« 漁夫の利? | トップページ | 宇都宮執行部が考える「給費制」の落としどころとは? »

2010年11月 2日 (火)

武器輸出三原則と司法

1029日の毎日新聞は、民主党の外交・安全保障調査会が、武器輸出三原則について「時代に合わせた新たな原則を作る」ことを骨子とする提言案をまとめた、と報じた。

最近、武器輸出三原則についての報道が多い。安全保障政策は国政の重要問題だから、国会で多いに議論すればよい。ただ、気になるのは、緩和を求める側も反対する側も、司法との関係について全く触れていないことだ。武器を輸出するのは政府でなく、民間企業なのに。

たとえば、自衛隊の海外派兵を行うのは、政府だ。だから、国会がこれを事前又は事後に監督すべき、という議論はあっても、司法が介入すべき、という議論はあまりない。わが国の司法は、事件性や処分性を要件にしており、政策そのものの是非を抽象的に裁判所で判断する、という仕組みを持っていないからだ。

しかし、武器輸出三原則の緩和や厳格化に直接の利害関係を持つのは、政府でなく、民間企業だ。武器輸出三原則の適用範囲が広がったり狭まったりすることによって、民間企業の輸出できる範囲が変わる。しかも、輸出が禁止される武器の範囲は、どうやら、とても曖昧だ。いうなれば、制度上、官僚の胸三寸であり、不当な処分が発生しうる。

日本には、不当な法律や、不当な処分によって、民間企業が不利益を被った場合は、司法で争う権利が、憲法上保障されている。だから、武器輸出三原則に基づく武器輸出規制処分についても、当然、これを司法で争う機会が保障されていなければならない。自衛隊の海外派兵のような政府内部の問題については、これを監督するのは国会だが、武器輸出三原則のような政府対民間の問題については、これを監督するのは司法である。だから、武器輸出三原則の適用範囲について議論を行うなら、当然、司法によって武器輸出三原則の運用を適切にチェックするにはどうしたらよいか、ということを議論してもらわなければいけない。

しかし民主党の議員・官僚・当該民間企業幹部にさえ、そのような発想は皆無だろう。それどころか、法律家の中にも、そのような発想は無い。言っているのは私くらいだろう。

これが、わが国における司法の地位である。法の支配というなら、こういうところを変えていかなければダメだと思う。

|

« 漁夫の利? | トップページ | 宇都宮執行部が考える「給費制」の落としどころとは? »

コメント

はじめまして。いつも勉強させてもらっています。先日は拙稿についてもご指摘をいただき汗顔の至りです。
先生には意外の感もあるかもしれませんが小生も先生の問題意識を共有しております。企業には輸出の自由があります。三原則を含め輸出管理はその調和という文脈で語られなければなりません。武器輸出三原則でそのような文脈が語られたことは皆無です。人権の制約なのですが、そんなことを言ったら「死の商人」呼ばわりされたのでしょう。小生自身「空気」の読めない奴ではないかと自問することたびたびです。
三原則についてはもう少しまとまった形で報告したいと思っております。その際には是非先生にもご批判を賜れれば幸甚です。

投稿: 森本正崇 | 2010年11月 2日 (火) 08時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/49877790

この記事へのトラックバック一覧です: 武器輸出三原則と司法:

« 漁夫の利? | トップページ | 宇都宮執行部が考える「給費制」の落としどころとは? »