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2011年6月 6日 (月)

ミラーマンが電車に乗れなくなる日

529日の毎日新聞によると、「丸善書店は、丸の内本店(東京都千代田区)で、ICタグの実証実験を始めた。タグと監視カメラの顔認識装置を連動させることで、万引した人物を特定、再来店時に店員に通報することも可能」とのことだ。

「顔認識装置を連動させることで、万引した人物を特定」とある意味はおわかりだろうか。要は、本を持って店を出る客の顔をすべて撮影しておく、ということだ。この画像データには、持っていた本のICタグナンバーも記録されている。棚卸しをしたとき、「レジを通っていないのに、無くなった本」―つまり万引きされた本―のICタグナンバーから検索すれば、その本を持って店を出た人の顔画像がヒットする。そこでこの画像を来店者用カメラの顔認識装置に登録しておけば、犯人が再来店したとき、警報が鳴る仕組みだ。記事は「店員に通報する」とマイルドに書いているが、もちろん、通報先は店員だけではない。

法律上問題は無いのだろうか。言うまでもなく、店舗にカメラを設置して客を撮影することには、プライバシー権ないし肖像権侵害の疑いがある。しかし、店舗は経営者の排他的施設管理権が及ぶ場所であり、目的が正当である以上、当該防犯カメラシステムに関する適切な警告表示がなされている限りは、適法と考える。

それでも残る問題としては、画像データの保存や第三者譲渡が、どの程度許されるかだろう。この画像はプライバシー情報であり、個人情報でもあるわけだが、同一主体であれば、別店舗に譲渡しても違法ではない。では、経営者が別ならば、許されないのだろうか。例えば銀行強盗なら、仮に刑を勤めた後であっても、銀行同士で画像データを共有することも許されてよいような気がする。ホテルが放火犯の画像データを共有することや、保育園や幼稚園が児童ポルノに関する犯罪者の画像データを共有することも、許される余地がある。少なくとも、許されてよい、という考えの人は、決して少なくないはずだ。

ミラーマンと呼ばれた経済評論家がいた。無実を主張したが収監され、刑期を終え出所した彼の画像を、鉄道各線が共有することは許されるのだろうか。そうなれば、彼が車中で再び事件を起こせば、「ミラーマンであることを知って乗せた」鉄道会社側の法的責任が問われることになるから、鉄道は、ミラーマンの乗車を拒否するだろう。つまりミラーマンはもう二度と、電車に乗れない。

講演でこの話題を持ち出すと、女性の多くは「当然の報いよ!」という顔をする。だが続けて、「百貨店の下着売場にこのシステムを導入することについてどう思いますか?」と聞くと、多くの女性が目を伏せる(ような気がする)。

犯罪者だけにこのシステムが使われるとは限らない。銀座ユ○クロの前で10年ぶりに旧友に出会い、「私ユ○クロなんて初めてなんだけど」と言い訳しながら一緒に入ったとたん、「いつもご利用いただきありがとうございます○○様。先週巣鴨店でお買い求めになった補整下着、お加減はいかがでしょうか?」と案内ロボットに話しかけられる日は近い。

この問題については、様々な意見があってよいと思う。だが、これは自分と関わりない特殊な問題ではない、という点は忘れないでほしい。

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