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2011年6月 3日 (金)

御社がモビルスーツを工場に導入する際の法的注意事項(2)

労働安全衛生法上、もう一つ問題になるのは、パワードスーツが産業用ロボットにあたるか、という点だ。労働安全衛生規則36条31昭和58年労働省告示第51は、産業用ロボットを次のように定義している。

  マニプレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む)を有し

  記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作(単純な繰り返し動作を除く)を自動的に行うことができる機械で、

  80Wを超える定格出力の駆動用原動機を一つ以上持つもの

この規定は、自動車などを自動で製作する上腕型の産業用ロボットを念頭に置いている。しかし、パワードスーツがこれに該当するときには「さく又は囲いを設ける」などして、人間と産業用ロボットを物理的に隔離する必要が発生することがある。そうなると、身体に装着することはできないのだろうか。

③の要件を満たす前提で、①②を考えると、いくつか問題を指摘できるだろう。

たとえば、パワードスーツの場合、そもそも「記憶装置」を有しているのか、有しているとしても、装着する人の動作に「追随」して動作するため、「記憶装置の情報に基づき…動作を自動的に行う」といえるのか、が問題となろう。

マニプレータの定義規定は法令上存在しない。「ビジネス用語辞典」によると、「人間の手や上肢と同等の機能を持たせ、人間の作業を代替させる機械やロボットのこと」とある。パワードスーツの場合、ハードディスクがなければ記憶装置は存在しないし、装着者の動作に追随して動作するだけだから、プログラム通りに動作するわけでもなく、その機能においてマジックハンドにすぎないから、マニプレータにあたらないという意見もあろう。しかし、パワードスーツの動作は、人間の動作を単純に追随するわけではなく、筋電センサ等を通じて人間の動作を先取りし、プログラムに基づいて人間の動作をアシストするものであるし、プログラムに基づく様々な自律制御を行うのだから、その記憶装置は存在するし、その情報に基づく動作を行うし、それは一種の自動制御といえるだろう。また、法令はマジックハンドをマニプレータと区別して定義していない。ちなみに、足に装着するものもマニプレータに該当するというべきだろう。要するに、あらかじめプログラムされ予測される動作を行う典型的な産業用ロボットに比べ、予測できない複雑な動作を行うパワードスーツは、人体に接触する可能性が高く、出力如何によっては危険である以上、労働安全衛生法の目的に照らし、産業用ロボットに該当するというべきである。

パワードスーツが労働安全衛生規則の定義する産業用ロボットに該当する場合、同規則150条の4は、「事業者は、産業用ロボットを運転する場合…において、当該産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めている。それでは、労働者がパワードスーツを装着することは許されないのだろうか。

この点については、パワードスーツの可動部分が物理的に装着者に接触しないように設計すれば、この規則は関係ない、とも考え得る。確かに、そのような設計は可能だろう。しかし、パワードスーツの潜在的危険は、可動部分の物理的接触だけではない。最もリスクが高いのは転倒だ。パワードスーツが転倒すると、装着者は手をつくなど適切な防護動作ができず、顔面を強打するなどして負傷する危険がある。したがって、パワードスーツが転倒した場合でも装着者が怪我をしないよう、安全ベルトやキャノピー等の措置が必要と考える。もちろん、リスクが低い場合にはヘルメットで足りる場合もあろう。

労働安全衛生規則150条の4に関して、もう一点考慮しなければならないのは、装着者以外の労働者である。『エイリアン2』には、パワーローダーを後進させるときに「Clear behind!(後ろに立つなよ!)」と操縦者が叫ぶ場面があるが、もしこんなヤツに足を踏まれたら、「いたたたた」と片足で跳ね回るだけでは済まない。幸いなことに当該条文は、「労働者に危険が生ずる恐れのあるとき」とあるから、恐れがない場合にまで隔離措置を要請していない。だから当該パワードスーツの重量や、四肢の動作速度等に応じ、接触により怪我をさせる危険がある場合に限り、生身の労働者を同じスペースで働かせることは許されないことになる。

パワードスーツについては、他にも法律問題がある。読者が御社の工場にモビルスーツやレイバーを導入する際は、是非事前に相談されたい。

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