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2010年10月27日 (水)

テロ対策資機材と武器輸出三原則

RISTEX(社会技術研究開発センター)12号(20103月発行)に、「テロ対策資機材は本当に輸出できないのか」と題する論考が掲載されている。文科省の「安全・安心社会技術プロジェクト」等による助成金を得てテロ対策資機材を研究開発しても、日本には武器輸出三原則があるから、輸出できないじゃないか、という懸念に応える目的で寄稿されたものだ。著者は、慶応大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員の森本正崇氏である。

内容をおおざっぱにまとめるとこうなる。

1.   テロ対策資機材であっても、外為法の規定する「武器」に該当する場合がある。

2.   しかし、外為法(以下の政省令を含む。以下同じ)上の「武器」に該当しても、武器輸出三原則上の「武器」に該当しない場合はあり得る。

3.   また、武器輸出三原則上の「武器」に該当しても、武器輸出三原則上の「輸出」に該当しない場合はあり得る。

4.   武器輸出三原則上の「武器輸出」に該当しても、政府が定めた「例外」に該当する場合はあり得る。

5.   武器輸出三原則の適用がなければ、武器であっても、輸出許可を受けられる場合もある。

これを読んで研究者がどれほど安心したかは未知数だが、それはさておき、若干の論評を試みたい。

まず、武器輸出三原則とは、佐藤元首相の国会答弁、三木内閣の政府見解等からなる、武器輸出規制の運用方針である。本稿ではその内容には言及しない。指摘したいのは、武器輸出三原則は法令ではない、ということだ。

森本氏は、武器輸出三原則上の「武器」「輸出」と外為法上の「武器」「輸出」は異なりうるという。いいかえれば、外為法の運用基準に、「武器輸出三原則に該当する場合」と「該当しない場合」という、二重の基準(ダブル・スタンダード)が存在することになる。法令である外為法の運用について、法令ではない武器輸出三原則がダブル・スタンダードを設けているのだ。念のため確認しておくと、「格」は当然法令の方が上である。これって、「法律による行政の原理」に照らして、どうなんだろうか?

問題ないとする立場の論理としては、次のものが考えられる。すなわち、外為法に該当する貨物である以上、輸出が禁止されるのであり、それをどの範囲で解除して国民に利益を与えるかは、行政府の自由裁量、というものだ。だがこの論理は、おそらく現代法治国家では通用しない。信州大学経済学部の青井未帆講師(当時)は、「政府の一存によって何が『国際的な平和及び安全の維持の妨げ』に該当し取引が制限され、さらには刑罰の対象となるかが決定されてしまうという点は、憲法41条及び31条に反する可能性が疑われる」という(武器輸出三原則を考える」信州大学法学論集第5)。

ちなみに、森本氏は、外為法に規定されている貨物は輸出「許可」対象であって輸出「禁止」対象ではない、と述べるが間違いである。行政法上「許可」とは、「法令によってある行為が一般的に禁止されているときに、特定の場合にこれを解除し、適法にその行為をすることができるようにする行政行為」とされている(法律学小辞典)。だから、外為法に規定されている貨物は、輸出が禁止されているのだ。ただ、許可を得ることによって、輸出が可能になるだけである。

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