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2011年1月25日 (火)

弁護士は増えた。次は訴訟だ。

「著作権法改正案に違法状態拡大の懸念」

 1月24日の毎日新聞朝刊は、標記の見出しで、著作権法改正に懸念を示す記事を掲載した。これについて、ちょっと頭に来たので、2点指摘する。

 教科書的な説明をすると、著作権法上、例えば書籍のコピーは複製(21条)に当たる。ではコピーが全部違法かといえば、私的利用(30条)は適法だ。このような適法行為を、現行著作権法は具体的に列挙している。しかし、改正案は列挙せず、公正な利用(フェアユース)にあたる場合は適法、とすることにより、「著作物の利用の促進による新事業の創出などを狙」うようだ。
 これに対して記事は、著作権法上適法となる「例外」の列挙をやめて一般規定を置くことについて、疑問を提起している。しかし、原則と例外が逆だ、とまず指摘したい。
 確かに著作権法の教科書には、複製は原則全て違法で、私的利用等はその例外、と書いてある。しかし、この考え方はおかしい。「所有権絶対」という私法の基本原理からすれば、購入した本は、読もうが、焚きつけに使おうが、所有者の自由だ。同様に、コピーしても、書き写しても、引用しても、売っても貸しても自由である。ただ、この自由を徹底すると出版、映画、音楽などの表現・芸術活動や産業を阻害してしまうので、著作権法は一定の複製行為等を禁止したのだ。だから、コピーの自由こそ原則であり、複製禁止は例外である。私的複製を適法と定める現行著作権法30条は、この原則を確認した規定と解すべきだ。少なくとも、こういう解釈もあって良いと思うが、聞いたことがない。なぜだろう。

 もっとも、私がちょっと頭に来たというのはこの点ではない。記事が改正案に対する懸念として、「著作権を巡る争いが起きた場合に、その解決を裁判所に委ねてきた米国に対し、例外を具体的に明記した…日本は、判例の積み重ねがない。日米の著作権文化には違いがある(から米国制度の導入はいかがなものか)」という下りだ。
 この内藤陽、臺宏士という記者は、何をトンカチなことを言っておるのだろう。君らは、「権利を巡る争いが起きたときに、その解決を裁判所に委ねる」ことに賛成したはずだ。著作権だけ例外とは言わせない。それが「法の支配」ということであり、司法改革の本質であり、そのために弁護士を増やしたのであり、君らはそれに、諸手を挙げて賛同し推進し、疑問を呈する弁護士や弁護士会を攻撃してきたはずだ。嘘だと思うなら毎日新聞もと論説委員の坪井明典氏に聞いてみたらよい。

 弁護士は増えた。次は訴訟だ。これこそ、毎日新聞が進むべき道だ。方針転換したというなら、連絡してほしい。撤回してもらう社説があるから。

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