« 司法にハンディキャップをつけた人たち(3) | トップページ | 司法の危機 »

2011年6月23日 (木)

強く、強く念じるんだ。「土曜日の、実験室!」

620日、内閣府の社会還元加速プロジェクト「高齢者・有病者・障害者への先進的な在宅医療・介護の実現」に出席してきた。

毎回、冒頭で紹介されるのがBMIである。ブレイン・マシン・インターフェースの略で、要するに考えただけでコンピューターを動かす技術だ。

とはいえ、標題の文章を念じただけで「ドヨウビノ、ジッケンシツ」と画面表示されるというSF的世界にはほど遠い。まず「ド」を打ちたいと思ったら、利用者はヘッドギアを装着してモニタを凝視しつつ、頭の中で「ド」と念じ続ける。画面に文字が次々と表示され、「ド」が表示されたとき、「これだ!」と思うことによって、強い脳波が出るから、これをヘッドギアで受信して、コンピューターが「ド」を記録するという仕組みである。「ド」が終われば、次は「ヨ」で同じ作業を繰り返す。原始的といえば原始的だが、それでも、ヘッドギアの電極やソフトの開発、実証事件にかなり手間がかかるらしい。

中島八十一氏ら開発者は、実用化への目処がほぼついたとし、どのような人や場面で利用してもらえるかを今後の検討課題としていたが、法律家の目からは、遺言に使えるか否かは重要な問題になると思う。BMIを必要とする人の、少なくとも一部は、遺言をしたいというニーズを持っていると思われるからだ。

遺言には様々な形式があるが、自書(署)を必要としない遺言としては、「公正証書遺言」と「危急時遺言」とがある。しかしいずれも、原則として遺言者が口授することを前提としているので、BMIを使用しなければならない人(=話すことも筆記もできない人)には適用されない。唯一、危急時遺言で遺言者の「口がきけない」とき「通訳人」の通訳が認められているから、問題はBMIをもってこの「通訳人」に替えることができるか否か、ということになる。

他に方法がない以上、BMIを通訳人と認めるべきだ、という意見はあってしかるべきだが、文言上「通訳」が機械を含むか、という問題、「通訳」の法的正確性を、BMIによってどうやって担保するのか、という問題、そもそも、全身不随だが当面命に別状ない人が「疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者」(民法9761項)にあたるかという問題があり、考えてみると、なかなか難しい。いずれにしろ、遺言した本人にはやり直しのきかない問題なので、事前に手当をすることが望ましいだろう。

なお冒頭の台詞は、実写版「時をかける少女」(原田知世主演)である。私はこの映画を邦画ベスト2と確信している。ベスト1は何だって?それはもちろん、「時をかける少女」のアニメ版です。

|

« 司法にハンディキャップをつけた人たち(3) | トップページ | 司法の危機 »

コメント

こんにちわ。
これからの弁護士はいかに専門性を身につけるかが重要になってくると思います
弁護士に簡単になれる時代になった現在、いかに他の弁護士と自分との「差別化」を図れるか、これが大事でしょう

投稿: ゆん | 2011年6月23日 (木) 11時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/52004762

この記事へのトラックバック一覧です: 強く、強く念じるんだ。「土曜日の、実験室!」:

« 司法にハンディキャップをつけた人たち(3) | トップページ | 司法の危機 »