« 統一修習と給費制のあけぼの(12) | トップページ | 弁護士が訴訟リスクにさらされる時代 »

2011年9月14日 (水)

盗人にも三分の理

9月13日読売新聞は、化学兵器製造に転用可能な特殊ポンプを、無許可で日中合弁会社に輸出した疑いが強まったとして、「新東洋機械工業」社長の男らが、近く外為法違反(無許可輸出)容疑で書類送検される、と報じた。報道によれば、許可申請に時間がかかり、納品の遅れを避けるため、規制対象外と偽装したとみられているという。

「化学兵器製造に転用可能」としか分からないが、輸出貿易管理令別表第一の三の9「ポンプ又はその部分品」に該当するなら、輸出許可申請が必要であり、それを規制対象外と偽装すれば、違法の責を免れない。

ただ、「許可申請に時間がかかり」という点は汲んでほしいと思う。

2008年にも、ホーコス社(広島県)の外為法違反事件があった。これは工作機械だが、やはり輸出許可申請に時間がかかるとして、規制対象外と偽装して輸出し、担当者らが逮捕・起訴され、同社も行政処分を受けた。報道によれば、「ドイツ企業なら12ヶ月で(輸出)審査が済むところが(日本では)半年、一年とかかる」「競争上不利でこのままでは市場を失う」というメーカーの焦りが背景にあるという(2010216日日刊工業新聞)。

かつては性能や信頼性で他国の追随を許さなかった日本工業製品も、技術革新や円高によって、競争力が低下している。12ヶ月で納品されるドイツ製品と、1年かかる日本製品では、それだけで、重大なハンディキャップだ。この点、「ドイツと日本では、中国に対する安全保障意識が異なる」と指摘し、日本政府の許可に時間がかかりすぎるのは中国に特殊な問題とする見解もあるが、たぶん嘘だと思う。輸出先がトルコであっても、日本の方が許可に時間を要するだろう。世界に冠たる真面目と厳格さで知られるドイツにしてこうなら、他国は推して知るべしである。こうして日本は、「輸出の自主規制」によって、工業製品の国際競争力を失いつつある。

いうまでもなく、だからといって、法網をかいくぐろうとするのは愚かなことだ。それは、露見して処罰されるリスクだけでなく、規制をどんどん強化させるリスクがあるからだ。輸出企業がなすべきことは、不合理な輸出規制に手を携えて異議を述べることなのだが、残念ながら、未だその声を聞かない。

外為法の他のエントリ

「武器輸出三原則」と「法の支配」

ガンダムの「ハロ」と『攻殻機動隊』を地でいくお話

移設検知装置について

|

« 統一修習と給費制のあけぼの(12) | トップページ | 弁護士が訴訟リスクにさらされる時代 »

コメント

ブログ記事を拝見しましたが、この事件に対して、盗人に三分の理と擁護されるのは、いかがなものでしょうか。輸出先は、自社の合弁会社で用途も明確ですから、個別許可であって短期間に許可されると思います。
 工作機械の日欧当局の対応の差は大きな問題であることは確かですし、海外子会社に対する包括許可制度の早期見直しも当局には望みたいところですが、かといって、本件のような自社の合弁先向け輸出で、「時間がかかりすぎるからやむなく」というのは、言い訳にもならないと感じます。

投稿: 実務関係者 | 2011年9月16日 (金) 10時17分

コメントありがとうございます。だから「三分の理」なのですが…。
冗談はさておき、本件がご指摘の通り、簡単に許可が出る事案なら、なぜそもそも許可が必要なのでしょうか?包括許可ですら、本来は不要ではないのでしょうか?なにしろ憲法上「輸出の自由」は保障されているのですから。そういう問題意識を持っていただければ、というのが、一連のエントリにおける私の意図です。

投稿: 小林正啓 | 2011年9月16日 (金) 22時16分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/52718745

この記事へのトラックバック一覧です: 盗人にも三分の理:

« 統一修習と給費制のあけぼの(12) | トップページ | 弁護士が訴訟リスクにさらされる時代 »