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2011年8月30日 (火)

いまそこにある過疎

通勤途中、住宅街の一角に、さら地を見つけた。「売地」の看板が立っている。「ここ、前に何があったっけ?」と考えても思い出せない。すこし感傷をともなうが、ここまでは、土地の代替わりとして、よくある風景だ。

ところが、「売地」の看板をよく見ると、3区画に分割されている。思いだしてみると、この種の分割は多い。100坪が50坪に、60坪が30坪に。50坪が3分割、というのもある。

少子化によって、日本の人口は減り続けている。普通に考えれば、住宅地は需要が減って、次第に広く、安くなるはずだ。それなのに、なぜ細分化されるのだろう?しかも、なぜ相変わらず高いのだろう?住宅購入世代に限って言えばまだ多い、ということもあろうが、一つの理由として考えられるのが、「住宅街の過疎化」だ。

昭和40年代から50年代にかけて開発された住宅地では、人口減少が進んでいる。マイホームを買った世代から子どもが独立し、配偶者が亡くなっていくからだ。古い住宅街の周りには、病院が集まってくるから分かる。どこも、朝から点滴を受ける老人で繁盛している。夕方のスーパーでは、小さなお弁当を一つだけ、買い求める老婦人が目立つようになる。こうして、昭和40年前後に建った住宅に、一人住まいの老人が増えていく。ファミリー世帯の住むマンションの人口密度に比べれば、一軒あたり老人一人しかいない住宅街は、立派な過疎地と言ってよい。老人ホームに入っても、子どもらは、親の存命中に実家を処分しないから、空き家として何年も放置される。こうして、一等地の住宅地が、どんどん過疎化していく。

老婦人たちは、駅近くの100坪の土地に立つ一戸建てで、一人お弁当を食べる。駅からバス10分の場所にある20坪のマンションでは,4人家族が夕餉を囲む。妻は、駆け回る子どもを叱りながら、「そろそろ一戸建てに住みたいわ」と愚痴を言うが、「うーん、先立つものがなあ」と夫は煮え切らない。

何のことはない。老人が広い一等地を一人(または無人)で占拠しているから、土地がなかなか空かず、空いても分割され、しかも高いままなのだ。

100坪の土地に一人で住む老人がいる一方で、20坪のマンションに4人で住む40歳台がいる。老人は、家と近所の病院とスーパーをまわるだけの生活なのに、40歳台のお父さんは、バス10分、電車1時間かけて通勤だ。そのうえ妻はパートに出ている。それでも蓄えでは、老人の住む土地の半分を買うのがやっと。しかも、老人の年金と医療費を、実質的に負担させられているのだ。

どう考えても、これは理不尽だ。親世代と同じく働いても、親世代と同じ資産と老後は絶対に手に入らない。日本を支える働き盛りで、住宅購入世代のお父さんとお母さんは、もっと怒るべきだと思う。怒らなければ、老人世代に搾取されるだけの人生で終わるだろう。

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コメント

 激しく同意します。
 20坪余りのマンションに住む一員として、憤懣やる方ありません。
 さて、この怒り、どこに向けたらよいのでしょうか?

 民主党?自民党?それとも、司法?

投稿: なしゅ@東京 | 2011年8月30日 (火) 12時46分

心配しなくても日本の財政が破綻したあとは日本の都市の一等地の資産も暴落します。あとは全部買い占められてパチンコ屋になるでしょう。

投稿: | 2011年8月30日 (火) 17時15分

激しく同意します。そして、これら一連の「老人問題」を司法(法律)が解決できるとすれば、生前に実質的相続をさせる仕組みを作るか、相続における寄与分の認定割合を上げる、など、「家族」に前近代的な味付けをすることが有効なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

投稿: | 2011年8月31日 (水) 18時18分

コメントありがとうございます。司法の問題かどうかは疑問ですが、法律(制度)によって解決するとすれば、(土地所有権)の大幅な見直しなのでしょうか。

投稿: 小林正啓 | 2011年9月 1日 (木) 11時24分

全然同意出来ない。
お年寄りの資産である土地はちゃんと面積分を納税されている。
納税しても広い土地を持つ事を理不尽に思うのが間違っている。

自分の親と同居して一緒に生活をする為には、どうしても高層階の
戸建てよりも平屋建ての広い面積が必要になってくる。
海外で日本の住宅を「ウサギ小屋」と比喩されても、土地価格が高いので
大きな戸建てが建てられなくなってしまった事に問題がある。

で、お年寄りが住む広い土地にマンションを建てれば、結局は押し込められる
状態になるのは変わりないと思いますよ。
そして家屋の住居面積が増加するので、その分固定資産税が発生するので
結局の所は得を得るのが市町村ですね。

今後の日本の年齢を考えると、とてつもなく高齢者国家になります。
なら、世界から見たらどうなるのでしょうか?
高齢者が多い日本は資産を溜め込み過ぎているので、世界の若者の為に資産を
吐き出す事が世界経済の発展になる。 という事と同じじゃないですか。

お年寄りに優しい社会は若い世代にも優しくなると思います。

ただし、相続のない広い土地なら、せめて人間らしく自分の親と同居出来る
生活空間にゆとりのある家を目指すべきでしょう。
親と同居するならば、小さな子供のいる家庭なら子供を預ける必要も無いので
保育所費が浮き、他の消費に回せます。
親の介護も自宅で出来れば、病院で入院介護とか介護施設で生涯を閉じるような
悲しく寂しい終焉なんて減るでしょう。
しかも親と同居という事は、親が安心して経済活動、つまりは消費を好むようになります。
だって一緒に住めば老後の貯蓄の不安は相当減ります。

そして国家が同居家族には固定資産税を「減額」もしくは一定面積以下の物件なら
相続税を免除、もしくは減額措置を行なえば広い家に親と住みたい世代が増加するでしょう。

老人の資産を奪った所で何も変わりませんよ。
結局は資産家に奪われ、小市民は押し込められるだけですから。

投稿: 頑張るオッサン | 2011年9月 1日 (木) 13時59分

 法制度としては、税制ではないでしょうか。
 取得コストを下げつつ、保有コストを高くすることで、居住用不動産の流通を促すことだと思います。

 なお、私は、日本が抱えるたくさんの問題のかなりの部分は、国会議員選挙区の定数不均衡問題に起因していると思います。
 これまで数次にわたり繰り返されてきた定数不均衡訴訟で、司法が、一歩でも二歩でも踏み込んだ判決を下し、それによって、国会による主体的な定数是正が促進されていたとすれば、日本は、今とはかなり変わった国になっていたのではないかと思います。
 今後の定数訴訟での裁判所の判断に期待しています。

投稿: なしゅ@東京 | 2011年9月 1日 (木) 14時26分

とても共感できます。
高齢者が少ない状態で作った高齢者中心の社会保障制度を延命させた結果、若年者に過度な負担がかかっています。
お金があれば、日本から脱出したいです。

投稿: | 2011年9月17日 (土) 10時18分

>高齢者が少ない状態で作った高齢者中心の社会保障制度を延命させた結果、若年者に過度な負担がかかっています。

これに対して、高齢者の言うことと言えば、

俺達がしたように、お前たちも産めや増やせばいい

ですからね。
結局下の世代になすりつけることしか考えていないわけで、
少子化対策というのも若干胡散臭く見ています


投稿: とろ | 2011年9月21日 (水) 11時42分

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