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2011年11月10日 (木)

馬鹿は死んでも治らない

115日の日本経済新聞「大機小機」は、「失われた市場規律」と題するコラムを掲載した。

曰く、ギリシャのように債務弁済に問題がある国には「市場規律」が働いて、国債金利が上昇するなどの警戒信号が発せられるはずなのに、それがなかった。原因の一つが情報隠蔽にあるとしても、世界中の金融のプロがそろいもそろってこれに気づかず、危険な融資を続けたのはなぜか。米国の大手金融MFグローバル・ホールディングスは、自己資本の30倍以上というレバレッジを効かせて貸し込み、連邦破産法11条の適用を申請して倒産した。これは、サブプライムローンと全く同じ構図だとして、失われた市場規律を憂い、その回復を訴えている。

私は経済には素人だが、この「大機小機」が間違っていることくらいは分かる。

市場規律は失われたのではない。初めから無いのだ。それが言い過ぎなら、およそ信頼できないほど致命的な限界があるのだ。「たまたまうまく行った」ことを「神の見えざる手」と賛美していただけなのだ。世界のトップエリートが揃いもそろって、リーマンショックの傷も癒えないうちに、同じ馬鹿をやらかすのは、我々人間には本質的に、この種の危機を回避する能力が無いからである。

その原因の一つには、人間は、悲劇を予知する程度には賢いが、その悲劇がいつ起きるかを予知するほど賢くない、という点がある。いわゆる中国リスクはその典型だろう。これと利己心とが組み合わさるとき、壮大なババ抜きが始まる。

しかも人間は皆、数百万年前、山の彼方の空遠くに楽園があると、何の根拠もなく信じて旅立ち、生き残った理由を「運がよかっただけ」とは考えず、自らの信仰や技能に求めてきた、オメデタイ先祖の子孫である(これは『ブラック・スワン』の受け売り)。我々は本質的に、「自分にだけは不幸は訪れない」と信じるように出来ているのであり、同時に、この確信が、人間を地上の王者に押し上げてきたのだ。つまりこの性向は人間の本質であり、努力や教育では矯正できない。つける薬はないし、死んでも治らないのだ。

もちろん、自らの無能や限界を弁え、これを改善しようと努力することは、とても重要だ。だが同時に、いくら努力しても絶対に治らないほど我々は愚かである、と認識し続けることも重要だと思う。そうだとすれば、「市場規律が働かない」ときに、どうすれば規律が働くかを考えることも重要だが、市場以外に規律の源泉を求めることも、同様に重要だということになる。

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