福島県産米問題がもたらしたモラルハザード
11月13日、福島県は、県内48市町村1174カ所の米を調査した結果、全て国の暫定基準値(500ベクレル/キロ)を下回ったとして「安全宣言」を行った。16日の産経新聞は、「(福島米を)みんなで食べて支えよう」との社説を掲載し、25日の読売新聞は、安全宣言を聞いて福島県産新米を購入した浜松市の主婦、村上けい子氏の投書を掲載した。 だが私は、このニュースを信じられなかった。基準値超えが多少出たというなら、かえって信用したかもしれない。しかし、1174地点も調べて基準値超えが全く無いなんて、うさんくさすぎる。 私は放射線の専門家ではないし、証明できないことをネットに書く趣味もない。だから私は、自分と家族のためだけに行動した。ネットで10年米を購入しようとしたのだ。だが、すでに多くの10年度米は売り切れていた。多くの人が、同じことを考えていた。 17日、福島県大波地区の農家が自主的に検査を依頼した米から、基準値を超えるセシウムが検出された。この報道から読み取るべきは第一に、農家自身、県の安全宣言を信用していなかったということだ。 そして28日、福島県伊達市で収穫された米から、基準値を超えるセシウムが検出されたという。福島県の安全宣言は、もはや信用を失った。 1174カ所も調べた人たちは、故意に基準値超えの事実を隠したわけではないと思う。調査に携わったあらゆる人たちが、「基準値を超えてほしくない」と思って行動した結果、自然と、そのような結果が出たのだろう。人間には、見たくないものは見えないのだ。 「全地点異常値なし」の検査結果に、県と政府は飛びついた。「まさかそんなことはないだろう」と心で思っても、誰も再検査を指示しなかった。マスコミも、検査結果には一切疑問を差し挟まなかった。国民一般もそうだ。知っても不幸になるだけの事実は知りたくない。誰もが、心の中では別のことを考えながら、国全体を覆う一つの空気に荷担した。そして、自分のためだけに行動したのだ。 米の流通については、事故米問題に関連して、少し勉強したことがある。そこで分かったことは、生鮮食品全体についていえることだが、米の流通には特に、古い業界体質が残っている、ということだった。新米と古米を混ぜる、8割の他品種を混ぜて魚沼産コシヒカリとして売る、などというのは日常茶飯で、伝統的にアウトローの関与も多かった。福島県11年産米は、風評被害と今回の報道によって、表向き、ほとんど流通していないはずだが、実際には、相当の量が、他府県産米や古米と混ぜられて流通するだろう(と書きながら夕刊を見たら早速、仙台市の米穀卸大手『協同組合ケンペイミヤギ』が福島県産米を宮城県産と偽装して販売していたと報じられている)。いまさら10年産米を買っても遅い。先月売り切れていた10年産米が今買えることの不自然さに気づかないといけない。もちろん、健康被害は発生しない。だが問題は、健康被害ではない。 この騒動は、食の安全に関するわが国のモラルと信用を、大きく毀損した。数年前の偽装多発を受けて実施された国ぐるみの取り組みの成果は、灰燼に帰したといって過言ではない。
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コメント
私も事故米騒動以来、完全に日本の米市場など
全く信頼してませんが、これも当然あるだろうって
感じですね。
河北新報 東北のニュース
給食米横流しか 未検査を代替出荷 ケンベイミヤギ
http://t.co/QxA7TYp7
投稿: ぱ~ぷ | 2011年11月30日 (水) 17時41分
福島県産で数値が出るのは、二本松産 福島市渡地区ぐらいです。
投稿: 名無し | 2012年5月 8日 (火) 14時42分