« 大阪発「性犯罪者追跡アプリ」はどないでっか | トップページ | 日本で内戦リスクの高い場所 »

2011年9月 9日 (金)

統一修習と給費制のあけぼの(11)

名前が出たついでに、後藤富士子弁護士にも言及しておこう。

後藤富士子弁護士は、いわゆる市民派の弁護士であるとともに、法曹一元論の論客である。平成3年(1991年)ころから法曹一元に関する論考を著し、これをまとめた書籍『官僚司法を変える 法曹一元裁判官』(現代人文社)が、平成11年(1999年)11月に刊行された。平成1111月と言えば、日弁連が「司法改革ビジョン」等を公表し、司法試験合格者数激増と法曹一元に向けた基本方針が事実上確定したときにあたる。その舌鋒は鋭く、日弁連主流派の立場を越えて前衛的であった。たとえば、法曹一元実現の橋頭堡と日弁連が位置づける統一修習については、「無益」と切って捨てている。法曹一元実現のためには国営修習など有害無益という彼女の立場からは、給費制は当然廃止するべし、という結論になる。同書には、当時の法曹一元運動の中心人物であった坂元和夫弁護士が「あとがき」を寄せているが、後藤弁護士をジャンヌ・ダルクに例えたのは言い得て妙だと思う。このとき日弁連中枢は、後藤弁護士のような論客を、法曹一元実現への牽引役として位置づけていたのだ。

さて、それから10年を経て、今の後藤弁護士は、法曹一元をどう見ているのだろうか。

平成19年(2007年)の自由法曹団通信1226号に、後藤弁護士は「新しい時代の到来―統一修習の終焉」と題する論考を寄せている。この年、法科大学院を卒業した「新60期」の司法修習生千余名の修習開始を受け、裁判所や検察庁での実務修習は、受入数が多すぎて機能不全に陥ると予想している。これに代わり豊かな実務修習を提供できる弁護士会が、司法修習を運営することになるという。法科大学院は官僚法曹を養成せず、生の事実に即し、依頼者の立場で法を駆使する法律家を育成するという。一方、合格者増員により、貸与制に移行すれば、修習を強制できなくなるから、国営の司法修習制度は自滅に向かうと予測する。

その後どうなるか。裁判所法42条は、判事補は司法修習生の中から任命すると定めている。だから、司法修習制度がなくなれば、判事補を任命できなくなる。その結果、判事補は絶滅し、判事補の中から判事を任命することができなくなる。

こうして、裁判官のキャリアシステムが消滅し、法曹一元が実現する。つまり、給費制から貸与制へ、司法修正制度の廃止等はすべて、予定された法曹一元への道筋であり、このまま行けば自動的に法曹一元が実現する、裁判官は全て、弁護士の中から任命される社会が到来する、というのである。

後藤弁護士は、上記論考をこう結んでいる。「私は、年来の『法曹一元』論者である。そして、司法試験合格者大幅増員と法科大学院創設が決まった段階で、『勝った』と思った(中略)。弁護士こそが法曹の基本であり、司法制度は弁護士が担うのである。」

果たして後藤弁護士は「勝った」のか。確かに給費制は、司法試験合格者の激増により風前の灯火だし、実務修習が機能不全を来たすという予想はおおむね当たったと言える。だが、司法修習制度が自滅するとの予想は早計だし、その後自動的に法曹一元になるという予言にいたっては飛躍だらけだ。もし司法修習制度がなくなって、判事補を修習生から採用できなくなったら、司法試験合格者から採用する旨、裁判所法を改正すれば良いだけの話だと思う。

若い弁護士、特に給費制維持運動をやっている弁護士は良く考えて欲しい。給費制の廃止や、合格者激増は、弁護士(会)を敵視する経済界など外部の圧力だという見方は、とても一面的な物の見方だということに気づいて欲しい。これらは、まずもって、後藤富士子弁護士ら、弁護士自身がもたらしたものなのだ。

|

« 大阪発「性犯罪者追跡アプリ」はどないでっか | トップページ | 日本で内戦リスクの高い場所 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/52679522

この記事へのトラックバック一覧です: 統一修習と給費制のあけぼの(11):

« 大阪発「性犯罪者追跡アプリ」はどないでっか | トップページ | 日本で内戦リスクの高い場所 »