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2011年10月21日 (金)

法科大学院の自然淘汰に任せても持たないという計算。

仙台の坂野智憲弁護士が、「日弁連は、司法試験合格者数何人とうべきでなく、法科大学院の自然淘汰を待つべき」と主張された。志望者が定員割れを続けている法科大学院の大部分は今後自然淘汰されるから、日弁連が司法試験合格者数の削減を主張するのはその後でよいし、今主張してもリスクの方が大きい、という。

私も、法科大学院は自然淘汰されると予想したし(『こんな日弁連に誰がした?』231頁)、日弁連が今人数論を言うべきではないというご主張も、大いに尊重に値すると考える。

だが、「1000人削減の(日弁連の)提言は法科大学院の淘汰がある程度進んだ時点でするべきだと思う。もっとも(法科大学院の)入学者数が1800人位まで減少すれば、合格点を落とさない限り、自然と(=日弁連が何も提言しなくても)合格者数は1000人程度に減るだろう」との予測は、たぶん間違っている。

下のグラフは、今後の受験者数等の推移を、かなり大雑把に予測したものだ。法科大学院の入学者数は来年度以降、前年比1割ずつ減少することと、司法試験合格者数は年2000人を前提とし、法科大学院生は2年(既習)または3年(未習)で入学者の9割が卒業して受験資格を得、そのうちの6割程度が受験し、3回のうちに合格しなければ受験資格を失うと仮定する。

「shihoushiken_simulation.pdf」をダウンロード

この仮定によると、2017年の法科大学院入学者数は1924人まで減り、司法試験合格者の定員数を下回ってしまう。ところがそれでも、合格率32.49%にしかならない。なぜなら、前年までの滞留受験生がいるからである

すなわち、上記の仮定を前提にした場合、受験資格者数は、「当年度の法科大学院卒業生数と、前年度の受験資格者から合格者及び三振者を差し引いた残りとの和」として求められる。この数は、2011年にピークを迎え、その後減少していくが、2017年でもまだ7448人いる。従って、その年の法科大学院卒業生2270人を足した9717人が受験資格者となり、このうち63%(2011年までの平均)が受験すると仮定しても、受験者数は6156人。2000人合格する場合の合格率は32.49%となる。つまり、2017年になっても、状況は今と変わらないのである。

何でこうなるのか。種を明かせば簡単だ。入学者が5000人を超えていた時代に生み出された滞留者と、その後の法科大学院卒業生の合計(=受験資格者)が、ここ数年、毎年15000人近く発生するので、年2000人程度の合格者数では、なかなか捌けないからである。

受験資格者が権利を使い切るまで受験し続ける、という仮定には異論もありうる。正直言って、修習生の現在の就職状況を前提にする限り、一発で合格しなかった受験生には、弁護士の子女でもない限り、満足な就職の可能性は低い。だが、23年の時間と数百万円の学費の対価として取得した3回のチャンスを、簡単に諦める人はそういない。しかもチャンスは3年ではなく5年続く。だから、この滞留状況は、簡単には解消しないと予想される。。

すなわち、法科大学院の自然淘汰に任せても、当面、事態は変わらないのである。上記の大雑把なシミュレーションによれば、司法試験合格者数年2000人を前提にする限り、法科大学院の総定員数が1500人まで減って下げ止まると仮定すると、2023年、ようやく合格率が7割を超えて安定する。12年後だ。ちなみに、司法試験の合格者数を減らせば、安定するのはもっと先になる。

坂野弁護士の主張は、あと10年様子を見よう、という趣旨であるなら、正しい。だが私は、あと10年は持たないと思う。

Shihousiken_yosou

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コメント

5年3回の受験制限も見直される可能性大ですし、そうするとますます表面合格率は下がりますねえ。

投稿: 佐藤 | 2011年10月22日 (土) 00時27分

 もう単年度かつ全体の合格率(佐藤さんのおっしゃる表面合格率)にとらわれるのは止めるべきでしょうね。
 マスコミも、大学院間格差を前提に、5年3回の累計で修了者の7割8割が受かっている法科大学院も相当数あれば、5年3回を使い果たしても修了者の1割と受からない法科大学院もあることにスポットライトを当てるべきだと思います。

投稿: なしゅ@東京 | 2011年10月22日 (土) 16時10分

 主題である自然淘汰に任せたのでは持たないということについて、しかし、それならどうするか。
 情報公開を含めた競争促進政策によって自然淘汰を加速化すること、法科大学院間格差を前提に、まっとうでない法科大学院の存在は無視してまっとうな法科大学院を念頭に制度の改善を進めることくらいしか、現実的な処方箋は見当たりません。


投稿: なしゅ@東京 | 2011年10月29日 (土) 00時00分

 そんなに簡単に「自然淘汰」が進むでしょうかね?

 今までの新司法試験の結果を見る限り、都市部の一部上位校とそれ以外の残り多くのローとの「格差」は年々開いてきているような気がします。今年の新司法試験の結果を見ても、合格率が10%に満たない(10人のうち9人が不合格!)ローが28校もありますね。受け控えまで考慮すると、低実績ローの数はさらに多くなります。

 修了生の多くが司法試験に合格して、初めて法曹養成機関としての役割を果たしていると言えるわけですが、その意味では、74校のローのうち、法曹養成機関としての役割を果たしているとは言いがたいローが、ひいき目に見ても半分くらい存在するわけです。だからといって、果たしてどの程度の学校が撤退するのか。特に私立の場合は赤字覚悟で経営を維持するというところも多いような気もしますし。チキンレースになって、中々撤退は進まない可能性もありますね。

 あと、ローの統廃合を「自然淘汰」に委ねると、地方では、旧帝大など一部を除く大半のローが廃校に追い込まれる可能性もありますね。地方での法曹養成はどうなるのでしょうか?

投稿: ぷるぷる | 2011年10月30日 (日) 23時38分

 自然淘汰には時間がかかりますので、効果的なアメとムチで大幅に促進することが極めて重要です。しかし、文科省の行政処分によるのではなく、あくまで自発的な意志に基づく自然淘汰であることが必要でしょう。
 というか、強制的に半数を廃校に持ち込む良い方法をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。
 現有する零細地方校は、制度創設時にもともと想定していた30~40校に含まれていなかったはずです。結果を出していなくても存続させる必要があるのでしょうか。

投稿: なしゅ@東京 | 2011年10月31日 (月) 21時39分

ぷるぷるさま
地方での法曹養成は,各地方の都道府県が給付制の奨学金をつけたり各地方の出先機関としての学生寮を設けたりして(東京にはいくつかあります。)都会の法科大学院に若者を送り込むことや,通信制の法科大学院を設置することでまかなうべきだと思います。本当は,旧試験であれば,通信教育を受けてかなり地方からでも受験することが可能でしたが,旧試験にはどうしても変えなければならない悪いところがたくさんあったようですね。

投稿: 某若手 | 2011年11月 8日 (火) 19時27分

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