識別情報が仮名でも、本人を探し出すことができる話
5月16日、情報法の権威である鈴木正朝新潟大学法科大学院教授の講演を聞く。特に刺激を受けたのは次の点。
ライフログの結合は、個人識別情報を媒介して行われるのが普通だ。太郎君、花子さんといった個人識別情報がライフログに付いていることによって、太郎君のライフログ同士、花子さんのライフログ同士の結合が可能になる。しかしこれを本人の同意無くやると、プライバシー侵害の問題が生じるので、個人識別情報を付けたライフログを第三者に譲渡することは違法と考えられている。ならば、個人識別情報を仮名化して、太郎→A、花子→Bとすればどうだろう。この場合はプライバシー侵害の問題は発生しないと考えられてきた。このライフログは、Aのライフログ、Bのライフログとして結合することが可能だが、いくら結合してもA、Bが誰かは分からない。
ところが最近、外国の企業が仮名化したライフログを買い集めて結合させているという。結合した結果、例えば「Bは40歳代の専業主婦。子ども2名。韓流ドラマが好きで、韓国渡航歴4回」というプロフィールができあがる。Bが誰かは分からない。しかし、このプロフィールの持ち主の携帯電話に、例えば「抽選で100名様がヨン様に会える!」という行動ターゲティング広告を打つ。花子さんは、喜んで住所氏名を入力して応募するだろう。広告主が、花子さんの年齢職業家庭環境等をすべて把握しているとも知らずに。こうして、Bさんが花子さんであることが、把握されてしまう。件の外国企業は、これが目的で、仮名化したライフログを買い集めているというのだ。
鈴木教授にこの情報のご注進に及んだのは、国内企業の会社員だという。「なぜ教えてくれるのだ?総務省が規制を始めたら、君たちも商売がやりにくくなるだろうに」という質問に対して、会社員はこう答えたそうだ。「外国人は、法規制がなければ自由だと考えて、どんどん地歩を固めている。日本企業は、法規制がなければ禁止と考えて、その間においしいところを外国人に取られてしまう。だから、法規制を作って、ここまでは適法ですよ、と言ってもらった方が、日本企業としては動きやすい。」
前半はある意味で恐ろしく、後半はとても情けない話である。
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