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2011年10月17日 (月)

若手弁護士の反乱、または弁護士会館占拠

ウォール街の占拠に始まり、全米に拡大した若者たちの運動が続く中、日本の弁護士会では、若手弁護士らのある行動が、注目を集めている。東京霞ヶ関の弁護士会館で取材した。

この会館は、日弁連、東京弁護士会、第一・第二東京弁護士会の4弁護士会が入居しており、それぞれに会員ロビーが設けられている。これらのロビーが、事実上占拠されているのだ。

日弁連の会員ロビーを訪れてみる。そこには応接用の椅子と大小のテーブルが置かれ、全体で100人ほどが座れるスペースだ。「この騒ぎの前は、弁護士が休憩したり、簡単な打ち合わせをしたり、事務職員が昼食を食べていたのですが…」と日弁連事務次長は言う。

今、このロビーは満席だ。椅子がなくて、カーペットに座り込んでいる男性もいる。座っているのは30歳台と思われる弁護士たち。平均30歳からキャリアがスタートする弁護士業界では「若手」に属する。彼らは集会を開いているわけではない。ロビーを埋め尽くす弁護士は、それぞれに談笑したり、打ち合わせをしたり、電話をしたりしていて、騒々しい。

「きっかけは、『ウォール街を占拠せよ』だったのです」と、この「騒動」の発端を作った弁護士は語る。「いま、若手弁護士の間には、弁護士会に対する大きな不満があります。そこで、米国の事件をまねて、『弁護士会館を占拠せよ』というメッセージをツイッターで流してみたのです。」

最初は、十数人の弁護士が面白半分に集まるだけだったが、彼らの行動がツイッターなどを経由して広がり、一日延べ千人を超える若手弁護士が、弁護士会館を訪れるようになったのだ。それが、2ヶ月を経た現在も続いている。だが、彼らは抗議活動をしているわけではない。

会員ロビーで、若手弁護士らの行動を観察していると、出入りの多いことが分かる。ほぼ全員がスマートフォンとノートPCを持ち歩いている。「ここは東京地裁の隣ですから。裁判の合間に寄るんです」とある若手弁護士(37)は言う。この弁護士はいわゆる「即独」組で、大学の先輩の事務所に「一応籍を置いている」が、「『籍』だけで、『席』はないし、スマホとノートPCがあれば、どこでも仕事ができますから。同じレベルの弁護士が多数集まっているので、情報交換に、このロビーはうってつけです。エレベータが遅いことを除けば。」と屈託なく話す。顧客との打ち合わせは?と聞くと、「全部スタバ系です。でなければメール。裁判所でも(依頼者と)会いますし。」別の弁護士(35)は、「東京地裁にも弁護士控室はあるけど、電源が使用禁止になっちゃって」と笑った。見ると、あちこちのコンセントから延長ケーブルが伸びている。「年間50万円も会費を払っているのだから、電気くらいもらったっていいでしょう。」集会を開いているわけでもなく、弁護士一人一人が個人的に利用しているだけなので、「規制しようにも、できない」と日弁連事務次長は困惑顔だ。

聞いてみると、ロビーに集う若手弁護士のほぼ半数が「即独」組で、残りの多くも、「軒弁」(先輩事務所に籍を置くが、『軒を借りる』だけで無給の弁護士)とのこと。

ここ数年、司法試験の合格率は20%台に低迷しているうえ、合格すればバラ色の未来、にもほど遠い。弁護士志望者約2000人のうち、毎年500人以上が、即独か、軒弁など、収入の保障が全くない道に進む。だが、彼らが政治的行動を意図しているかというと、そうでもない。先月、左派系の弁護士が、この動きを会長選挙に利用しようとしたが、無視されたという。「いまさら弁護士会に何かを期待しても無駄ですから。僕らは安くて合理的だと思うことをやっているだけ」と即独組の弁護士(32)は言う。

とはいえ、弁護士会の幹部はこの動きに神経をとがらせている。宇都宮日弁連会長は11日、「会員ロビーを占拠する若手弁護士の行動は、法曹人口問題や給費制問題に不満を持つ多くの弁護士の声を代弁している」と異例の声明を発表したが、次期会長選挙候補者といわれるY弁護士は「オバマ気取り」と手厳しい。

取材を終えて、昼食を食べようと弁護士会館地下のレストランを覗いたら、ガラガラだった。あれほど多くの弁護士が上の階にいるのになぜ?と聞くと、「彼らは皆、コンビニ弁当を食べるんです」との答え。弁護士業界を激変させた司法改革は、スマホとノートPCとコンビニ弁当があれば事務所はいらない、という若手弁護士を多量に生み出したようだ。

注;この記事はフィクションです。実在する団体や個人とは一切関係がありません。

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コメント

とても面白かったです。
こちらのブログのフィクション小説を全て読んでいる最中ですが、どれも分かりやすい説明をしつつ問題の根幹をえぐりながら、最後は皮肉も交えた面白いコメントで終わる、思わず吹き出してしまうジョークを交えたコメントで終わる、など、読んでいて「面白い!でも、本当にそうなんだよなー。。」
と思うような内容です。
これからも楽しみにしています。

投稿: 元ロー生ママ | 2017年1月19日 (木) 11時18分

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