聞の社説が日本国民の意思を代弁しているかというと大いに疑問である」という意見がある。(引用元は上記に同じ)

そのとおりだと思う。だが、給費制維持を支持する63万の署名が国民の意思を代弁している訳でもない。多くの国民にとって、給費制は、「どちらでも結構。国会で決めてくれ。私には子供手当の方が大事」という類の問題だ。この類の問題だからこそ、マスコミの意見が大きな力を持つのだ。

自民党の反対により、貸与制への移行が確定的になった」という意見がある。 (弁護士猪野亨のブログ「給費制維持ならず貸与制へ 日弁連は敗北か?」より。上記同様の理由によりお詫びして付記します)

これは事実認識を間違っていると思う。まず、民主党(党として一致していないとか政府と合意していないとかいう指摘もあるがこの点はさておき)、公明党その他の政党も、給費制復活自体に賛成したわけではない、と私は考えている。せいぜい、数年の貸与制施行延期ではないか。なぜなら、いまの国会にとって、給費制・貸与制の問題の本質は、給費制が良いのか、悪いのかではないからだ。「一度国会で決めたことを、その施行前に覆してよいのか」である。これは民主主義の基本的なルールと、国会の権威とに関わる問題だ。だからこそ、せいぜい数年の延期しか、国会にはできないと考える(誤解している方がいるので追記するが、重要なのは『施行前に』の部分だ。施行してみたものの、うまくいかないから止めることと、一度決めたことを、施行前に止めることとは、全然違う。民主主義の基本的なルールと国会の権威とに関わるのは、もちろん『施行前に』の方だ)。

次に、自民党も、「(施行延期のための裁判所法改正案を)無審議で衆議院法務委員会を通すこと」に反対しただけだ。もちろん、自民党が反対したから間に合わなくなったのだが、その責は第一に、施行直前に運動を始めた日弁連にある。また、そもそも、この議案を国会無審議で通すことの妥当性は問われなければならない。給費制復活は良いこと(以下同文)だから国会無審議でよい、という考えは危険だと私は思う。

ところで、給費制にコメントしたブログの中で、私の背筋を凍らせたのは、“ちきりん”さんの次の言葉だ(「法律の専門家のお粗末な説明能力」より要約)。

「『裕福な人しか法律家になれなくなる』的な(日弁連の)主張の子供っぽさも頭が痛くなります。ちきりんは、給費制に大反対!というわけでもないのです。ただ、あまりに日弁連側の主張が子供っぽいのであきれているだけです。論理的に説明するのが得意な人が法律家になってんじゃないの?なんかびっくり。」

今回の給費制復活運動で日弁連(と弁護士)が失ったのは、もしかしたら、私が考えたものより大きいかもしれない。

|

« 日弁連はなぜ「また」負けたのか?(承前) | トップページ | 「給費制廃止へ、その裏には何が」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/49827047

この記事へのトラックバック一覧です: 日弁連の給費制復活運動に関するいくつかのコメントについて:

« 日弁連はなぜ「また」負けたのか?(承前) | トップページ | 「給費制廃止へ、その裏には何が」 »