« 人生の大問題を 一人で決めて大丈夫? | トップページ | 船 »

2011年2月 1日 (火)

企業内弁護士は増えるのか?

「『企業内弁護士』企業二の足」という見出しで、企業内弁護士に対するニーズは低調と報じた日経新聞に対して、元「法律新聞」編集長氏が、「今後、大量増員時代の弁護士が、報酬(中略)のハードルをぐっと下げてくれば」増えるのではないか、と予測しておられる。

そうかなあ。この前提に無理があるような気がする。今後、企業内弁護士の報酬のハードルはぐっと下がるだろうか。

弁護士が組織に雇用される場合の報酬をシミュレートするため、4大卒新人と比較してみよう。法曹養成制度の現状を前提にする限り、新人弁護士は22歳の大卒より平均7歳年長である。法科大学院の学費として平均約400万円を投じている。司法修習が貸与制になれば、300万円の借金が加わる。そして、年50万円~100万円の弁護士会費を支払う義務がある(もっとも、新人弁護士の場合は、当初23年は半額程度に減額される場合もある)。

これらの相違点を考えた場合、新人弁護士が、企業に就職するとき、同期入社の4大卒新人と比べ、年収でどの程度の待遇差を設けたら公平だろうか。

投下資本を10年で回収し、会費を企業側が負担すると仮定しただけで、月収(手取)で10万円の差となる。また、7歳の年齢差を勘案すると、60歳定年と仮定した場合、企業内弁護士の給与を1.23倍しないと、生涯給与が釣り合わない。すなわち、4大卒新人(22歳)の月給を30万円とすると、同期入社の弁護士(29歳)の月給は4730×1.2310)万円必要という計算になる。

弁護士に言わせれば、この待遇でも不満だ。なぜなら、彼らは司法試験というリスクを取ってきたわけだし、終身雇用が保障されないなら、投下資本を早期に回収する必要があるからだ。

一方、企業内弁護士を採用する側からみればどうなるか。司法研修所を卒業したばかりの平均29歳の弁護士に、4大卒新人の1.5倍を超える47万円の月給を支払う価値があるだろうか。あるいは、入社7年目の中堅社員を上回る給料を支払う価値があるだろうか。普通に考えて、ないだろう。

つまり、現行の法科大学院制度、司法研修制度、そして高額の弁護士会費を前提にする限り、企業内弁護士に関する弁護士と企業の要求は大きく解離している。

もちろん、以上は抽象的な一般論であり、現実はもっと複雑だ。弁護士側には、当面の待遇は4大卒新人同期以下でも構わない、入社後に実力を発揮してキャリアアップすればよい、と考える野心家もいるだろうし、企業側から見て、はじめは分不相応の高給でも、数年育てれば採算が合う人材がいるだろうし、はじめから採算が十分取れるほど、ニーズの高い企業もあるだろう。現に近年の企業内弁護士数の伸び率は著しいし、優秀な企業内弁護士がたくさんおられる。

だが、大所高所から見た場合、弁護士と企業との経済的なミスマッチは、いかんともしがたい。上記の前提条件が維持される限り、企業内弁護士数は、おそらく数年で飽和するだろう。いいかえれば、法科大学院と、司法研修所と、高額の弁護士会費をそろって廃止すれば、企業内弁護士は大きく普及することになろう。

企業内弁護士を増やすには、弁護士の意識改革が必要、という主張があるが間違いだと思う。この問題は根性論では解決しない。経済的合理性の問題だからである。

|

« 人生の大問題を 一人で決めて大丈夫? | トップページ | 船 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/50997095

この記事へのトラックバック一覧です: 企業内弁護士は増えるのか?:

« 人生の大問題を 一人で決めて大丈夫? | トップページ | 船 »