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2011年11月 2日 (水)

日本製検索エンジンが生まれなかったわけ

Googleのような検索エンジンが日本で生まれなかった理由は、日本の著作権法にある、という見方が一般的だ。例えば200891日の週刊東洋経済には、「検索サーバーに情報を一時蓄積することは『無断複製』にあたり、検索結果を表示することが『自動公衆送信』になるため」、日本に検索エンジン用のサーバーを置くことができないと書いてある。ちなみに2009年の著作権法改正により、検索エンジンの合法性が明文で確認されたが、その後も、日本製検索エンジンが生まれることはなかった。

この見方は、耳になじみやすい。でも、よく考えてみると、疑問である。とはいえ、米国の著作権法にはまるで無知なので、話半分以下で読んでほしい。

当時、日本には、検索エンジンを違法とする法律はなかった。だが、合法とする法律もない。そして、著作物の無断複製や、公衆送信を違法とする一般規定はあった。だから、検索エンジンは違法の疑いを免れなかった、と論者はいう。

だが、これは日本だけの現象だろうか。

検索エンジンが開発される前の米国はどうだったのだろう。まだ存在しない検索エンジンを違法とする法律は、あるはずがない。もちろん、合法とする法律も、あるはずがない。そして、著作物の無断複製や、公衆送信を違法とする法律または判例は、たぶん(上述のように米国の著作権法にまるで無知なので)存在した。なぜなら、無断複製の禁止は著作権法の基本の基本だし、巨大映画産業を擁する米国がYOUTUBEへの映画のアップロードを規制しないわけがないからだ。

そうだとするなら、日本と米国の法環境は同じである。したがって、日本製検索エンジンが生まれなかったわけを、日本の法環境に求める主張は誤りということになる。

確かに、米国著作権法にはFair Use条項があり、日本にはない。Fair Use条項とは、著作物の利用目的や利用量、権利者の損害の度合いなどを考慮して一定の場合に無断利用を認める一般条項だ。一般条項だからもちろん、検索エンジンの合法違法は直ちに判別できない。日本の著作権法にFair Use条項はなく、これを認めた判例もないが、否定した判例もないはずだし、著作権者の「権利濫用」程度の抗弁なら十分成立しうる。だから、Fair Use条項の有無は決定打にならない。

結局のところ、彼我の違いは法制度ではなく、精神構造の違いではないのだろうか。

つまり検索エンジンを違法と断ずる法律がないとき、Googleは「検索エンジンを作ってよい」と理解し、日本人は「作ってはいけない」と理解した。「規制が無い」ことを「自由」と理解するのか、「禁止」と理解するのかの違いである。もし違法となった場合のリスクを、Googleは「取り」、日本人は「避ける」。

日本製検索エンジンが生まれなかったわけが、精神構造にあるなら、著作権法を改正したところで、100万年たっても、新技術を開発することはできないだろう。

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コメント

いえ、日本製検索エンジンは過去に存在し、実際に運用されていました。
 http://pr.goo.ne.jp/detail/675/
 http://www.searchdesk.com/survey/s2003b.htm

投稿: たか | 2011年11月 2日 (水) 10時07分

かつて早稲田の学生が作った「千里眼」という和製検索エンジンがありましたが、
それについてはいかがでしょうか?
後年、アスキーにサーバを移していますので、
単なる素人の実験というレベルではない筈です。
90年代の話ですので、法的にどうだったかは分かりませんが、
「日本製検索エンジンが生まれなかった」という文言には事実誤認があるように思います。

投稿: | 2011年11月 2日 (水) 14時20分

当初は,単に日本語の処理が面倒だったからだと思います.

投稿: cake | 2011年11月 2日 (水) 14時55分

元ネタの「Law & Technology No.51」には、岩倉正和氏のご発言として、「NTT等が一時それをめざしたようですが、日本での国産の検索エンジンというのはついに発展しなかったわけです。」とあります。これを「生まれなかった」と表現したのはミステイクでした。ただ、全体の文意に変更はありませんので、コメントに追記するのみとします。

投稿: 小林正啓 | 2011年11月 3日 (木) 12時07分

日本製検索エンジンは存在していました。著作権を理由として発展しなかったわけではないです。著作権ではなく、名誉毀損・プライバシーを理由とした削除要請・抗議に対応できなかったのです。

とりわけ、大学が発祥の検索エンジンは、技術的見地からすれば公開は可能でしたが、リーガルリスクやクレーム対応コストの点から企業体でないと運営できなくなったのです。

投稿: ももも | 2012年8月29日 (水) 22時03分

gooはNTTレゾネラントによる独自検索エンジンの日本製のポータルサイトですよ。
Yahoojapanに次いで日本の利用者数2位です。
検索の使いやすさからと災害や気象情報や衛星画像等に対応したMapやGayoやクックパッドや食べログやクックパッドといった日本製の人気サービスへの対応やAPIの提供等をしてる面からYahooJapanの方が人気がありますが、YahooJapanもアメリカのYahooから独立した別会社なので日本の会社と言えると思います。
しかしYahooJapanはGoogleの検索エンジンを使用していますね。
GoogleはMapで領有権問題の関係から政府に禁止令が出てますし政府はYahooJapanにEarth等の面でGoogle並のサービスを提供してプライバシー侵害をしていないMSさんのBingエンジンの使用を求める通達を出すかgooさんはドワンゴの株主なのでニコニコ動画をgoogleのYoutubeやYahooのGayoのように取り入れリクルートの
じゃらんやhotpaperやリクナビ等便利なサービスを取り入れツタヤのTポイント陣営のYahooに対抗してPontaサービスを提供しWBC名鑑があるのですからプロ野球選手名鑑を作成してNTTであることを活かしdocomoユーザーやdocomoIDを優遇しgooのメールをドコモに担当させWebメールもhotmail並にすることやドコモのクラウドサービスを使えるようにしドコモと仲のよいEvernoteに対応することでgooもユーザーが増えYahooも検索の安全性が増し日本にとって国益にかなうようになると思います。
衛星画像は国益上大切なことを考えるとgooやYahooにVirtualEarthやGoogleEarthのような衛星画像ソフトも作る必要があると思います。
政府によると衛星画像は特定秘密に当たると言われてますからgooのような日本製ポータルサイトから使用できる日本製ソフトは必ず必要になります。

投稿: happyday | 2013年12月 9日 (月) 16時24分

happyday さんのように「国益」なるものを大事にする人って、文章が読みにくかったり知性に疑問を持たざるを得なかったりする人が多いよね。

投稿: uhyo | 2015年3月28日 (土) 21時32分

まあ検索エンジンのサーバーがどこのものであれ、アメリカ製のOSが標準になってる時点で、その情報はすべてアメリカに筒抜けで、実際に監視されてるわけですよ。

ロシアのプーチン大統領がインターネットについて「CIA(アメリカ中央情報局)のプロジェクトである」と発言
ttp://saigaijyouhou.com/blog-entry-2412.html

ドイツが警告、中国もWindows8の使用禁止令を出した理由
ttp://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2866.html

で、不思議なことに、このアメリカの監視と支配体制にせっせと協力する政治家やメディアの姿がはっきりわかってるわけです。
個人単位で嫌がらせするわけですよ。ええ。バカげた話です。

投稿: | 2016年6月23日 (木) 08時02分

国益を論ずるのは当然なのになぜか過剰に反応する工作・・・いや書き込み者さんがいらっしゃるようで。


ロシアのプーチン大統領がインターネットについて「CIA(アメリカ中央情報局)のプロジェクトである」と発言
ttp://saigaijyouhou.com/blog-entry-2412.html

ドイツが警告、中国もWindows8の使用禁止令を出した理由
ttp://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2866.html


なぜかアメリカの監視に協力し、支配に手を貸し、意向に沿わない思想や言論、行動、書き込みをする人間を、科学的な手法や政治経済的な手法から圧力をかけて封じ込めるわけです。個人単位で。
どうしてでしょうね?なぜ日本がアメリカに監視されているんでしょうか?不思議ですよねえw

投稿: | 2016年6月23日 (木) 08時06分

千里眼ODIN他の論拠に
学術的、研究目的の利用であれば無断で利用できるから
という話が当時からありました
商用目的の検索エンジンが発展しなかった、というのなら
ここの記事に書いてあるような理由だと思います

投稿: | 2016年8月10日 (水) 01時04分

いまさらですが、国産検索エンジンの中の人が最近書かれてましたね。
まずGoogleの設備投資の巨大さに世界中の競合他社はついていけなかったことがあり、つづいて国産検索エンジンの日本語処理関連がGoogleに取り込まれていったということでした。
当時のことを考えても、Googleの検索スピードとDB登録量の膨大さが魅力で普及していっていましたし、対して国産検索エンジン各社は「ポータルサイト化」でビジネスを建てようとしていましたから、”検索”という意味では勝負にもなっていなかったのかもしれません。

投稿: | 2017年6月16日 (金) 10時00分

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