« 自殺者数に見る平成23年 | トップページ | 「クラウド」普及に法的課題?(その2) »

2012年1月10日 (火)

「クラウド」普及に法的課題?(その1)

201119日の日経朝刊は、標記標題で、クラウドサービスが外為法に抵触する場合もありうる、と解説した。外為法は、国際的な平和や安全の維持を妨げる可能性があるモノや技術(=特定技術)を取引する場合、経産相の許可が必要と定めている。そこで、企業がクラウドコンピュータを使って海外支店と情報共有を行う場合、技術の内容によっては、外為法に抵触しうる、という趣旨だ。「(軍事技術情報でない以上)大方の企業の情報は抵触しないと思われる。しかし経産省に問い合わせても対応がまちまちで、相談を受けた顧客に100%安全だと保証できない」という浜野敏彦弁護士のコメントも載っている。

だがこの記事とコメントは、重大な前提を見過ごしていると思う。

それは第一に、同一法人内での情報共有の場合、国境をまたいでも、外為法適用の余地はない、ということであり、第二に、自社が専有するサーバーに自社情報を保存するだけなら、そのサーバーが海外にあったとしても、外為法違反の問題は起きない、ということだ。

外為法25条は、特定技術を提供する「取引を行おうとする」「者」について、経産相の許可を受けなければならないと定めているが、この「者」は法人を含む。また、「取引」とは「提供者」と「被提供者」という二人の存在を前提にしている。したがって、同一法人内でのやりとりは、そもそも「取引」に当たらないから、外為法が適用される余地はない。このことは、国境をまたいだとしても、同じことだ。

この解釈は、経済産業省も同じと思われる。2009年11月のCISTEC JOURNAL1245ページには、「外国出張中の社員に電子メールで技術資料を送る行為は、同一組織内でのやりとりですので取引といえず、規制対象外です」とあるからだ。

だから、クラウドを使って情報共有をする場合、同一法人内である限り、日本本店と海外支店間であっても、サーバーが海外にあっても、情報内容の如何を問わず(つまり、仮にF35の設計図面であっても)、経産相の許可は不要だ。つまり情報の移転については、国境を越えるか否かは決定的な指標ではないのである。これに対して、モノの移転については、国境を越えるか否かが決定的に重要であり、海外に持ち出す場合には、自己使用目的であっても、「輸出」となるため注意が必要だ。

電子メールとクラウドは違う、という意見は、かなり初歩的なIT音痴と思う。電子メールであっても、どこかの(しかも複数の)サーバーを経由して相手に届くのだし、しかもキャッシュはサーバーに残される。そもそも「電子メールを受信する」という行為は、(海外にあるかもしれない)サーバー内の郵便受けに、メールを取りに行く行為に他ならない。そのサーバーが海外にあるときメールを送受信できないのなら、そもそも、「電子メールのやりとりは同一組織ならOK」などという見解は成立し得ない。

ややこしいのは、同一法人ではない海外子会社やグループ会社の場合である。少なくとも、別法人であっても、親会社と100%子会社との情報共有や、100%子会社同士の情報共有を、別法人であるとの理由で規制する意味は無いと思う。

しかし上記CISTEC JOURNALは、「現地法人やグループ会社などは同一組織とはみなされません」と明記している。形式論としてはその通りだが、余りに四角四面な解釈ではないだろうか。

|

« 自殺者数に見る平成23年 | トップページ | 「クラウド」普及に法的課題?(その2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/53702396

この記事へのトラックバック一覧です: 「クラウド」普及に法的課題?(その1):

« 自殺者数に見る平成23年 | トップページ | 「クラウド」普及に法的課題?(その2) »