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2011年1月11日 (火)

著作者人格権の歴史的背景について(1)

2007年、彦根市の「ゆるキャラ」である「ひこにゃん」の作者が、彦根市を相手に、著作者人格権を主張して使用禁止を求める民事調停を起こした。いったん和解が成立したのに、20111月、「市がひこにゃんの立体物を使用したり業者に使用を許可するのは07年に両者が交わした調停に違反すると、大阪地裁が認定していた」と報じられた。

この「著作者人格権」というのは何だろう。著作権を取得していたはずの彦根市は、なぜ、ひこにゃんのキャラクターを自由に扱うことができないのだろう。こんな訴訟リスクがあるなら、最初に高い金を払ってでも、キャラクターをいかようにでも使用できる権利を取得しておけばよいのに、なぜそれができないのだろうか。

著作者人格権とは、著作権ではないのに、著作権法に明記されているという不思議な権利だ。その内容は、①創作物を公表されない権利(18条)、②創作物に自分の氏名や筆名を表示する権利(19条)、③創作物を改変されない権利(20条)、の3つとされている。

著作者人格権は、著作権法の関門の一つである。多くの人は、なぜこの権利が著作権法に明記してあるのか分からず、勉強しているうちに嫌になってしまう。だが、これらの規定は、現代の私法では、当たり前のことを述べているだけだ。常識の問題としてスルーすればよい。

大事なことは、著作者人格権は、著作権法上、過剰なほどに保護されている上に、譲渡することができないと明記されている(59条、60条)ことだ。すなわち、著作者人格権は、著作者本人が望んでも、契約書に明記しても、譲渡できない。これを著作者人格権の一身専属性という。

これは一体なぜなのか。なぜ、著作権ではない権利が著作権法に規定されていて、しかもそれが譲渡不可能と明記されているのか。教科書には、大事なことが書いていない。

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