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2011年4月 6日 (水)

電力使用制限発動へ

 海江田万里経済産業相は5日の閣議後会見で、東京電力福島第1原子力発電所事故などで夏場の電力供給不足が懸念されるため、電気事業法27条に基づいて国が東電管内企業の電力使用量を制限する必要があるとの認識を示し、使用制限を発動する方針を表明した。使用制限は経産相が発動する措置で、実施されれば、第1次石油危機時の1974年以来となる。(45日毎日新聞朝刊)

電気事業法27条 経済産業大臣は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給の不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし、公共の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、その事態を克服するため必要な限度において、政令で定めるところにより、使用電力量の限度、使用最大電力の限度、用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者の供給する電気の使用を制限し、又は受電電力の容量の限度を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者からの受電を制限することができる。

 先日のエントリ「東京電力は電気供給契約違反による損害賠償責任を負うか?」では、東電の電力供給義務不履行に対する損害賠償請求の可能性について触れたが、電気事業法27条が発動されれば、国民や事業者が東電に対して電気を供給せよと請求する権利が消滅するので、東電の債務不履行は発生せず、その賠償責任も負わない、という理屈になりそうだ。その意味では、首都圏住民による東電に対する1兆円の請求訴訟は夢と消えたことになる。

 そうは言っても、私は東京電力に対する損害賠償責任追及(原発被害は別として)を諦めたわけではない。報道によると、電気事業法27条の発動対象は東電管内企業に限定され、一般市民は除外されるようだ。また、1974年の石油ショック以来とのことだが、中東産油国のワガママで電気が供給できなくなった場合とは、明らかに責任の所在が異なるし、電気事業法27条は電気供給について定めただけで、法的責任は別問題、という解釈が成り立つかもしれないし、そもそも、明白な自由経済統制法規である電気事業法27条の合憲性、という問題だってあるかもしれない。

 たとえば、電気事業法27条の発動によって、鉄道が間引き運転された結果、3倍の通勤時間を費やすことになる会社員の損害はどうなるのだろう。また、電気供給がなくなった結果事業が休止された場合、休業手当が出ないなら、それも会社員の損害だし、休業手当が出るなら、その分は事業者の損害となる。これらの損害は東電に請求できないのか、検討する余地は十分にある。

 特に首都圏の市民や事業者の方は、天災と諦めず、法律的解決が可能かどうか、弁護士に相談してほしいと思う。弁護士は、こういった損害に法的救済の余地がないか、検討を急ぐべきである。そして弁護士会は、数ヶ月後に予想される大量の法的請求の合理的管理方法の開発に、今から取り組むべきである。

 一般人が天災と諦める事態であっても、法的救済が可能であると示すこと。それこそ法の支配であり、弁護士と弁護士会の責任である。

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