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2011年4月25日 (月)

小嶋和司先生のこと

 佐藤幸司「日本国憲法論」を買いに行ったら売り切れだった。だが、平積みされていた小嶋和司先生の憲法概観の前で、私は立ちすくんだ。この本を手に取るのは、東北大学の学生だったとき以来、ほぼ25年ぶりである。

 小嶋和司先生は、片足が不自由で、顔色が悪かった。体を大きく揺らしながら席に着き、マイクを持って、低いがよく通る声で淡々と講義をされた。ノートを取るには少し早いという絶妙のスピードなので、学生は一言一句をノートに書き留めるのに必死だった。ときどき、さりげなくジョークを言って、口の端だけでにやりと笑い、講義を続けた。地方自治や財政という地味な分野を専門とされたため、学会では目立たない存在だったと思うが、すばらしい知性の持ち主であることは、学生の分際ながら、よく分かった。

 「憲法概観」の「序」にはこうある。「筆者は、憲法学を法学として構築すること、国際的に通用する学問水準に立って日本憲法を剖解すること、日本の現在にしか通用しないような論議をしないことを、学問上の念願としている」。この念願が確かなものであったからこそ、「憲法概観」は四半世紀を経た今でも、大阪の書店に平積みされるのだろう。

 小嶋和司先生は、この序文を書いた翌年の325日、63歳で亡くなられた。東北大学の卒業式、定年を迎える日だった。先生らしい死に方だ、と当時の学生は語り合った。

 「日本の現在にしか通用しないような論議をしない」という言葉を胸に刻もうと思う。

 本日売り切れだった本は、25年後に残っているだろうか。

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コメント

 はじめまして。西天満の弁護士です。
 小島和司先生のお名前で検索していたら、ここにたどりつきました。

 9月から法学部以外の学部で、法学概論の講義をします。
 適当な副読本を探していましたが、佐々木惣一博士の
 「日本国憲法論」は入手困難ですし、いろいろ考えて
 小島先生の「憲法概観」と大石眞先生の「憲法講義」を
 学生に推薦することにしました。

 地に足の着いた実定法解釈学として憲法を講ずる本が、
 出てほしいですね。

投稿: わかな | 2012年9月 7日 (金) 22時16分

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