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2010年12月27日 (月)

がっかり。

岡田和樹弁護士が、ザ・ローヤーズ12月号に「こん日」を批判する論考を掲載されたというので、読んでみた。同弁護士は、弁護士としての前半生を国労弁護団団長など著名な労働事件の代理人として活躍し、その後一流の渉外・企業法務弁護士、一橋大学法科大学院講師として活躍されている。面識はないが、尊敬すべき優秀な弁護士だと思っていた。

だが、感想は「がっかり」である。弁護士増員論だからではない。文章の程度が低いからだ。ここまで程度の低い文章には、反論に値する中身もない。

第一に、岡田弁護士は「こん日」の本文を読んでいない。引用は一見多そうに見えて、実は「はじめに」と「あとがき」、そして「エピローグ」のごく一部でしかない。なにより、本文を読んでいれば、論考の結論と、「こん日」の結論がそんなに違わないこと(「頸木」の下りなど、拙著239ページの引用かと思うほど似ている。この弁護士さんの読解力を見習われたい)や、「こん日」が必ずしも増員反対派に与しないことに気づいたはずだ。現に「こん日」は、旧来の主流派(例えば永尾廣久もと福岡県弁護士会長)からも、増員反対論者からも、厳しく批判されている。

「愚にもつかない本」に違いないから読まない、というのはご自由だが、「愚にもつかない本」だと批判するなら、本文を読むのが最低限のマナーだろう。そのくせ、「こん日」と略称するあたり、熱心な読者の解説を受けたと想像される。そうだとするなら、他人の解説という二次情報を鵜呑みにするのは、法律実務家として、いかがなものだろうか。修習生やイソ弁がそんなことをしたら、私なら厳しく叱る。

第二に、引用が不正確だ。私は、「弁護士は、滅びの途を選択した」という趣旨のことは書いたが(正確には「日弁連は」だけれども)、「弁護士は、滅びの途を選択した」とは書いていない。たった1字のことだが、「こん日」は終始組織としての日弁連を記述しており、職業としての弁護士や弁護士業界がどうなるかは書いていない(この点も、岡田弁護士が本文を読んでいないことの証左だ)。岡田弁護士の能力は「あえて問わない」が、一般に、正確な引用をする能力さえない者には、文章力や読解力はもちろん、反論を理解する能力もない。

第三に、文章に品がない。私はボス弁や修習指導教官に、「準備書面に罵詈雑言を用いてはならない」と厳しく指導された。公刊物ならなおさらである(「こん日」では一部、怒りの余り筆が滑った部分があることは認める。修行が足りないと反省)。私はよい師匠の指導を受けたと思う。平気で罵詈雑言を用いる弁護士に教えを受ける学生は不幸だ。

岡田弁護士によれば、「弁護士にとって大切なもの」は、「それなりの法律知識」と「常識的な判断力」そして「暖かい心」だそうだ。「それなりの法律知識」は有していても、書面を読みもせず、不正確な引用をして、罵詈雑言で攻撃する弁護士は、他の要件を満たしているのだろうか。

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コメント

小林先生、はじめまして。東京で弁護士をしている者です。当ブログをリンクしていただき有難うございます。「こん日」をはじめ、最近ではエコノミスト増刊のご寄稿など、いつも大変興味深く読ませていただいております。岡田先生の記事の件、先生のエントリを本日見てから早速読んでみましたが仰るとおりたしかに全く異なる文脈を批判されているようですね。お忙しい中の執筆でこのような結果になってしまったのかもしれませんが引用は弁護士の命とも言えるので自分もどんな状況でもこのようなことがないように注意したいと襟を正す思いです。
ご病気をされたとのこと、お具合はいかがでしょうか。ゆっくりとご静養され、一日も早い回復をお祈りしております。

投稿: overbody | 2010年12月28日 (火) 02時04分

コメントありがとうございます。また、お見舞いのお言葉をありがとうございます。退院早々、このようなしょーもないエントリで申し訳ありません。
overbodyさんのブログは、よく拝見しております(かなり高度なので理解できないことも多いですが)。今後もご指導ご批判をよろしくお願いします。

投稿: 小林正啓 | 2010年12月28日 (火) 07時06分

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