« 統一修習と給費制のあけぼの(6) | トップページ | 統一修習と給費制のあけぼの(8) »

2011年8月26日 (金)

統一修習と給費制のあけぼの(7)

法曹一元に戻ろう。

法曹一元は、弁護士から判事を任命する制度だ。だから、法曹一元を導入するには、裁判所法を改正して、最高裁判所の作成する名簿の候補者を弁護士に限定する必要がある。実は、これだけなら、裁判所には、あまり抵抗はない。現職判事の身分をどうするか、という経過措置の問題さえ解決すれば、新人判事を弁護士から選んでも差し支えない。弁護士の能力不足の問題もあったが、名簿作成権を最高裁が握っている限り、デキの悪い弁護士は名簿に登載しなければ良いのだから、不都合はない。しかも、後述するとおり、法曹一元は、裁判官に夢のような好待遇をもたらす可能性があった。だから、終戦直後の裁判所にとって、法曹一元は、全面排除の対象ではなかったのだ。実際、一部の「リベラル派」裁判官は、法曹一元導入への布石を打とうとしたと見受けられるが、この点については追って述べたい。

しかし、『こん日』にも記した平成12年(2000年)当時、弁護士会主張していた法曹一元論は、判事候補者名簿搭載者を、弁護士会が選任することとワンセットだった。つまり、最高裁判所の判事候補者名簿作成権は形式上のものとなり、実質的な判事先任権は弁護士会が持つ、すなわち、判事の採用人事権を最高裁判所から奪う、ということだ。司法権の独立を悲願とし、終戦とともにこれを勝ち取った裁判所にとって、採用人事権を弁護士会に奪われることは、絶対に容認できない。だから、このときの裁判所は、弁護士会の主張する法曹一元論に反発し、必死で抵抗したのだ。

さらに進んで考えると、最高裁判所長官退官後に法曹一元を主張し、日弁連をたきつけた矢口洪一は、この問題を、どう解決する考えだったのだろう。これは想像だが、最終的には憲法801項をもちだして、法曹一元を採用しつつ、弁護士会の名簿作成権は否定するつもりだったのではないだろうか。法曹一元のもたらす裁判官の社会的地位と好待遇を獲得しつつ、採用人事権は守る。戦後司法界の傑出した「政治家」である矢口洪一なら、このくらいのことは、当然考えたと思う。

|

« 統一修習と給費制のあけぼの(6) | トップページ | 統一修習と給費制のあけぼの(8) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/52569438

この記事へのトラックバック一覧です: 統一修習と給費制のあけぼの(7):

« 統一修習と給費制のあけぼの(6) | トップページ | 統一修習と給費制のあけぼの(8) »