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2011年4月15日 (金)

日弁連は東電集団訴訟の管理体制づくりに着手すべきだ

 4月15日の朝日新聞によると、福島県双葉町の会社社長が東京電力を相手取り、避難指示により事業休止に追い込まれたとして、損害賠償金4400万円の仮払いを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。

 町村教授のブログによると、東京電力は大要、「個々の請求に個別対応していたら補償実務が混乱する」として却下を求める答弁書を出したという。

 町村教授は「倒産会社のようだ」と揶揄しているが、東電の立場からは当然だと思う。賠償義務は当然としても、一個一個訴訟を起こされたら、社員全員でも対応できない。

東電に対する損害賠償請求には、一定の秩序が必要だ。なぜなら、先日のエントリにも書いたが、東電に対する訴訟は、その金額だけでなく、当事者数において数百万人(社)を超え、1千万人(社)になろうかという、前代未聞、史上空前の規模になる可能性がある。当事者の地域的分散はもちろん、その請求内容も、原発事故による直接の損害賠償請求から、間接的な風評被害の賠償請求、停電による契約責任の追及まで、様々なものになる。このうち、政府が直ちに動いてくれそうなものは、それを待っても良い(水俣病や原爆症訴訟のように、政府の救済から外れた者、足りない額の司法救済を、後に考えれば良い)が、そうでないものは、司法が動くしかない。そうなると、これだけの数の当事者がバラバラに動いたのでは、東京地裁庁舎をもう一つ建てても追いつかないし、バラバラに申立をしたのでは、バラバラの判決が出るだけで、最高裁で統一されるまで最低10年かかってしまう。

 だから、司法救済申立の前に、被害者の立場を整理・分類して秩序立てる取り組みが必要だ。そして、これを行うべき立場にあるのは日弁連だと思う。当事者となり得る国民を、居住地や法律構成等によってあらかじめ分類し、適切な管理を行う仕組みは、今から作っておかないと間に合わない。その費用など、いくらでも集まる。これも先日のエントリで書いたとおりだ。

 このような問題意識から、実は先日、日弁連の業務改革委員会のMLに、「東京の弁護士(会)は東電に対する契約責任追及の準備をすべきだ」と投稿したら、無視された。異論反論を含め、様々な反応があって当然だと思っていたが、たった一通の返事もなかった。まさか無視されるとは思っていなかったのでびっくりした。正確に言うと、大手渉外事務所の弁護士から「東京電力に対する契約責任の追及は、国民の支持が得られない」というDMをいただいたが、ML上は完全無視だった。なぜかは分からない。単にその余裕がないのかもしれない。DMの意味も分からない。私の理解によれば、「国民の支持」は訴訟提起の要件ではない。

日弁連が「法の支配」の負託に応え、社会的役割を果たす絶好の機会なのに、実にもったいないと思う。東京の弁護士たちは上記のとおりのていたらくなので、他の方のご意見を求めます。

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コメント

業革委員会だと、「東電の責任追及→株価下落→日本経済にも打撃」とか
余計な配慮をする先生方も多そうですし、
ここは、公害環境委員会とかに提起しては如何ですか?

先生は契約責任構成の見解なのですね。
某匿名掲示板の弁護士スレッドでは
原賠法3条1項による無過失賠償責任と
東電の免責要件(「異常に巨大な天災地変」)が
議論されてますよ。

個人的には、歴代役員の責任もきっちり追及すべきと思いますが。
株主代表訴訟とか。ハードル高そうですけど・・・。

投稿: 誰か弁護団作らないんですかね | 2011年4月15日 (金) 17時37分

コメントありがとうございます。一点だけいうと、契約責任と不法行為責任(無過失責任を含む)は両立します。典型例でいうと、東北電力管内の福島県民は不法行為責任で、東京電力管内の東京都民は契約責任を追及することになります。契約責任の利点は、有責性の立証責任が東京電力にあることですが、他方、電力使用制限の発動により権利を失う可能性があります(その場合でも法律構成次第では請求できるように思いますが)

投稿: 小林正啓 | 2011年4月15日 (金) 19時51分

『原発事故の「賠償特需」を「ポスト過払い金返還」と期待する弁護士界』という記事が出てました。ご参考まで。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2475

投稿: 佐藤 | 2011年4月21日 (木) 22時01分

佐藤様、情報ありがとうございます。
記事は弁護士を揶揄する趣旨なのか否か、よく分かりませんが、損害が発生した場合、これを法と裁判によって解決することが「法の支配」の理念であり、国家が進めた司法改革の姿であり、弁護士を増やした最大の理由ですから、弁護士が東電に対する賠償請求に動くのは国民の付託に応えるものだ、というのが私の考えです。

投稿: 小林正啓 | 2011年4月22日 (金) 15時12分

今日のニュースにも「5号機の冷却機能一時喪失 福島第一、半日遅れで公表」とありました。 一番問題にするべきは、政府および東京電力が国民に情報提供を故意的に怠ったということではないでしょうか?

一昔前の医師が、癌の告知をしなかったように、国民の知性を信じないで、故意的に情報隠蔽をしたからこそ、東北、また関東の国民は被爆をしました。この故意的な情報隠蔽にフォーカスして集団訴訟はできないでしょうか? 実際の事故には関係ないので免責ではないのでは?

この訴訟を通じて以下の目的を果たせればと思います。

1)事故対応の経緯と責任の明確化
2)これからの情報開示の完全性と迅速化

いかがでしょう?

投稿: | 2011年5月30日 (月) 07時59分

コメントありがとうございます。集団訴訟を提起するなら、事故隠しと被爆との因果関係や、被爆により健康被害又は風評被害を被ったことの主張立証が必要になるので、訴訟に勝ちきるのはなかなか大変です。それでも訴訟を提起して法廷で東電の社会的責任を明らかにするという考え方はあるので、ご検討いただく価値はあると思います。ただ、費用的には大赤字になるので、そのあたりもご考慮下さい。

投稿: 小林正啓 | 2011年5月30日 (月) 12時48分

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