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2011年9月 8日 (木)

大阪発「性犯罪者追跡アプリ」はどないでっか

彼氏追跡アプリ カレログ」という携帯電話用ソフトがあるらしい。
かつて、月額525円の本会委員向けには
・彼氏や家族の携帯の位置をGPSで特定できる
・行動履歴を取得できる
ほか、月額1980円のプラチナ会員には、
・彼氏の携帯電話の通話記録をリアルタイム入手
・彼氏の携帯電話にインストールした(出会系)アプリもわかる
という機能を提供したらしい。
 もちろん、「カノジョ」の携帯にもインストール可能だ。
 ところが、プライバシーの侵害を問題視する指摘があり、その後、端末ユーザーの同意機能を実装したという。
 しかし、端末側の承諾があればよい、というものでもなかろう。「『カレログ』入れてもいいだろ?やましいとこ無いなら」といわれて断れる若い男女はそういない。プライバシーの問題はもちろん、「カレログ」に起因するデートDVすら具体的に想定できる以上、このソフトは法的に、かなり問題だといわざるを得ない。
 このことから分かるのは、「プライバシーの問題は、必ずしも、当事者の同意があればOKとはいえない」ということだ。

ところで、96日毎日新聞朝刊によると、大阪府の橋下知事は、未成年者に対する性犯罪者として服役した者に対し、居住地の届出を求める条例の検討に入り、届出を義務とするか任意とするかは今後判断するという。以前GPS端末の携帯義務づけを検討したが人権上の理由から断念し、今回の条例案となったとある。
 GPS端末等による
電子監視については以述べたとおりであり、その携帯義務づけ条例化を表明した村井宮城県知事ついてのコメントも以前述べたとおりだ。今回は、「居住地の届出を求める」とのことだが、出所者でなくても、居住地の届出義務はあるのだから(住民基本台帳法22条)、条例の意味するところは、「未成年者への性犯罪前科を自ら申告する」ことにある。だがどうやって申告させるのだろう?「私はテロリストです」と申告する国際線旅客機搭乗客がいないように、住民票登録用紙の「私は未成年者に対する性犯罪歴があります」のYes欄に丸を付ける前科者は、とても少ないだろうし、自主申告する殊勝者に再犯のおそれは少ないだろう。しかも、個人の前科前歴は、大阪府警を通じて照会可能だし、プライバシー侵害の程度は同じだから、再犯防止の確実性を期すなら、未成年者に対する性犯罪前歴者に限った前科前歴の開示制度を作ればよい。もちろん条例では不可能で、立法が必要だ。
 本当に申告があったらどうするのだろう?「俺、5歳の女の子にイタズラしてムショに行ったことがあるんだけど」「そ、そうですか。で、どこにお住まいですか?」「カルガモ保育園の隣」「えっ。それはすぐ引っ越していただきます」「金がないんだけど」「仕方ない。引越代は府が出しましょう。近くに女の子のいない場所を探しますね。お仕事は?」「府立小学校の用務員」「ええっ。すぐ辞めてください。別の仕事を探します。失業手当は府が。」「それから」「まだあるんですか?」「嫁がいてよ」「奥さんならかまいませんが。」「そいつの連れ娘が5歳」「ええっ」というやりとりが想像される。職員の負担は半端でない。

  結局、橋下知事の提案は、自主申告の徹底が不可能だし、申告されても対応しきれないし、前科を知るなら確実な方法が他にあるので、条例化する意味が無いと思う。おそらくは、議論喚起を目的にした、橋下流のパフォーマンスだろう。

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