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2010年11月 4日 (木)

宇都宮執行部が考える「給費制」の落としどころとは?

大阪弁護士会の金子武嗣会長は、1030日付会員向けメルマガで、給費制活動の経緯を報告した。こういう情報開示は、とても大切だと思う。

メルマガによると、「最終的な立法案」は、裁判所法施行期日の3年延期、その間に、下記附則を定めるというものだったという。「これであれば、大方の政党の賛同を得られる見込みがありました」とのことだ。

メルマガの文意からは、「最終的な立法案」がどういう意味で「最終」なのかは、よく分からない。おそらく自民党が不賛成を決める直前、という意味だろう。また、「大方の政党」が自民党を含むか否かも分からない。しかし、附則の内容に入る前に反対されたことからして、自民党の承諾は得ていないと見るべきだろう(内々の意見交換はあったかもしれないが)。いずれにせよ、宇都宮執行部は、この案で自民党の同意が取れる、と認識していた可能性はある。

 さて、その附則案は次の通りだが、何とも玉虫色で、意味がよく分からない。理解の助けになるかと思い、平成16年の裁判所法改正(給費制廃止が決まった改正)時の衆法務委員会附帯決議文と比べて色分けしてみたら、もっと玉虫色になってしまった。赤字が違うところで、緑字が同じところである。

(平成22年附則案)

国は、前項に定める裁判所法の一部を改正する法律の施行の日までに経済的事情から法曹への途を断念する事態を招くことのないよう法曹の役割の公共的な性格司法修習の統一、公平及び平等の理念司法修習生に修習専念義務が課されていること等を踏まえるとともに、個々の司法修習生の経済的な状況及び公的支援の必要性等を勘案し、司法修習生に対する給与の支給または修習資金の貸与を含む法曹養成制度に対する財政支援の在り方について見直しを行い、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

(平成16年附帯決議)

政府並びに最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 修習資金の額については、法曹の使命の重要性や公共性にかんがみ、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成する見地から、引き続き、司法修習生が修習に専念することができるよう、必要かつ十分な額を確保すること。
二 修習資金の返還の期限については、返還の負担が法曹としての活動に影響を与えることがないよう、必要かつ十分な期間を確保するとともに、司法修習を終えてから返還を開始するまでに、一定の据置期間を置くこと。
三 給費制の廃止及び貸与制の導入によって、統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることがないよう、また、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう法曹養成制度全体の財政支援の在り方含め関係機関と十分な協議を行うこと。

上記のとおり、宇都宮執行部と、これに同調する政党は、改正裁判所法施行期日の延期とともに、附則の議決を意図していた。すなわち、宇都宮執行部は、当面の戦術目標としては、できる限り長期の施行延期を獲得し、その後、再施行期日までの間に「落としどころ」を探ろうとしており、その足がかりとして、附則の立法を企図していた。タイトな日程の中では、現実的な選択だろう。

問題は、その落としどころが、「給費制の復活」(改正裁判所法の改正前への改正。ややこしいので以下同じ)か、それ以外か、それ以外だとすれば何か、という点だ。もちろん、日弁連が考える落としどころと、政党が考える落としどころが同じとは限らない。いずれにせよ、宇都宮執行部は、附則案を起案し各党内々の了解を取り付ける中で、「落としどころ」を見極めていったに相違ない。

しかし、このように問題提起をしてみて、改めて附則案を読んだところで、何を目指しているのかはやっぱり分からない。まあ当たり前だ。どんな読み方でもできるから、玉虫色というのだ。

ただ、玉虫色であること自体、宇都宮執行部や各政党の目指す着地点が、「給費制の復活」(以下同文)で統一されていなかったことを示している。少なくとも、「貸与制は延期した、次は給費制の復活だ」というほど、甘いものではないようだ。

次に、各政党の思惑が交錯する中で、宇都宮執行部が「落としどころ」として何を考えていたか(いるか)という点はどうだろうか。

まず、「附帯決議」の冒頭と末尾は「政府並びに最高裁判所は…関係機関と十分な協議を行う」となっているのに対して、「附則案」は「国は…必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」となっている。これは、裁判所法の再改正(以下同文)を含む立法措置も、「落としどころ」から排除されていないことを意味する。

しかし他方、たとえば、「経済的事情から法曹への途を断念する事態を招くことのないよう」の文脈上の位置づけは、「附則案」と「附帯決議」で同じだが、「司法修習の統一、公平及び平等の理念」の位置づけは、「附則案」の方が後退している。ちなみに統一修習とは、判・検・弁の志望にかかわらず、同じ修習を受けることをいう。平成16年の裁判所改正の折には、裁判官・検察官任官者の貸与金免除が主張され、日弁連は統一修習の理念に反し分離修習を招くとして、強硬に反対した経緯がある。「附則案」ではこの反対意思が、多少後退しているといえる。

また、「附帯決議」には「法曹養成制度全体への財政支援」となっているのに、「附則案」からは「全体」が消え、代わりに「個々の」「司法修習生の経済的な状況及び公的支援の必要性等を勘案し」という文言が入っている。

この「個々の」という文言の挿入は、かなり重要だと思う。

これらの文言比較によれば、宇都宮執行部としては、あくまで給費制の復活(以下同文)を理想に掲げているものの、現実的な「落としどころ」としては、貸与制を施行した上で、判事・検事については任官後の返還義務免除、弁護士については「個々の」事情により、公的業務遂行と引き替えの返還義務免除制度の導入を考えていた(いる)、というのが、私の解釈である。

 なお、「附則」と「附帯決議」の格の上下がどうなっているのかは、私には分からないので考慮していない。知っている方がいたら教えてください。

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コメント

こんにちわ
予備試験目指して勉強しているものです

プロフィールを拝見して、弁護士も様々な関与の在り方があるものだ、思いました

修習ー京都でおこなわれた集会に参加しました。宇都宮さんも来ておられました。
私は、親を介護しているので、やはり、給付制をこれからも維持してほしいです。

ブログーいろいろと勉強させていただきまsのでお願いします

投稿: taka | 2010年12月25日 (土) 01時27分

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