宅内情報収集システムとライフログ
宅内情報収集システムとは、家電製品とホームサーバーを無線でつなぎ、使用状況や消費電力を集めてクラウドに転送する仕組みである(下図ご参照)。これによって集まる情報を環境センサー情報や他の家庭の情報と組み合わせれば、二酸化炭素削減や、マーケティング、リコール家電製品の探索や独居老人の見守りなど、様々な使い道が考えられる。欧米では試験的運用が始まっているとも聞く。
私は宅内情報収集システムWGに参加しているが、プライバシーとの関係がやっかいだ。
まず、最も単純なパターンとして、独身者が持ち家に住み、すべての家電製品を所有している場合を考えてみる。
この場合、家電製品の使用状況は当人のライフログでありプライバシー情報だが、これらの情報がホームサーバーから外に出ないなら、プライバシー侵害の問題は発生しない。これだけでも、当人として家電の使用状況が分かるというメリットはあるが、ビジネスとしては成立しにくい。
これに対して、家電製品の使用状況がホームサーバーから外に出るなら、当人の同意が必要となる。この場合、同意の範囲と内容をどうするか、という問題が発生する。
例えば、本人がパナソニックの社員であるにもかかわらず、ソニーのAV機器を購入したとしよう。当人としては、この情報をパナソニックだけには知られたくないとする。この場合、同意の取り方はどうしたらよいのだろう。
次に、当人に家族がいるとするならどうなるだろう。ここで、家族間のプライバシーという最もやっかいな問題が発生する。外部から見れば、世帯主の同意があれば法的に問題なしとしたいところだが、厳密には、一個の家庭でも、複数の成人がいれば、その人毎の同意が必要になる。また、未成年者であって、世帯主の親権に服していても、無条件で世帯主の同意をもって足りるか、とは言いがたいと思われる。
例えば、宅内情報システムが実施されれば、高校生の息子が、親の目を盗んでテレビゲームをしていた事実や、妻が夫の出張中に朝までテレビを見ていた事実がバレてしまうが、それでよいのかどうか。
さらに、家族ではない居住者のプライバシーの問題がある。例えば賃貸住宅や社員寮、ホテル、学校や病院などの場合、同意の取り方はどうするべきか、という問題だ。
本稿ではこれ以上立ち入らないが、間違いないのは、パターン毎に突き詰めていけば、無数の組み合わせが発生して、処理が不可能になることだ。この問題を解決するためには、誰もが同意したくなる、魅力的なビジネスモデルを提示すること、費用を本人負担としないこと、抽象的かつ明確な同意方法を編み出すこと、がポイントとなるだろう。
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