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2011年12月28日 (水)

東工大イラン人入学拒否事件について(3・終)

東工大が、法的には何の問題もないはずのイラン人の入学を拒否したのは、直接的には、平成19426日付け「国際連合安全保障理事会決議第1737号を受けたイラン人研究者及び学生との交流における不拡散上の留意点について(依頼」と題する文科省通達が原因だろう。だが、その背景には、東北大学の核疑惑留学生指導問題があると思われる。

平成2189日付け読売新聞によると、この事件は、東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻研究室が、平成14年から平成18年まで、イラン人留学生を受け入れたところ、この留学生が来日直前まで所属していた研究所「ジャッベル・イブン・ハヤーン研究所」が平成16年、核兵器開発に関係しているおそれがあるとして経済産業省の規制リストに載ったのに、留学生はその後も東北大で研究を続けたという。この学生は帰国後シャリフ工科大学の教官となり、東北大学の指導教授と共同で米国学会誌に論文を発表したりしたが、当時の報道を見る限り、この学生に核兵器開発につながる技術が提供されたかどうかは分からない。

不勉強のため、この事件が本当に外為法に違反するのか否か、現時点では分からない(高峰康修氏によると、経産省は外為法の違反にはならないと判断したとのことである)が、重要なことは、この事件は他の大学に多大な萎縮効果を及ぼしたであろう、ということだ。核エネルギー工学の研究は、莫大な国庫補助を必要とするだろうから、この種のスキャンダルが、大学経営に多大な影響を及ぼしうることは、容易に想像される。

大学の立場で見れば、イラン国籍と聞いただけで、入学を拒否しておく方が無難だ、と考えても何の不思議もない。本件のように、違法な入学拒否として裁判で負けることがあるかもしれないし、場合によっては損害賠償義務が発生するかもしれないが、イラン人留学生を受け入れたことにより社会的非難を浴びるリスクや、まして、研究開発費を削減されるリスクに比べれば、入学を拒否しておいた方が利口だ。

勝訴判決を得たイラン人も、経済的利益を得たわけではないし、入学資格を獲得したわけでもない。弁護士費用を考えたら、間違いなく大赤字だ。

私ですら、もし大学からイラン人の入学を拒否するか否かと相談を受けたら、「危ないと思うなら拒否しておいた方が無難」とアドバイスをするだろう。当該イラン人自身が「居住者性」の点で問題ないとしても、その背後関係如何によっては、当該イラン人を通じて技術情報が海外に流出し、結果として、大学が社会的非難にさらされるリスクがあるからだ。

このイラン人以外にも、日本で教育を受けるチャンスを奪われ、泣き寝入りした外国人は多いだろう。申し訳ないが、日本の司法制度は、彼らを救済する仕組みにはなっていないのである。

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