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2011年11月14日 (月)

弁護士のTPPと2012年問題

弁護士ドラマに興味のある人なら、「イソ弁」「ボス弁」という言葉を聞いたことがあると思う。「イソ弁」とは「居候弁護士」の略であり、「ボス弁」の法律事務所に居候をしながら、仕事を覚える見習い弁護士のことだ。給料をもらうにもかかわらず、「イソ弁」という用語が使われてきたのは、旧来の徒弟制度を色濃く承継していたからだろう。実際のところ、「イソ弁」の起案した書面は、ボス弁によって完膚なきまで朱を入れられ、何度でも書き直しをさせられたものだ。

その「イソ弁」「ボス弁」という言葉も最近は廃れ、「アソシエイト」「パートナー」という米国風に変わっている。「アソシエイト」も給料をもらうが、弟子というより助手に近い。「パートナー」も、師匠というより共同経営者だ。必然的に、「アソシエイト」と「パートナー」の関係は、師弟関係ではなく、ドライな契約関係になる。依頼者との受け答えから書面の書き方、証人尋問のやり方までボスに教えてもらう、ある意味幸福な「アソシエイト」は、とても少なくなった。

聞くところによると、最近の中規模以上の事務所では、アソシエイトとの契約期間は3年前後だ。3年間は給料が出るが、4年目の保障はない。能力を認められればパートナーになれるが、そうでなければ事務所を出て独立するか、他の事務所に雇ってもらうしかない。パートナーといえば出世のようだが、要は給料が出ないうえ、事務所の運営経費を負担させられるということだ。それまで勉強一筋だった323歳の弁護士に、最低年23000万円売り上げないとね、と言われて実行できる者もいるだろうが、出来ない弁護士も少なくない(私には無理だ)。経済的に見ると、弁護士は、とても効率の悪い頭脳労働者にすぎない。売上が少ないと、パートナーとは名ばかりで、飼い殺しである。独立すればやはりパートナーだが(考えてみると誤用だが、一人でもパートナーという)、貧乏にあえぐ点では同じである。

尊敬するあるジャーナリストは、「弁護士の就職難が始まってから6年目以降が危ない」と予測する。同氏によると、「就職難だと、評判の悪い事務所にも就職するでしょう。そこでろくでもない仕事の仕方を覚えて、独立したりパートナーになったりするけど、その後3年くらいすると、食い詰めて、自分も悪いことをするようになる」と言う。

仮にこの予測が正しければ、就職難が始まったのは2006年ころだから、2012年ころ以降、若い弁護士の不祥事が増えることになるが、どうであろうか。これが、弁護士の2012年問題である。

TPPはどこに行ったのかって?だから、貧乏すぎるパートナー(Too Poor Partners)問題でした。

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コメント

 いつも楽しみに拝見させていただいております。
 タイトルの表記が2102年問題となっており、2012年問題の誤記であると思われます。
 

投稿: | 2011年11月14日 (月) 18時49分

ご指摘ありがとうございます。標題を訂正しました。

投稿: 小林正啓 | 2011年11月14日 (月) 23時35分

まったく違う仕事をしていますが、弁護士業界の事情はちょっと気になり、
このブログもちょくちょく読ませていただいております。
最近、
「弁護士が多いと何がよいのか」(浜辺陽一郎)
という題名の本を読みました。内容をものすごく大雑把に要約すると、
「弁護士が増えて社会の津々浦々まで弁護士が活躍するようになれば日本は発展する」ということで、さすがに弁護士さんの書いたものだけあって、本を読んでいる限りでは、とても説得的でした。

・・・それにしても、こうした理想と、エントリにあるような現実との乖離は、ほとんど眩暈がおきそうなくらいです。
韓米FTAを結んだ韓国での事情は、どうなっているんでしょうね。

投稿: | 2011年11月17日 (木) 00時00分

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