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2011年9月29日 (木)

法テラス、日弁連と訣別へ(201×年 朝日新聞朝刊)

法テラス(日本司法支援センター)が、資力制限を事実上撤廃する方針を表明したことから、弁護士会が真二つに割れている。日弁連は、来月開催する臨時総会で、態度を決定する。

法テラスは、総合法律支援法に基づく特定公益法人。司法制度改革の目玉の一つとして、2006年に設立された。経済力のない人の代理人報酬を立替払いする民事扶助事業を推進しており、その条件は、東京都に居住する4人家族の場合、月収合計29万円未満で預貯金残高300万円未満が基本。この条件を満たさない人は、自費で代理人を依頼しなければならない。数年前から法務省は、「法の支配を行き渡らせるという司法制度改革の理念に照らせば、資力制限撤廃の方向性は当然」と主張し、日弁連と協議を続けていた。

これに対して、反対の声を上げたのが、地方の弁護士会だ。その背後には、両者の複雑なお家事情がある。

法テラスは、2010年ころから民事扶助件数が頭打ちになり、減少に転じたため、一部の事務所ではスタッフ弁護士らの余剰が生じており、予算も前年度割れが続いている。そのため、このままでは法テラスの目玉である民事扶助事業の存続が危ぶまれる、との危機感がある。スタッフ弁護士は、もともと、法テラスで経験を積ませ、地域で独立させる予定だったが、「いま独立されたら、法テラスと客の奪い合いになる」(法テラス幹部)。また、来年の任期満了を控えたスタッフ弁護士は、「弁護士が余っているこの時代に独立したくない。半分公務員の安定した今の待遇がいい」と本音をあかす。

一方弁護士会の事情も複雑だ。もともと地方の弁護士会は、法テラスを「商売敵」とみなしていたので、今回の資力制限の撤廃は、火に油を注ぐ結果となった。実際、各弁護士会が行う有料の法律相談業務は、無料の法テラスに対抗できず、相次いで廃止に追い込まれている。だが、法テラスの事件紹介で食いつないでいる弁護士が多いことも事実。ある若手弁護士は「事件を法テラスに持ち込めば、報酬の取りっぱぐれがなくなる。(法テラスの)紹介事件がもっと増えてくれればありがたい」と述べた。

かつて「法テラスは弁護士会獅子身中の虫」と批判した、ある日弁連幹部は、「この問題は司法制度の根幹にかかわる」と警鐘を鳴らす。「法テラスという事実上の行政機関が、潤沢な広告宣伝費と無料相談によって顧客を囲い込み、弁護士報酬をコントロールし、それに飼い慣らされて何とも思わない弁護士が増えている。この制度からは、国家と対峙する弁護士は育たない」という。

しかし法務省は強気だ。「弁護士会は、法テラスの基準によって、弁護士報酬が安く抑えられるのが気に入らないだけ。日弁連が反対決議を採択するなら、スタッフ弁護士ごと、別の弁護士会を設立して、独自にやらせてもらう」と鼻息は荒い。弁護士法上、法務局が受け付ければ新弁護士会の設立は可能だから、新弁護士会の設立は簡単と法務省は言う。日弁連は「地方裁判所所在地に二つ以上の弁護士会を設立することは弁護士法上禁止されている」と反論するが、東京にはすでに3つの弁護士会が存在する。

実は、法テラスと弁護士会の対立は、3年前にもあった。このとき法務省は、それまで弁護士出身の理事長を更迭し、法務官僚出身者に交代させた経緯がある。「法務省が本気を出せば、勝ち目はない」。日弁連には、諦めムードもただよう。

端から見ると、法テラスと日弁連が客の取り合いという内輪げんか。「二割司法(司法は法的トラブル全体の二割しか解決していない)」との認識から始まった司法改革だが、なぜ、小さなパイを奪い合うような事態になったのだろうか。

注;この記事は、全て想像による架空のものです。実在する個人や団体とは一切関係ありません。

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