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2011年11月15日 (火)

ある時代劇

「越後屋、よく参った。知恵を貸してくれ」

「尾崎殿、元気がありませんな」

「お主も一昨年のお家騒動は存じておろう」

「はい。中坊家の跡目相続で揉めましたな」

「結局、嫡流では駄目と、外様の宇都宮殿が摂政になってしまった」

「尾崎殿も兵をお出しになった」

「うむ。あのときは『次はお前だ』と言われて矛(ほこ)を収めたのだが」

「それなのに、山岸殿が挙兵されたので困っておられるのですか」

「山岸殿は江戸の大店(おおだな)連中に顔が利くから強敵じゃ。だが困っている理由は違う。宇都宮殿が摂政を続けると言い出したのだ」

「まさか本当とは。噂は聞いていましたが」

「前代未聞のことだが、摂政は庶民に人気があるから、さらに強敵じゃ。これに勝つには…」

「山岸殿と手を組むしかない、というわけですか」

「山岸殿から先ほど密使があり、助太刀を頼むと言ってきた。助太刀すれば、次は必ずだそうな。だが、その保証はない。『次だ次だ』といわれて幾星霜。密使は待たせているが、どう返事をするか」

「…」

「どうした越後屋」

「尾崎様、山岸殿の密使に、すぐ返事をするのです。『助太刀の件、承知仕った』と。越後屋は直ちに、摂政家に参りますゆえ」

「何を申す」

「考えてもご覧なさい。尾崎様はもともと庶民のお味方。中坊家の血を一番濃く引くお方です。大店との商売に熱心な山岸殿と、庶民に人気のある宇都宮殿と、近いのはどちらですか」

「それは宇都宮殿だが」

「それなら表向き、山岸殿と手を結び、裏で宇都宮殿と取引するのです。助太刀する代わり、次は必ず尾崎殿と。どうせ次なら、その方が間違いないかと」

「ふはははは。越後屋、お主もワルよのう」

「これぞ平成の薩長連合じゃ。中坊家の夜明けは近いぜよ」

「なぜ突然土佐弁を話す。まさかお前は…?」

夜陰に紛れ摂政の屋敷に向かう越後屋。これを新撰組の白装束が追う。
一方天井裏では風車の矢七。一部始終を見届けた後、主君に急を告げた。「ご苦労。これをご公儀に届けてくれ」と水戸光圀は、書簡をしたためて矢七に渡す。その書簡には、「中坊家にお家騒動の兆しあり。次第によってはお取り潰しも已むなき哉」とあった。
背後の屏風では、虎が書簡を睨みつけていた。

注;この記事はフィクションであり、実在の個人又は団体と一切関係ありません。

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コメント

初めての書き込みです。いつも楽しく拝見しています。

内容のコメント能力は無いので、時代考証的に言葉使いに違和感を感じた部分へのコメントです。

両者の地位がよくわかりませんが、通例通り、越後屋=あきんど、尾崎=お代官様あるいは大名 同じく山岸・宇都宮=お代官様あるいは大名とすれば

越後屋が尾崎に「・・殿」と呼びかけることはありません。「・・様」です。「殿」は武家で立場の同じもの同士に使用される言葉です。全体的にこの越後屋の言葉使いはえらそ過ぎます。この時代の商人は腹の中はともかくも、形の上では上に対して腰はもっと低かったはずです。

また、「摂政」とは、日本では天皇がその任務を行うことが出来ないときに変わって行う役職をいうので、尾崎、山岸、宇都宮氏らが武士階級であるならば、この場合は、そうですねぇ・・・やはり「将軍」が適切かと・・

歴女のおばちゃんからでしたー

投稿: 大阪のおばちゃんの蘊蓄 | 2011年11月15日 (火) 13時01分

あはは、思わず声に出して笑ってしまいました。

選挙ネタは、いつもにも増して冴えていらっしゃいますね!

次も期待しております。

投稿: 坂野真一 | 2011年11月15日 (火) 13時44分

歴女様
ご指摘のとおりかと。時代考証ぼろぼろで申し訳ありません…。

投稿: 小林正啓 | 2011年11月15日 (火) 14時23分

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